A 「雇用を守り、産業を保護するのは間違いだ。規制撤廃こそ唯一の成長政策、歴史の必然だ」と唱え、世界を席巻したグローバル資本主義。だがそれは世界に、経済危機、格差拡大、社会崩壊をもたらした。どう乗り越えるか?
(1)新自由主義の災厄:アメリカ、EU、ドイツ、日本
B アメリカ、2008年、リーマンショック。EU、ギリシア、スペインなど国家破綻寸前。
C EUの悲劇。グローバル化の帰結。①各国は、通貨の切り下げなど金融緩和も財政出動もできない。②各国は、経済の自立を失い、国家主権さえ失っているに近い。
《評者の感想》ここではグローバル化は、ユーロ導入、各国をしばるEU諸基準と等価。
D EUの唯一の勝者は、ドイツ。ドイツは、ユーロ圏が開かれた市場であることをフル活用。①ユーロ安でドイツの輸出産業繁栄。②EUの各国を低賃金で“下請け”として使う。
D-2 ドイツ以外の国々では、経済、特に製造業が破壊され、通貨政策の自由もない。しかも緊縮財政を強いられる。
D-3 仏のオランド大統領は、まるでドイツの副首相。仏の財務相は、ベルリンにお伺い。
D-4 ドイツでも格差拡大。合計特殊出生率が1.4と、日本に次いで低い。
E 日本は、円安・株高実現が、できて良い。
E-2 しかし日本が、法人税減税で外資を呼び込む必要はない。日本は経常収支が黒字で、資本は潤沢。途上国と違う。
E-3 自民党の「抵抗勢力」が、かつては新自由主義的な政策の行き過ぎをチェック。しかし、今は期待できない。
(2)IMF改革後の韓国の惨状:雇用の不安定化、非正規雇用化
F 韓国では、60年代から80年代は日本の経済モデルがお手本。80年代に軍事独裁が終わると「自由市場」が国家的コンセンサスとなる。
F-2 90年代に日本の経済が傾き、アメリカが復調。韓国では、「日本モデルは終わりだ」、「アメリカのように自由市場になるべきだ」の声が強まる。
G アジア通貨危機の波及で、いっそうの規制の撤廃。IMF以降、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなった。新自由主義が一国の経済を「根底から破壊」した。
(3)グローバリズムの神話を剥ぐ:新自由主義による成長率低下
H 新自由主義で経済成長率が落ちる。先進国全体の成長率:1960-80年平均3.2%、新自由主義の理念の下グローバル化した1980-2010年平均1.8%。韓国:IMF改革前6-7%、改革後2-4%。
I 新自由主義による成長率低下の原因:①経済を規制するルールがなくなり不安定化。Ex. リーマンショック。②企業には「短期的に成果を出せ」という圧力。長いスパンの視点を持てない。設備投資、研修、リサーチの軽視など。目先のパイの奪い合いで、パイを大きくしない。
J 「国による産業保護」がアメリカ、日本の成長を生んだ。50年代、60年代に市場が守られて日本の自動車産業が発展。南ア、ブラジル、コロンビアなど途上国で、保護的産業政策がとれない。
K グローバル化は歴史の必然でない。覇権国家が世界の安全を保障しないとなりたたない。K-2 世界経済がグローバル化:13世紀の元、15-16世紀大航海時代のスペイン。その後、「脱グローバル化」する。
K-3 「第1次グローバル化」:1870年-1914年、イギリス中心。戦争・恐慌で終わる。
K-4 ブレトンウッズ体制は「脱グローバリズム」の時代:50年代から70年代。
K-5 80年代以降の「第2次グローバル化」:アメリカという覇権国家が弱まるとグローバル化が終わる。
L アメリカのオバマ大統領は、アメリカの新たな可能性?寛容、格差是正、経済に規制を持ち込む。自由貿易は断固として拒否するべきだが、オバマ大統領は別?
(4)なぜエリートは間違い続けるのか:エリートのコミュニティ、エリートの劣化
M 一方で、自由経済・競争社会の新自由主義を「信じる」エリート。他方で、自己の企業の利益を追求するため国家&新自由主義を唱え「隠れ蓑」にするエリート。
N 官僚や学者の「臆病さ」。米国でグローバル化、新古典派経済学を批判すると、エリートに相手にされない。エリートのコミュニティからの疎外を怖がる。
O エリートの無為無策の正当化としての「自由放任」。
P ハンナ・アーレント『全体主義の起源』が、グローバリズムを唱えるエリートの劣化にも当てはまる。①全体主義下では思想・理論の合理性が一切問われない。②様々な「社会的な俗情」に基づいてご都合主義的に思想・論理が選定される。③複雑で多様な世界を単純化し、わかりやすくまとめ上げる思想・理論・物語を「ウソ」でも良いから望み、それを信じる。
P-2 新自由主義、市場原理主義という恐ろしく単純な「ウソの論理」!
(5)中国、そして日本の未来:中国は危険&日本は健全
Q ①中国はリーマンショックへの対応で財政拡張、不動産バブル。②金融セクターの不良債権への不安。「影の銀行」問題が輪をかける。③深刻な経済格差。社会的暴発の危険。④国民が豊かになる前に高齢化(国連推計で、2035年、高齢化率19.5%)。⑤住宅や設備など固定資産投資が、GDPの40-50%。無駄な生産設備を増やすだけだったスターリン時代のソ連経済に、似る。⑥中国は、領土問題で国際秩序の再編を狙う。「プレ1914年」時代的な中国の行動の危険!
R 日本経済は、日本国内で議論されているより、外から見ればかなり健全。
(1)新自由主義の災厄:アメリカ、EU、ドイツ、日本
B アメリカ、2008年、リーマンショック。EU、ギリシア、スペインなど国家破綻寸前。
C EUの悲劇。グローバル化の帰結。①各国は、通貨の切り下げなど金融緩和も財政出動もできない。②各国は、経済の自立を失い、国家主権さえ失っているに近い。
《評者の感想》ここではグローバル化は、ユーロ導入、各国をしばるEU諸基準と等価。
D EUの唯一の勝者は、ドイツ。ドイツは、ユーロ圏が開かれた市場であることをフル活用。①ユーロ安でドイツの輸出産業繁栄。②EUの各国を低賃金で“下請け”として使う。
D-2 ドイツ以外の国々では、経済、特に製造業が破壊され、通貨政策の自由もない。しかも緊縮財政を強いられる。
D-3 仏のオランド大統領は、まるでドイツの副首相。仏の財務相は、ベルリンにお伺い。
D-4 ドイツでも格差拡大。合計特殊出生率が1.4と、日本に次いで低い。
E 日本は、円安・株高実現が、できて良い。
E-2 しかし日本が、法人税減税で外資を呼び込む必要はない。日本は経常収支が黒字で、資本は潤沢。途上国と違う。
E-3 自民党の「抵抗勢力」が、かつては新自由主義的な政策の行き過ぎをチェック。しかし、今は期待できない。
(2)IMF改革後の韓国の惨状:雇用の不安定化、非正規雇用化
F 韓国では、60年代から80年代は日本の経済モデルがお手本。80年代に軍事独裁が終わると「自由市場」が国家的コンセンサスとなる。
F-2 90年代に日本の経済が傾き、アメリカが復調。韓国では、「日本モデルは終わりだ」、「アメリカのように自由市場になるべきだ」の声が強まる。
G アジア通貨危機の波及で、いっそうの規制の撤廃。IMF以降、普通の会社、普通の働き方、普通の所得がなくなった。新自由主義が一国の経済を「根底から破壊」した。
(3)グローバリズムの神話を剥ぐ:新自由主義による成長率低下
H 新自由主義で経済成長率が落ちる。先進国全体の成長率:1960-80年平均3.2%、新自由主義の理念の下グローバル化した1980-2010年平均1.8%。韓国:IMF改革前6-7%、改革後2-4%。
I 新自由主義による成長率低下の原因:①経済を規制するルールがなくなり不安定化。Ex. リーマンショック。②企業には「短期的に成果を出せ」という圧力。長いスパンの視点を持てない。設備投資、研修、リサーチの軽視など。目先のパイの奪い合いで、パイを大きくしない。
J 「国による産業保護」がアメリカ、日本の成長を生んだ。50年代、60年代に市場が守られて日本の自動車産業が発展。南ア、ブラジル、コロンビアなど途上国で、保護的産業政策がとれない。
K グローバル化は歴史の必然でない。覇権国家が世界の安全を保障しないとなりたたない。K-2 世界経済がグローバル化:13世紀の元、15-16世紀大航海時代のスペイン。その後、「脱グローバル化」する。
K-3 「第1次グローバル化」:1870年-1914年、イギリス中心。戦争・恐慌で終わる。
K-4 ブレトンウッズ体制は「脱グローバリズム」の時代:50年代から70年代。
K-5 80年代以降の「第2次グローバル化」:アメリカという覇権国家が弱まるとグローバル化が終わる。
L アメリカのオバマ大統領は、アメリカの新たな可能性?寛容、格差是正、経済に規制を持ち込む。自由貿易は断固として拒否するべきだが、オバマ大統領は別?
(4)なぜエリートは間違い続けるのか:エリートのコミュニティ、エリートの劣化
M 一方で、自由経済・競争社会の新自由主義を「信じる」エリート。他方で、自己の企業の利益を追求するため国家&新自由主義を唱え「隠れ蓑」にするエリート。
N 官僚や学者の「臆病さ」。米国でグローバル化、新古典派経済学を批判すると、エリートに相手にされない。エリートのコミュニティからの疎外を怖がる。
O エリートの無為無策の正当化としての「自由放任」。
P ハンナ・アーレント『全体主義の起源』が、グローバリズムを唱えるエリートの劣化にも当てはまる。①全体主義下では思想・理論の合理性が一切問われない。②様々な「社会的な俗情」に基づいてご都合主義的に思想・論理が選定される。③複雑で多様な世界を単純化し、わかりやすくまとめ上げる思想・理論・物語を「ウソ」でも良いから望み、それを信じる。
P-2 新自由主義、市場原理主義という恐ろしく単純な「ウソの論理」!
(5)中国、そして日本の未来:中国は危険&日本は健全
Q ①中国はリーマンショックへの対応で財政拡張、不動産バブル。②金融セクターの不良債権への不安。「影の銀行」問題が輪をかける。③深刻な経済格差。社会的暴発の危険。④国民が豊かになる前に高齢化(国連推計で、2035年、高齢化率19.5%)。⑤住宅や設備など固定資産投資が、GDPの40-50%。無駄な生産設備を増やすだけだったスターリン時代のソ連経済に、似る。⑥中国は、領土問題で国際秩序の再編を狙う。「プレ1914年」時代的な中国の行動の危険!
R 日本経済は、日本国内で議論されているより、外から見ればかなり健全。