第1章 大江山の酒呑童子
A 日本最強の妖怪、酒呑童子。995年、源頼光が退治する。
B 『大江山絵詞』によると、道長の子息が行方不明となる。陰陽師の安倍晴明が酒呑童子の仕業と占い判じる。
C 比叡山が伝教大師によって開かれる以前の先住の神、酒呑童子。
D 渋川版『御伽草子』によると酒呑童子は、越後の国出身。
E 奈良絵本『酒典童子』によると、酒呑童子は近江国出身で、ヤマタノオロチ(スサノオに追われ伊吹山大明神となる)の子。
F 酒呑童子は、もともと山の神or水の神(龍神)or雷神。仏教によって追放された。
第2章 妖狐、玉藻前(タマモノマエ)
A 「金毛九尾の狐」が化けた絶世の美女、玉藻前。
B 『玉藻の草子』によると1154年、鳥羽院のもとに遊女、化粧前(ケショウノマエ)が現れ、寵愛を受ける。これが玉藻前で、院は、交わりを重ね病気となる。
C 陰陽頭(オンミョウノカミ)安倍泰成によれば、玉藻前は那須野に住む800歳のニ尾の狐。天竺出身で、日本の王に成ろうとしている。
D 泰成の方策で、玉藻前は消え失せ、院は平癒。
E 荼枳尼天(ダキニテン)信仰(真言密教)と玉藻前伝説は関係あり。荼枳尼天は狐の神格化であり、天照大神に比定される。(東寺が伏見稲荷を支配下においていた。)
F 三浦介によって、妖狐は退治される。
G 玉藻前の執念(怨霊)が那須の殺生石となる。源翁(ゲンノウ)和尚により退治される。
第3章 是害坊(ゼガイボウ)天狗
A 天狗は、仏法をおとしめるため、人間界に出現する妖怪。
B 「天狗の偽来迎」など、人を化かす天狗。
C その昔は「鳥類天狗」のみで、「鼻高天狗」は後世。
D 龍王と天狗は仲が悪い。
E 人さらいの犯人は天狗。
F 天台の密教僧は「天狗」を想定し、異常を説明。Cf. 陰陽師は「鬼」を想定。
G 『是害坊絵巻』によると966年、唐より是害坊という大天狗の首領が、日本に来る。
G-2 愛宕山の日羅坊天狗のもとに、ワラジを脱ぐ。是害坊は、「僧の修業を妨げてやる」と言う。
G-3 比叡山の密教僧(不動明王を信仰する)の「火界呪」に、是害坊が負ける。
G-4 二度目も是害坊が負ける。
G-5 三度目も是害坊が「日本の生仏(イキボトケ)のような僧」に負ける。日羅坊が「日本は小国だが神国で、多くの仏たちが日本にやってきて人々を守っている」と自慢。
G-6 是害坊は、日羅坊に湯治を施され、元気が回復し、本国(唐)へ帰る。
H 「天狗」は天台宗の宣伝用の物語。
I 天狗と戦うのは、高僧に従う神的な護法童子。病気は、邪気(天狗)による。
J 邪悪な人間or僧が、天狗界へ落ち、天狗になる。
第4章 日本の大魔王、崇徳上皇
A 保元の乱で敗れ、讃岐に流され、彼の地で没した崇徳上皇(1119-1164)が、大天狗の首領となる。金色の大鳶の姿をし、多くの天狗を従え、天下の争乱を企てる。
B 京都の「白峰神宮」、1868年創建。崇徳上皇と淳仁天皇が祭神。朝廷を恐怖させていた崇徳上皇を封じ込める。崇徳上皇は死後、「大魔王」となった。
C 崇徳上皇は、鳥羽天皇の第1皇子で、母は待賢門院詔璋子。しかし本当の父は、鳥羽天皇の祖父白河法皇。
C-2 5歳の時、崇徳天皇となる。鳥羽天皇は上皇へ。(父の堀河天皇はすでに死去。)鳥羽上皇は、実権を持つ祖父白河法皇の死を、願う。
D 1129年、白河法皇が死に、鳥羽上皇が実権を持つ。璋子と崇徳天皇を無視。
D-2 鳥羽上皇、美福門院を入内させ、皇子体仁(ナリヒト)親王を産ませる。
D-3 鳥羽上皇、崇徳天皇を退位させ、体仁親王を天皇に即位させる=近衛天皇。
E 1155年、近衛天皇が死去(17歳)。藤原忠実・頼長父子が呪詛した。
E-2 鳥羽上皇は、鳥羽上皇と璋子の間に生まれた雅仁親王を、後白河天皇とする。
F 1156年、鳥羽上皇が死去。崇徳上皇(藤原頼長・源為義・為朝)側と後白河天皇(平清盛・源義朝)側が対立し、保元の乱へ。
F-2 崇徳上皇、敗れ、讃岐に流され、9年後死去。「日本国の大魔縁」となると誓文を血書。
怨霊となる。Ex. 清盛の死。
G 「鬼」から「天狗」の時代へ。陰陽道の時代から、修験者・山伏の時代へ。崇徳上皇の怨霊が、「大天狗」=「大魔王」となる。
H 『太平記』によると、「天下を大乱に導く」ための天狗評定の中心が、崇徳院。
I 御伽草子『天狗の内裏』によると、牛若丸が、鞍馬山の奥の天狗の国を訪問。大天狗のもてなしを受ける。
I-2 この時代になると、天狗は鬼と区別がなくなる。(ただし天狗には食人性がない。)また天狗は、『太平記』的な怨霊思想からも抜け出す。今日の天狗のイメージに近づく。山伏のイメージが前面に出る。
J 明治の王政復古後、再び、崇徳上皇の祟り(「皇(スメラギ)を取って民となし、民を皇(スメラギ)となさん」)が怖れられる。この祟りによって、西南の役、日清・日露戦争、昭和の15年戦争が起きたとも言える。
第5章 鬼女、紅葉
A 戸隠山の鬼女、紅葉が、退治される。(『北向山霊験記』(明治19年))
B 6つの欲望の世界(仏教)の「第六天の魔王」=他化自在天(タケジザイテン)の申し子としての紅葉。
B-2 美貌の紅葉が、源経基の寵愛を受ける。そして、正室を調伏し苦しめる。紅葉は、比叡山の律師によって捕らえられ、戸隠山に追放される。
C 紅葉は、経基公の子(経若丸)を宿していた。
C-2 紅葉は、金銀財宝を盗む盗賊団の首領となる。若い女を誘拐し、生き血をすすり、肉をあぶって食べる。
C-3 平維茂(コレモチ)軍が、山賊紅葉の討伐に向かう。紅葉が、幻術で対抗。維茂は天台の名刹、北向観音に祈り“降魔(ゴウマ)の剣”を得る。維茂が、紅葉を退治し、首を切り落とす。
D 戸隠山は修験道の聖地で、九頭竜権現を祀る。あるいは「九頭一尾の鬼」を封じ込めて祀ったとの伝承もある。
D-2 戸隠山には、幾人もの鬼が住み着いて、退治された。
E 謡曲『紅葉狩』。平維茂(コレモチ)が戸隠山で、紅葉狩りする貴女に誘われ、酒を飲む。酔いつぶれた維茂が眼をさますと、鬼女が襲いかかるが、神剣で斬り伏せる。
F 『戸隠山絵巻』の「九しやう大王」。戸隠の鬼伝承。長谷観音の夢告の助けを得て、鬼の首をとる。
G 戸隠の地元の人たちは、鬼を愛し続けた。京の帝によって派遣された武将という外部権力への不満の投影。地元のために戦ったヒーローとしての鬼。
第6章 つくも神
A 『百鬼夜行(ヒャッキヤギョウ)絵巻』:器物の妖怪。
B 平安時代終わり頃の『古本(コホン)説話集』によると、たくさんの鬼たち(器物の妖怪)が夜中に道を行進する(百鬼夜行)。鬼たちは、真言密教の呪文により、藤原常行に手を出せない。
C 中世、鎌倉初期『宇治拾遺物語』によると、不動明王の呪文を唱えると、百鬼夜行の鬼たちが手を出さない。
D 百鬼夜行の鬼たちは、酒宴を開くため現れる。人をさらい、人の血や肉を飲み食いする。
E 室町時代の「つくも神(付喪神)」はユーモラス。「九十九(ツクモ)」年もたつと器物に霊が宿り、化ける能力を持つ。
F 『付喪神(ツクモガミ)絵巻』などによると、器物は100年経つと霊を獲得して、人をたぶらかす(付喪神)。そうなる前に、人が古道具を捨てる(煤払い)。
F-2 怒った古道具たちが評定。「古文先生」(古書の精霊)に教えられ、「陰と陽が混沌として事物が造られる節分に、身を虚にして造物の動きに身を任せれば妖怪になれる」と知り、妖怪となる。
F-3 妖怪たちは捨てられた恨みを晴らすため、人間や牛馬をさらい食らう宴会を毎夜開く。
G 妖怪のパレードは、真言密教の「尊勝陀羅尼」の呪文から噴き出た火で散り散りになる。
G-2 祈禱により、不動明王の眷属の護法童子が現れ、妖怪たちの住み処、「鬼が城」を攻め、降伏させる。
G-3 「仏教を信じれば命を助ける」と言われ、妖怪たちは受け入れる。
H 真言宗の宣伝文句:情(心)がない草木や器物も情を宿すことがあるが、それらも修行すれば成仏できる。
I つくも神、つまり器物の妖怪たちは、中世のもので、江戸時代になると急速に人気を失う。それに代わり、お岩さんなど幽霊が台頭する。
第7章 鈴鹿山の大嶽丸(オオタケマル)
A 酒呑童子、玉藻前(タマモノマエ)、大嶽丸が中世の3大妖怪。遺骸(狐)または首が、「宇治の宝蔵」(平等院)に収められた。(いわば戦勝記念。)
B 三万余騎の軍勢で、藤原俊宗が大嶽丸を攻める。
B-2 天から来た鈴鹿御前の助力、千手観音・毘沙門天の守護で、俊宗が大嶽丸を倒す。
B-3 しかし大嶽丸が陸奥の霧山で復活。再び討伐軍が組織され、大嶽丸が討たれる。その首が、「宇治の宝蔵」に収められた。
第8章 宇治の橋姫
A 御伽草子『はなわ』によると、源頼光・安倍晴明の時代、夫の浮気への怒りで、ある女が貴船神社に丑の刻参りをして、鬼女となる。
A-2 陰陽師、安倍晴明が、鬼女を退散させる。
B 鬼女は、燃え盛る恨みの念を晴らすため、夜な夜な洛中に出没し、女に化け男を、男に化け女を、殺した。
B-2 勅命で源頼光が、その家来、渡辺綱と坂田金時に、退治を命じる。
B-3 「弔ってくれれば、もう悪いことをしない」と、鬼女は降参する。「宇治の橋姫社」が設けられる。
C 男性支配の社会で、「橋姫」の丑の刻参りが、女性の心をつかむ。憎むべき男を殺す。
A 日本最強の妖怪、酒呑童子。995年、源頼光が退治する。
B 『大江山絵詞』によると、道長の子息が行方不明となる。陰陽師の安倍晴明が酒呑童子の仕業と占い判じる。
C 比叡山が伝教大師によって開かれる以前の先住の神、酒呑童子。
D 渋川版『御伽草子』によると酒呑童子は、越後の国出身。
E 奈良絵本『酒典童子』によると、酒呑童子は近江国出身で、ヤマタノオロチ(スサノオに追われ伊吹山大明神となる)の子。
F 酒呑童子は、もともと山の神or水の神(龍神)or雷神。仏教によって追放された。
第2章 妖狐、玉藻前(タマモノマエ)
A 「金毛九尾の狐」が化けた絶世の美女、玉藻前。
B 『玉藻の草子』によると1154年、鳥羽院のもとに遊女、化粧前(ケショウノマエ)が現れ、寵愛を受ける。これが玉藻前で、院は、交わりを重ね病気となる。
C 陰陽頭(オンミョウノカミ)安倍泰成によれば、玉藻前は那須野に住む800歳のニ尾の狐。天竺出身で、日本の王に成ろうとしている。
D 泰成の方策で、玉藻前は消え失せ、院は平癒。
E 荼枳尼天(ダキニテン)信仰(真言密教)と玉藻前伝説は関係あり。荼枳尼天は狐の神格化であり、天照大神に比定される。(東寺が伏見稲荷を支配下においていた。)
F 三浦介によって、妖狐は退治される。
G 玉藻前の執念(怨霊)が那須の殺生石となる。源翁(ゲンノウ)和尚により退治される。
第3章 是害坊(ゼガイボウ)天狗
A 天狗は、仏法をおとしめるため、人間界に出現する妖怪。
B 「天狗の偽来迎」など、人を化かす天狗。
C その昔は「鳥類天狗」のみで、「鼻高天狗」は後世。
D 龍王と天狗は仲が悪い。
E 人さらいの犯人は天狗。
F 天台の密教僧は「天狗」を想定し、異常を説明。Cf. 陰陽師は「鬼」を想定。
G 『是害坊絵巻』によると966年、唐より是害坊という大天狗の首領が、日本に来る。
G-2 愛宕山の日羅坊天狗のもとに、ワラジを脱ぐ。是害坊は、「僧の修業を妨げてやる」と言う。
G-3 比叡山の密教僧(不動明王を信仰する)の「火界呪」に、是害坊が負ける。
G-4 二度目も是害坊が負ける。
G-5 三度目も是害坊が「日本の生仏(イキボトケ)のような僧」に負ける。日羅坊が「日本は小国だが神国で、多くの仏たちが日本にやってきて人々を守っている」と自慢。
G-6 是害坊は、日羅坊に湯治を施され、元気が回復し、本国(唐)へ帰る。
H 「天狗」は天台宗の宣伝用の物語。
I 天狗と戦うのは、高僧に従う神的な護法童子。病気は、邪気(天狗)による。
J 邪悪な人間or僧が、天狗界へ落ち、天狗になる。
第4章 日本の大魔王、崇徳上皇
A 保元の乱で敗れ、讃岐に流され、彼の地で没した崇徳上皇(1119-1164)が、大天狗の首領となる。金色の大鳶の姿をし、多くの天狗を従え、天下の争乱を企てる。
B 京都の「白峰神宮」、1868年創建。崇徳上皇と淳仁天皇が祭神。朝廷を恐怖させていた崇徳上皇を封じ込める。崇徳上皇は死後、「大魔王」となった。
C 崇徳上皇は、鳥羽天皇の第1皇子で、母は待賢門院詔璋子。しかし本当の父は、鳥羽天皇の祖父白河法皇。
C-2 5歳の時、崇徳天皇となる。鳥羽天皇は上皇へ。(父の堀河天皇はすでに死去。)鳥羽上皇は、実権を持つ祖父白河法皇の死を、願う。
D 1129年、白河法皇が死に、鳥羽上皇が実権を持つ。璋子と崇徳天皇を無視。
D-2 鳥羽上皇、美福門院を入内させ、皇子体仁(ナリヒト)親王を産ませる。
D-3 鳥羽上皇、崇徳天皇を退位させ、体仁親王を天皇に即位させる=近衛天皇。
E 1155年、近衛天皇が死去(17歳)。藤原忠実・頼長父子が呪詛した。
E-2 鳥羽上皇は、鳥羽上皇と璋子の間に生まれた雅仁親王を、後白河天皇とする。
F 1156年、鳥羽上皇が死去。崇徳上皇(藤原頼長・源為義・為朝)側と後白河天皇(平清盛・源義朝)側が対立し、保元の乱へ。
F-2 崇徳上皇、敗れ、讃岐に流され、9年後死去。「日本国の大魔縁」となると誓文を血書。
怨霊となる。Ex. 清盛の死。
G 「鬼」から「天狗」の時代へ。陰陽道の時代から、修験者・山伏の時代へ。崇徳上皇の怨霊が、「大天狗」=「大魔王」となる。
H 『太平記』によると、「天下を大乱に導く」ための天狗評定の中心が、崇徳院。
I 御伽草子『天狗の内裏』によると、牛若丸が、鞍馬山の奥の天狗の国を訪問。大天狗のもてなしを受ける。
I-2 この時代になると、天狗は鬼と区別がなくなる。(ただし天狗には食人性がない。)また天狗は、『太平記』的な怨霊思想からも抜け出す。今日の天狗のイメージに近づく。山伏のイメージが前面に出る。
J 明治の王政復古後、再び、崇徳上皇の祟り(「皇(スメラギ)を取って民となし、民を皇(スメラギ)となさん」)が怖れられる。この祟りによって、西南の役、日清・日露戦争、昭和の15年戦争が起きたとも言える。
第5章 鬼女、紅葉
A 戸隠山の鬼女、紅葉が、退治される。(『北向山霊験記』(明治19年))
B 6つの欲望の世界(仏教)の「第六天の魔王」=他化自在天(タケジザイテン)の申し子としての紅葉。
B-2 美貌の紅葉が、源経基の寵愛を受ける。そして、正室を調伏し苦しめる。紅葉は、比叡山の律師によって捕らえられ、戸隠山に追放される。
C 紅葉は、経基公の子(経若丸)を宿していた。
C-2 紅葉は、金銀財宝を盗む盗賊団の首領となる。若い女を誘拐し、生き血をすすり、肉をあぶって食べる。
C-3 平維茂(コレモチ)軍が、山賊紅葉の討伐に向かう。紅葉が、幻術で対抗。維茂は天台の名刹、北向観音に祈り“降魔(ゴウマ)の剣”を得る。維茂が、紅葉を退治し、首を切り落とす。
D 戸隠山は修験道の聖地で、九頭竜権現を祀る。あるいは「九頭一尾の鬼」を封じ込めて祀ったとの伝承もある。
D-2 戸隠山には、幾人もの鬼が住み着いて、退治された。
E 謡曲『紅葉狩』。平維茂(コレモチ)が戸隠山で、紅葉狩りする貴女に誘われ、酒を飲む。酔いつぶれた維茂が眼をさますと、鬼女が襲いかかるが、神剣で斬り伏せる。
F 『戸隠山絵巻』の「九しやう大王」。戸隠の鬼伝承。長谷観音の夢告の助けを得て、鬼の首をとる。
G 戸隠の地元の人たちは、鬼を愛し続けた。京の帝によって派遣された武将という外部権力への不満の投影。地元のために戦ったヒーローとしての鬼。
第6章 つくも神
A 『百鬼夜行(ヒャッキヤギョウ)絵巻』:器物の妖怪。
B 平安時代終わり頃の『古本(コホン)説話集』によると、たくさんの鬼たち(器物の妖怪)が夜中に道を行進する(百鬼夜行)。鬼たちは、真言密教の呪文により、藤原常行に手を出せない。
C 中世、鎌倉初期『宇治拾遺物語』によると、不動明王の呪文を唱えると、百鬼夜行の鬼たちが手を出さない。
D 百鬼夜行の鬼たちは、酒宴を開くため現れる。人をさらい、人の血や肉を飲み食いする。
E 室町時代の「つくも神(付喪神)」はユーモラス。「九十九(ツクモ)」年もたつと器物に霊が宿り、化ける能力を持つ。
F 『付喪神(ツクモガミ)絵巻』などによると、器物は100年経つと霊を獲得して、人をたぶらかす(付喪神)。そうなる前に、人が古道具を捨てる(煤払い)。
F-2 怒った古道具たちが評定。「古文先生」(古書の精霊)に教えられ、「陰と陽が混沌として事物が造られる節分に、身を虚にして造物の動きに身を任せれば妖怪になれる」と知り、妖怪となる。
F-3 妖怪たちは捨てられた恨みを晴らすため、人間や牛馬をさらい食らう宴会を毎夜開く。
G 妖怪のパレードは、真言密教の「尊勝陀羅尼」の呪文から噴き出た火で散り散りになる。
G-2 祈禱により、不動明王の眷属の護法童子が現れ、妖怪たちの住み処、「鬼が城」を攻め、降伏させる。
G-3 「仏教を信じれば命を助ける」と言われ、妖怪たちは受け入れる。
H 真言宗の宣伝文句:情(心)がない草木や器物も情を宿すことがあるが、それらも修行すれば成仏できる。
I つくも神、つまり器物の妖怪たちは、中世のもので、江戸時代になると急速に人気を失う。それに代わり、お岩さんなど幽霊が台頭する。
第7章 鈴鹿山の大嶽丸(オオタケマル)
A 酒呑童子、玉藻前(タマモノマエ)、大嶽丸が中世の3大妖怪。遺骸(狐)または首が、「宇治の宝蔵」(平等院)に収められた。(いわば戦勝記念。)
B 三万余騎の軍勢で、藤原俊宗が大嶽丸を攻める。
B-2 天から来た鈴鹿御前の助力、千手観音・毘沙門天の守護で、俊宗が大嶽丸を倒す。
B-3 しかし大嶽丸が陸奥の霧山で復活。再び討伐軍が組織され、大嶽丸が討たれる。その首が、「宇治の宝蔵」に収められた。
第8章 宇治の橋姫
A 御伽草子『はなわ』によると、源頼光・安倍晴明の時代、夫の浮気への怒りで、ある女が貴船神社に丑の刻参りをして、鬼女となる。
A-2 陰陽師、安倍晴明が、鬼女を退散させる。
B 鬼女は、燃え盛る恨みの念を晴らすため、夜な夜な洛中に出没し、女に化け男を、男に化け女を、殺した。
B-2 勅命で源頼光が、その家来、渡辺綱と坂田金時に、退治を命じる。
B-3 「弔ってくれれば、もう悪いことをしない」と、鬼女は降参する。「宇治の橋姫社」が設けられる。
C 男性支配の社会で、「橋姫」の丑の刻参りが、女性の心をつかむ。憎むべき男を殺す。