宇宙そのものであるモナド

生命または精神ともよびうるモナドは宇宙そのものである

相場英雄(1967-)『不発弾』新潮社、2017年

2018-04-15 17:44:40 | Weblog
プロローグ
A 2015年、三田電機が7年間の「不適切会計」、1500億円のお詫び会見をする。「粉飾決算」でないのかとの指摘あり。
A-2 大企業の不正の「掃除」を担当する「飛ばし屋」の存在!損失をきれいにする方法を教える。博打で負けを認めず、先延ばしするようなもの。

第1章 萌芽
(1)2015年:三田電機の「不適切会計」&警視庁捜査2課・小堀管理官
B 警視庁捜査2課(知能犯を扱う)小堀秀明管理官。
B-2 三田電機の「不適切会計」に違法性があるのではないかと、内偵捜査を開始する。

(2)1977年大牟田:古賀良樹(1960生れ、高3)、母・良美、妹・睦美(高1)&信金課長・荒井
C 古賀良樹(高3)。母・良美(42歳)スナック経営。妹・睦美(高1)。父は14年前、炭鉱爆発事故で死ぬ。
C-2 信金課長・荒井:母のスナックの上客。母と関係あり。睦美を狙っている。
C-3 炭鉱の町はさびれている。
D 古賀良樹のバスケ部2年先輩・野田。大阪の証券会社支店のトップ営業マンで、月に30万円以上の給料。大牟田では、当時、高卒の月給7-8万。古賀良樹は、野田を羨む。

《感想》
石炭から石油へのエネルギー転換で、北九州の炭鉱地域の経済は壊滅した。

(3)・(4)2015年、内外情報通信社・相楽:「三田電機は上場廃止にならない」
E 捜査2課管理官小堀は、三田電機の不適切会計をめぐり、米原発子会社の減損が、決算に反映されていない公算が大きいと見る。
E-2 内外情報通信社主筆・相楽優一郎は、「三田電機は上場廃止にならない」と小堀に言う。

(5)1979年(古賀19歳):古賀、国民証券に就職し場立ち要員
F 古賀は大牟田の高校卒業後、国民証券に就職。東証の場立ち要員となる。2年ぐらいでコネを作り、支店の営業活動に引いてもらう必要あり。

(6)1980年(古賀20歳):古賀、国民証券吉祥寺支店&支店次長・中野
G 古賀、国民証券吉祥寺支店(20人)の営業担当となる。(親会社は村田証券。)
G-2 支店次長・中野哲臣は、親会社村田証券にいたが、降格された。中野は。古賀の能力を買い、証券営業の指南をする。

《感想》
古賀は、能力がある。高校卒業後、国民証券に就職でき、大牟田から東京に出て来た。しかもすぐに場立ち要員から、支店の営業担当となった。

(7)古賀、三田電機・中谷社長と知り合う
(8)1980年:古賀は、国民証券吉祥寺支店で若手営業マンのトップとなる。株式市況専門紙の購読者を狙う。

(9)2015年:警視庁捜査2課・小堀管理官のデータ
H 古賀:1990年(30歳)、国民証券を退社し、金融コンサル会社・コールプランニング設立、代表となる。
H-2 古賀の2年後輩のヤクザ(獄中死、堀田光輝)が、古賀をゆするつもりだった。(古賀の依頼で、ヤクザ・堀田光輝が、古賀の母親を引き殺した。)

(10)1980年:古賀(20歳)が、中野に連れられて行ったスナック
I 古賀が酔いつぶれた「会長」(三田電機)を介抱する。「いつか役に立つ」と中野が言った。
I-2 「これから景気が良くなる」と中野が「大局」を語る。

(11)2015年:警視庁捜査2課・小堀管理官の捜査
J 三田電機・中谷社長とコンサル会社・コールプランニング代表・古賀は懇意だ。
J -2 古賀は、裏の仕事を専門にこなす男だ。

(12)1980年:「大相場」(バブル)が迫っている
K ボックス相場が続き、1980年の株価は7000円前後。「大相場」(バブル)が迫っていると、中野が言う。

(13)1980年:三田電機秘書課長・東田
L 三田電機秘書課長・東田は、「御大」(三田電機)のお守り係。古賀は、東田に取り入る。


第2章 過熱
(1)1987年(古賀27歳):中野の予言が現実化し、株価上昇へ
A 1987年、古賀は、国民証券新宿支店(2番目に大きい支店)に移る。支店長・中野。
A-2 1986年11月NTT株公開。中野の予言が現実化し、株価上昇へ。
B 古賀睦美(25歳)、入水自殺。

(2)(3)(4)2015年:三田電機の「不適切会計」をめぐり、古賀の捜査で、小堀管理官が大牟田へ出張
C 警視庁捜査2課・小堀管理官が大牟田へ出張。三田電機の「不適切会計」をめぐり、古賀の捜査のため。
C-2 古賀の母は「殺された」、「倅がヤクザにやらせた」との噂。
C-3 母・良美の愛人の信金理事長・荒井が首吊り自殺した。「不発弾を背負って死ぬ」とのメモを残した。
C-4 古賀の妹・睦美を、母・良美が、信金の荒井に抱かせ、荒井をスナックの金づるとしておきたかった。母・良美は、荒井から融資も受けていた。

(5)1987年:古賀睦美(25歳)の入水自殺の件で、三田電機秘書課長・東田が、古賀を励ます
D 妹・睦美を東京に呼ぼうと働いてきた古賀は、睦美が自殺したことで男泣きする。
D-2 三田電機秘書課長・東田が、古賀を励まし、元気づける。

(6)2015年(小堀管理官の捜査):2000年位から、特損計上する信金、信組、農協、厚生年金基金等が増加
E 大牟田合同信金理事長・荒井が自殺して、特損(「不発弾」)400億円の存在が公となる。当時、大牟田合同信金の業務純益は、30-40億円だった。
E-2 4つの信金と合併し、大牟田合同信金は事なきを得た。
E-3 2000年位から、特損計上する信金、信組、農協、厚生年金基金等が増加。ネット上でも60位見つかる。

(7)1987年10月「ブラック・マンデー」(=「世界同時株安」)、プログラム売買の暴走
F 「ブラック・マンデー」1987年10/20、NYダウ平均、22.8%安(508ドル安)。(先週末、約2500ドル。)同日、「世界同時株安」東京15%暴落(3836円安)、2万1910円になる。ただし、ほぼ1日で収束した。
F-2 原因は、プログラム売買の暴走。自動売買の時代!

(7)-2 「これから大相場が始まる」(中野):1987年(古賀27歳)
G 国民証券新宿支店長・中野(古賀の上司)は、かつて村田証券(親会社)で法人営業担当だった。責任を取らされ、系列子会社・国民証券へ左遷。
H 「これから大相場が始まる」と中野。①日銀の連続利下げ、②原油安、③企業好決算。過剰流動性相場だ。
H-2 大会社の年金基金は50億円以上の運用規模。中堅企業で3-4億円以上。
I 法人企業は強欲で、損をしても責任をとらない。本来、投資は自己責任なのだが、企業でなく、証券会社が損を被る。損失補填!
J 「妹・睦美が死んだのに、強欲な信金の荒井はのうのうとしている」、「手玉に取り仕返しする」と古賀!


第3章 破裂
(1)1989年8月(古賀29歳):国民証券本社法人営業部・古賀が荒井と契約(取引一任勘定20億円)
A 国民証券本社法人営業部・古賀。1年半前にここに移る。地方の金融機関は、カネを吸い上げるカモ。
B 大牟田合同信金財務本部長・荒井を、古賀が訪れる。信金は、カネ集めはうまいが、運用を知らない。
B-2 ①一般的な営業特金or②取引一任勘定。古賀が荒井に、「20億円、まかせていただきたい」と言う。
B-3 田舎の信金:「熊本、大分の信金を紹介してほしい」と古賀。
B-4 「取引一任勘定で、荒井に損をさせ、いつか破滅させてやる」と古賀。

《感想》
「信金は、カネ集めはうまいが、運用を知らない」ので、バブル時代、証券会社の顧客として狙われた。

(2)1989年8月:ノアレ食品の熊田財務管理部長兼副社長・熊田が古賀と契約(取引一任勘定100億円)
C 大蔵省OB熊田章吾、45歳でノアレ食品(ヤクルト?)入社。高給&運用益によるボーナス。
C-2 熊田が財テクを指揮。ノアレの運用残高、20億円から昨年500億円へ。熊田は「財テクの神様」と呼ばれる(55歳)。
C-3 ①CB(転換社債)、②WB(新株引受権付社債)、③通常の営業特金(特定金銭信託)、④取引一任勘定。
C-4 古賀と熊田との契約:取引一任勘定、100億円、年12%を口頭で約束(書面は証取法違反)。うち2%は切り離し別勘定で、熊田へのキックバック(熊田が運用益の一部をフトコロにする)。

《感想》
法人の財務担当者が、運用益の一部をフトコロにする方法が、具体的にわかる。(ア)高給&運用益によるボーナス。(イ) 証券会社が、取引一任勘定の利益の一部を別勘定にし、財務担当者へキックバック。

(3)2015年(小堀管理官の捜査):金融の「不発弾」
D 金融庁・大森剛:金融の「不発弾」は①NYダウ、②ドル/円レート、③金利等が引き金になって、爆発する。

(4)1989年11月下旬(古賀29歳):損失補償100億円・証取法違反のスクープ
E 1989年11/9、ベルリンの壁崩壊。
F 大光証券(山一証券?)の損失補償100億円・証取法違反が、大和新聞に報じられる。その後、しかし、世論は沸騰せず。(Cf. 四大証券:野村・山一・大和・日興)
F-2 「終りの始まりだ」と中野(古賀の上司)。

(5)1989年12月下旬:エクイティ・ファイナンス(株式発行による資金調達)増大
G エクイティ・ファイナンス(株式発行による資金調達、①普通の株式、②CB(転換社債)、③WB(新株引受権付社債)の増大。86年9.4兆円、87年13.4兆円、88年28兆円、89年70.5兆円。
G-2 市場で調達したカネを株式市場に再投入し財テク。一方で、(ア)株価上昇・バブル、他方で、(イ)土地ころがし・地価上昇。
G-3 低金利、企業の好業績で、日経平均は史上最高値更新、1989/12/22、日経平均終値3万8040円。

《感想》
エクイティ・ファイナンスにより市場で調達したカネを、一方で、株式市場に再投入し株価上昇(バブル①)での財テク、他方で、土地ころがし・地価上昇(バブル②)による財テクだ。

(6)1989/12/24:大蔵省証券局長通達で取引一任勘定禁止など
H 中野が、大蔵省証券局長通達の写しを手に入れる。Ministry of Finance担当(MOF担)から。
H-2 ①損失補償禁止、②取引(投資)一任勘定禁止など。
H-3 「梯子をはずされた」と中野。しかし「当局(オカミ)は絶対だ!」
H-4 古賀は、ノアレの熊田(財務管理部長)、大牟田の荒井(信金理事長)への、対応が必要となる。
H-5 「歩合給という打出の小槌がなくなる」と古賀(29歳)。

《感想》
大蔵省証券局長通達の写しを手に入れたことで、証券会社は、バブル崩壊(株価下落)を予想できた。彼らは、法人に取引一任勘定を清算させ、高値の内に売り抜けさせ、損させなかった。個人投資家だけが、バカを見た。

(7)(8)仕組債(※デリバティヴの一種):ヘルマン証券東京支店・杉本
I ヘルマン証券東京支店ヴァイス・プレジデント、杉本(京大理学部宇宙物理学科卒27歳)。
I-2 杉本は、私募債のトレーディングに関わる。証券会社間にネットワークを張り、私設マーケットを作る。そこで、私募債をマッチングさせる。
I-3 オーダーメイドの債権を作る(杉本)。営業特金が禁止されるので、新しい私募債=仕組債(シクミサイ)が必要となる。顧客(企業)の需要にあった債権を作る
I-4 営業特金の損失を一時的に穴埋めする債権をつくる。10年、20年先に株価が元通りになるまで、損失をホールド(先延ばし)する。
I-5デリバティヴ(金融派生商品)を作る。金融派生商品(デリバティヴ)(先物取引など)は、将来の損失を回避するためできた。

《感想》
営業特金の損失を一時的に穴埋めする仕組み債が、金融派生商品(デリバティヴ)だ。デリバティヴは、基本的に、諸条件付きの、先物取引だ。

(9)1990年3月(古賀30歳):後発薬メーカー・小峰が、営業特金15億円⇒11億円へ(ロス4億円)
J 後発薬メーカー財務部長・小峰は、営業特金15億円を古賀に任せていた。
J-2 1989年12月:このファンドは17億円で回っていた。今、1990年3月には11億円になってしまった。
J-3 古賀は、ロスを最小限(4億円)にとどめてやったと思う。
J-4 1989年、12/24大蔵省証券局長通達の写し、入手後、12/29(日経平均3万8915円)までに、法人は損失を出さず、すでに解約。(Cf. 個人は知らずに買い続け、大損!)
J-5 小峰は、解約を渋って、損が拡大した。
K 1990年3/20、日銀が4度目の利上げ、公定歩合5.25%へ(計1%上昇)。日経平均株価は、最高値より9072円下げ。(1990/3/20)

《感想》
1989年12月末までに、法人は損失を出さず、個人だけ知らず買い続ける。馬鹿な話だ。

(10)1990年4月:ノアレ食品の熊田・財務管理部長兼副社長
L ノアレの85億円の取引一任勘定(古賀が熊田から引き受ける)を、熊田、解約せず。かくて、古賀は清算できない。ノアレの取引一任勘定は、85億円から、50億円に、大きく目減り。
M 「局長通達のインパクトが強すぎた」と、大蔵省は思っている。だから大蔵省も取引一任勘定の清算を強要できないはずだ。下落スパイラルが止らなくなるため。(熊田の判断!)
M-2 Cf. 証券会社が損失補填をする荒業に、「証券会社による株式紛失」がある。
M-3 熊田は、元大蔵官僚だったので、役所の落とし所を知っている。居直り強盗のような図太さ。

(11)1990年4月「ファンドの損失を、海外に飛ばします」:ヘルマン証券・杉本(Cf. 古賀30歳)
N 「国民証券さんのファンドの損失を、海外に飛ばします」と、ヘルマン証券・杉本。
N-2 カリブ海のケイマン諸島のペーパーカンパニーが、損失の移動先。これは登記のみで、実質的には私(杉本)の机の引き出しに入る。
N-3 ノアレが抱えた株式運用(古賀が熊田から引き受けた取引一任勘定85億円)の損失を、ケイマンで、塩漬けにする。
N-4 株価下落が一息つけば、再び大蔵省が、営業特金、取引一任勘定の清算を求めて来る。

(11)-2 デリヴァティブとしての仕組債:ヘルマン証券・杉本
O 取引一任勘定を、「仕組債」に丸ごと売却する。大蔵省向けに、「清算」した形式が整う。(古賀)
O-2 運用損を表面化させないための仕組債!ノアレは、すでに35億円以上の損失。(大手自動車、大手電機メーカーでは、損失がもう一桁多い。)運用損を、仕組債で切り離す。
O-3 《5年後》、《先物》、《オプション》(先々の取引の権利の売買、買う権利・売る権利など)を組み込んだノアレの一任勘定用の仕組債:デリヴァティヴ。
O-4 「ノアレの運用損は何とかする。ケイマンに飛ばし、5-6年間は表面化しない。」と杉本。
O-5 《日本の平均株価の先物》、《ロンドンの銀行間金利のオプション》、《その他いくつかの指標のオプション》、これらを組み合わせた仕組債をヘルマン証券が発行し、ノアレに売却する。

(11)-3 日本は時価会計が導入されていない
P 運用損を、表面化させないための仕組債が可能な理由は、日本では時価会計が導入されていないためだ。
P-2 日本企業は、普通、原価法を採用する。
P-3 時価会計は、決算期末ごとに、資産である有価証券を時価評価する。

(11)-4 仕組債の販売でヘルマン証券が得るメリット
Q 先物(Ex. 仕組債)は、定められた期限、定められた値段になった時、①強制的に売買を清算、あるいは②追加の証拠金を支払う。
Q-2 5年後に、「昨年末の史上最高値に、株価が戻っている」という前提で、仕組債は作られる。
Q-3 5年という期限に関係なく、「平均株価1万円の大台を割り込み、ロンドンの銀行間金利3.5%を下回った」場合には、ノアレはヘルマン証券に500億円を支払う。
R ヘルマン証券・杉本は、「いずれ市場が暴発し、ノアレがヘルマンに500億円を振り込まざるを得ない」と、想定する。

(11)-5 企業の株式含み損&大手銀行の不良債権問題
S 「営業特金、取引一任勘定を清算していない企業のリストがほしい」、「顧客との契約のたびに、手数料を支払う」とヘルマン証券・杉本が、国民証券・古賀に言う。
S-2 「企業の株式含み損&大手銀行の不良債権問題で、これから負の遺産を海外に飛ばす需要が高まる」と杉本。
T 「国民証券から、ヘルマン証券に移った方がよい」と杉本が古賀に言う。
T-2 すでに国民証券で上司の中野は、クレディ・バーゼル証券(初代東京支店長)に移る予定だ。


第4章 潜行
(1)2016年:1999年(古賀39歳)のリポートにCBFSの免許取消の記事あり
A 警視庁捜査2課・小堀管理官:1999年のリポートを読む。
A-2 冨田精工(金庫製造)が、デリバティヴで多額の損失。自己破産。負債400億円。有価証券含み損先送りスキーム(財テクの損失を隠すための商品)による破綻。
⇒CBFS(クレディ・バーゼル・フィナンシャル・ソリューション)銀行東京支店の金融商品で破綻した。
⇒金融監督庁(金融庁の前身)が、公益を害する行為として、CBFSの免許取消。
⇒中野哲臣・CBFS東京支店長を検査忌避で刑事告発⇒その後、中野、懲役4月。(中野は、国民証券で、古賀の上司。)

(2)(3)1990年4月:古賀(30歳)は、自分を、汚れ仕事をする「コールマン」と呼ぶ
B 中野、CBFS(クレディ・バーゼル・フィナンシャル・ソリューション)銀行東京支店長となり、有価証券含み損先送りのためのオーダーメードの債権を販売し、成功。⇒やがて、中野は10億円蓄財。
C 古賀は、自分を汚れ仕事をする「コールマン」と呼ぶ。
D 時価会計導入で、運用損を一気に開示しろと大蔵省が、言いだす可能性がある。(※2001年3月期決算 から時価会計導入)

(4)(5)(6)(7)1990年4-7月:古賀(コールマン)が金融コンサルタント会社「コールプランニング」設立
E 古賀(30歳)は、フリーの金融ブローカー(コンサルタント)となる。
E-2 1990年7月、古賀、国民証券を退職。中野のクレディ・バーゼル銀行にも、杉本のヘルマン証券にも行かない。
E-3 古賀は、フリーの金融コンサルタントとして起業。顧客を、クレディ・バーゼル銀行およびヘルマン証券につなぐ。特製の仕組債を、営業特金や取引一任勘定の損失のため、クレディ・バーゼル銀行およびヘルマン証券が、提供。
E-4 古賀は、金融コンサル会社「コールプランニング」設立。三田電機海外事業本部長・東田がお祝いに来る。
F ノアレ・熊田副社長の取引一任勘定400-500億円、年初よりの含み損2割。
F-2 地方の中小金融機関(Ex. 大牟田合同信金・財務本部長荒井)、農業系金融機関、教職員・中小企業の年金運用機関なども、大きな含み損。
F-3 古賀のコンサル料は、仕組債の販売額の0.1%。

(8)1990年10月:不動産市場が弾じけ、財テク終了&与党幹部の息子、芦原恒三
G 1990年3月、銀行の不動産向け融資、総量規制。⇒不動産市場が弾け、財テク終了。
H ゼウス光学財務本部運用部長・桜川、引き継いだ帳簿が「不発弾」のように厄介な運用損を持つ。
H-2 「運用損を何とかしてくれる外資を紹介してほしい」と、桜川から、古賀に依頼あり。「財務に居るのは、ほんの腰かけ。その間の決算を乗り切れればよい」と桜川。
I 芦原恒三(元外務大臣の子息)(安倍?)、三田電機海外事業本部長・東田、ゼウス光学・桜川の勉強会(飲み会)が始まる。
I-2 与党幹部の息子、芦原恒三は、古賀にとって、中野に代わる、新たな盾だ。強欲な顧客、手負いの法人客への盾になる。

(9)1992年8月(古賀32歳):ボックス相場向け「ノックアウト条件付き仕組債」
J 平均株価がボックス圏なので、ヘルマン証券が、ボックス相場向けの金融商品を開発。古賀が、ヘルマン証券・杉田に取り次ぐ。
J-2 ヘルマン証券東京支店(杉田)が、「ノックアウト条件付き仕組債」を、ノアレ(熊田副社長)に販売。
J-3 想定レンジ1万5000円―2万2000円を破ったらノックアウトされるという条件。
J-4 プレミアムを先取りする。「売り」の権利を前払いのカネとして先取りする。(オプション取引のプレミアム先取り。)
J-5 「ノックアウト条件付き仕組債エクストラ」もある。ノアレが400億円購入すると、プレミアム先取りが100-200億円ある。
J-6 「莫大なプレミアムに目がくらんでも、御社が引き受けるリスクは無限大です」と古賀は、熊田に言わなかった。

(10)(11)(12)1997年11月(古賀37歳):含み損を海外に飛ばすビジネス
K クレディ・バーゼル銀行(CBFS)東京支店長・中野は笑いが止まらない。含み損を海外に飛ばすビジネスは、1994-1996年、倍々ゲームで収益拡大。
K-2 1997年、北海開拓銀行(※拓銀)、山屋証券(※山一)、破綻。
K-3 財テク企業への営業(含み損を海外に飛ばすビジネス)は、クレディ・バーゼル銀行(CBFS)(中野)やヘルマン証券(杉本)、そして他の外資系金融機関が食いつくした。古賀が、70-80社分をつなぐ。
L 荒井は、大牟田合同信金理事長になっていた。
L-2 不動産関連融資の不良債権化で、地方の金融機関疲弊。
l-3 古賀は、西日本、九州の地方金融機関について、200件以上の顧客仲介。古賀、6億円儲ける。(※1件当たり300万円。)

(13)1997年11月:ノアレ(※ヤクルト)の仕組債、1ドル=79円台で破裂
M ノアレ(※ヤクルト)社長が、財テクから完全撤退すると表明。資金運用に伴う損失総額1087億円。
M-2 ノアレの熊田副社長の責任が問われる。
M-3 オプション取引を組み込んだ仕組債が、破裂。(ドル・円のノックアウト債で、1ドル=80円を設定。)
M-4 ところが、ヘッジファンドなど機関投資家(ヘルマンの得意先)が超円高を仕組む。かくて1995年4月、1ドル79円台となる。

(14)1997年11月: 1993年衆議院初当選した芦原恒三が、ノアレ問題を隠蔽
N 芦原恒三の父(元外相)が、大蔵省の熊田をノアレに紹介した。
N-2 ノアレが損失を確定させれば、熊田は背任で刑事告発される。
N-3 1993年、芦原恒三は、衆議院初当選。先代の名がマスコミに取り上げられるのは困る。
N-4 かくて東京地検特捜部に、刑事告発をやめさせる。

(14)-2 1997年11月:大蔵省が公的資金投入で不良債権処理の方針を決める
O 1997年11/29付か、大蔵省の文書によると、公的資金投入で不良債権処理の方針、総額50兆円。
O-2 今後2-3年の間に、不良債権問題は峠をこす。
O-3 かくて「含み損を飛ばすビジネス、つまり損失を隠すビジネス縮小する」と、古賀(37歳)が思う。
P 古賀は、衆院議員・芦原恒三(安倍?)のサラブレッドの手を見て思う。「この国は、白い柔らかい手を持つ人間が、すべてを動かす。」「絶対に、ごつごつした手の人間は、彼らに逆らってはいけない。」

(15)1997年12月:「仕組債が違法とされるまでの間は、稼ぐ」と古賀
Q 北海道庁など共済年金を運用する基金の財務課長が、引き継いだ90億円のファンドに30億円の損失があり困る。古賀が、仕組債(オプション取引を使ったデリバティヴ)を説明。CBFSにつなぐ。


第5章 泥濘
(1)(2)1999年1月:CBFS銀行東京支店に、金融監督庁が一斉検査に入る(古賀39歳)
A 古賀が紹介した仕組債で、全国各地の地銀・信金・信組の自殺者、多数。
A-2 1999年1月にCBFS銀行東京支店に、金融監督庁が一斉検査に入る。
→同年、CBFS銀行東京支店(支店長中野)、免許取り消し。
→損失先送り商品の仕組債を、他の金融機関に買ってもらえず、損失確定し、担当者が責任を取り自殺。
A-3 CBFS(東京支店長・中野)の顧客の3割は、古賀の紹介。(Cf. ヘルマン証券・杉本。)→サポートした自分は、どのような処分を受けるのかと古賀は心配する。

(3)1999年4月:仕組債を使った飛ばしビジネスは終了
B ヘルマン証券幹部・杉本が、インターネット専業証券を設立。
B-2 ヘルマン証券は、日本政府に働きかけ、ターゲットにならなかった。
B-3 「CBFSの仕組債が違法だという法的根拠は、乏しい」と杉本。「CBFS東京支店長の中野さんは、金融監督庁の生贄にされた。」
B-4 「仕組債を使った飛ばしビジネスは終了だ」と杉本。

(4)1999年8月:信金理事長・荒井、60億円の損失
C 大牟田合同信金理事長・荒井、60億円の損失。
C-2 CBFS銀行東京支店が免許停止(1999年7月)になったため、損失が生じた。
C-3 古賀は、「仕組債とCBFSを紹介したまでのことだ」と、荒井に言い返す。
C-4 「CBFSとの取引を引き取る外資はない」と古賀が、荒井を突っぱねる。

(5)(6)2000年5月:内閣官房副長官・芦原恒三とゼウス光学社長・桜川のために、古賀(40歳)がヘルマン(杉本)を紹介する
Dゼウス光学、財テクで失敗。9年半前(1990年)、財務本部運用部長・桜川(Cf. 三田電機社長・東田と同期)の70億円の損失を、古賀が仕組債で隠す手助けをする。
D(続) 9年半前(1990年)、古賀の独立を、桜川と東田が祝った。
D-2 ゼウス光学(Cf. オリンパス)社長となった桜川、ハーバード債に手を付ける。オプションプレミアムが高額で、それを内視鏡開発に使う。累積損失953億円。近い将来時価会計導入で、明るみに出るだろう。
E 内閣官房副長官となった芦原恒三が、輸出産業の柱として、内視鏡技術を強化せよとの方針。
E-2 「今、900億円の損失を公表できない」とゼウス光学社長・桜川。
E-3 古賀が、ヘルマン証券投資部門の若手バンカー(杉本)を紹介。「御社・ゼウス光学と芦原先生のためです」と古賀。
F ヘルマンは、M&Aの手法を使う。海外の新興企業に投資する形をとる。
F-2 成長の見込み大として買収(or出資)⇒数年後、「見込みが外れた」と特損を計上⇒以前の損失をうやむやにする。

《感想》
なかなかうまい方法があるものだ。大きなカネが動けば、そこに紛れさせて、ごまかすことが可能だ。

(6)-2 2000年5月:三田電機(社長東田)(※東芝)の負の遺産予備軍:ネット部門
G インターネット関連企業の勃興で、三田電機もインターネット関連ビジネスに進出。(三田電機社長・東田)
G-2 しかしネットも近くバブルがはじけるだろう。(東田)
G-3 コンピューター、インターネット関連ビジネスは、すぐ古くなる。ドッグイヤー(人間の7倍の成長速度)!
H また三田電機は大きく、まるでクジラだ。すぐに方向転換できない。(東田)
H-2 巨大な組織は、事業ごとの派閥がある。不採算な事業からの撤退も、すぐに出来ない。
H-3 今は、コンピューターや半導体が強いが、将来の足かせになりうる。
H-4 半導体・パソコン部門と、原発・火力発電の重電部門が、対立。⇒分社化(カンパニー制)で、部門ごとに収益を競わせることで乗り切る。

《感想》
巨大企業が、「小回りがきかない」事情が分かる。すぐに方向転換できない。事業ごとの派閥化で、不採算事業からの撤退が、すぐ出来ない。

(7)2016年8月:警視庁捜査2課小堀管理官、内外情報通信社・相楽を訪ねる(古賀56歳)
I 三田電機の決算対策問題を、捜査2課小堀管理官が捜査中。
I-2 2年前、不採算半導体液晶関連事業の再構築で2000億円の特損。
I-3 これに仕組債の特損、700億円(不発弾)を混ぜる。
I-4 前向きなリストラと、投資判断が上がる。(もちろん、従業員はリストラで苦しむ。)
I-5 「これは金融商品取引法の偽計取引だ。また古賀は、偽計幇助だ。」と小堀管理官!
J 内外情報通信社・相楽が言う。①三田電機の上場廃止はない。②古賀はパクられない。③ガセネタだ。
④これが、この国の仕組みだ。

(8)(10)(11)2016年8月:警視庁捜査2課小堀管理官、高井戸ヘルシーフード(2003年開業)・中野と会う
K 2000年、CBFS銀行東京支店長・中野、検査忌避と券さ妨害の罪で懲役4カ月、執行猶予2年の有罪判決。K-2 クレディ・バーゼル(CBFS)が中野をヘッドハントした時、移籍金2億円+固定給1億円/年+成功報酬だった。(Cf. 当時、管理職平均2000-3000万円/年だった)
K-3 「古賀(56歳)はとてつもなく大きな存在になった」と中野。
K-4 「行政の方針転換のスピードがあまりに早かった」と中野。

(9)(12)2000年5-8月 大牟田合同信金理事長・荒井自殺
L 「うちの損失60億円を、引き取る外資はないのか?」と大牟田合同信金理事長・荒井が、古賀に頼む。九州財務局の検査がある。
L-2 「おかみ(当局)の姿勢は180度変わった!」と古賀。体力のない金融機関は、淘汰される。
L-3 その後、信金理事長・荒井自殺。

(13)2016年8月 三田電機の粉飾決算の件:小堀管理官
M 年商6-7兆円の企業で、1500億円程度の粉飾決算は瑣末だ。
M-2 バイセル(buy-sell)取引が不正の温床。委託生産先企業に、必要な量を大幅に上回る部品を売り、利益水増し。(製品は買い取る。)
M-3 三田電機のバイセル(buy-sell)取引を指示したのは、奥の院の東田、知恵をつけたのは古賀の可能性あり。


最終章 光明
(1)(2)(3)(4)2016年9月:三田電機7年間の「不適切会計」1500億円(2015年)と古賀
A 古賀(56歳)、表立った金融の仕事から手を引き6年。小堀管理官が、三田電機の粉飾決算(「不適切会計」)の件で古賀を追跡する。
B 2015年、三田電機が7年間の「不適切会計」、1500億円のお詫び会見をする。(プロローグ参照)その前に、古賀に、恩義ある男・三田電機東田から、呼び出しあり。「不良債権隠し、損失隠蔽」の当代随一の顔役(裏方)である古賀。
C 小堀管理官が、古賀を任意同行する。
C-2 「違法性ある取引はしていない」と古賀。時価会計導入以前。CBFS証券と違い、古賀は訴追されず。
C-3 三田電機(※東芝)7年間、粉飾決算1500億円。さらに原発事業の減損処置1000億円も行っていない。
C-4 古賀が、ヘルマンに持ちかけたことも分かっている。ヘルマンも近く令状を取り捜索する。(小堀管理官)
C-5 古賀は、金融商品取引法違反、虚偽記載幇助に当たる。(小堀管理官)

(4)-2 2016年9月(続):金融界に棲みついたウイルス(古賀)
D ゼウス光学も上場廃止を免れた。古賀が、海外M&Aによる損失隠蔽を、紹介する。
D-2 「私は、金融界に棲みついたウイルスです」と古賀。「新薬に対抗して生き続けるウィルス!」
E 三田電機の原発事業の減損(ロス)を低く見せる助言を、古賀がした。金融商品取引法違反。
F 古賀とJM(※日本郵政)(トップは東田)はつながっている。JMのアドバイザー、古賀。
F-2 JMのトップ東田は、三田電機の「上皇」でもある。
F-3 日銀のマイナス金利政策で、三田電機運用損。古賀が巨額の損失に蓋をする。

(4)-3 2016年9月(続):警視庁捜査2課・小堀管理官は栄転!三田電機の粉飾決算の捜査、頓挫する!
G 「三田電機が粉飾決算で上場廃止になることはない」と、前に、相楽が小堀管理官に言っていた。
G-2 芦原が現在の首相!三田電機の「上皇」東田が、戦後70年談話有識者会議座長!
G-3 三田電機の「不適切会計」(粉飾決算)を捜査していた警視庁捜査2課・小堀管理官は、栄転(神奈川県警捜査2課長へ)。官邸から警察庁に強い意向。(これは、古賀が芦原総理と会った直後だった!)

《感想》
①「不良債権隠し、損失隠蔽の当代随一の顔役(裏方)」である古賀(1960年生)の物語。古賀は、大企業の不正の「掃除」を担当する「飛ばし屋」であり、「損失をきれいにする方法」を指南する。
②古賀が、1979年(19歳)、国民証券に就職し、場立ち要員となった時から、2016年(56歳)までが描かれる。
③古賀は37歳の時(1997年)、衆院議員・芦原恒三のサラブレッドの手を見て思った。「この国は、白い柔らかい手を持つ人間が、すべてを動かす。」だから「絶対に、ごつごつした手の人間は、彼らに逆らってはいけない。」
④警視庁捜査2課・小堀管理官は、結局、官邸の指示で、三田電機の「不適切会計」(粉飾決算)の捜査を中止せざるを得なかった。











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