カズオ イシグロさんがノーベル賞を受賞したのは昨年の10月。
イギリス国籍とはいえ、純粋な日本人なので興味がわき、
翌日に近くの本屋さんを訪ねたのですが、在庫は一冊もありませんでした。
1か月後、ずらっと並んだ本の中から私が手にしたのは、
デビュー作の「遠い山なみの光」と
英国最高の文学賞、ブッカ‐賞受賞作の「日の名残り」でした。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/28/8b/6661dfde61b3122386e54d76e73d62a4.jpg)
「遠い山なみの光」は長女を自殺で失ったイギリス在住の悦子が
かつて暮らしていた終戦直後の長崎での出来事を思い出し、
自分の人生を振り返る作品です。
作者は1954年に長崎に生まれ、5歳から一家でイギリスに移住。
薄れていくあの頃の記憶を残しておくために、この本を書いたという。
イギリスの田舎町に住んでいる悦子。
回想シーンでは身ごもっていて、あと数カ月の出産を待つ身。
夫の転勤でイギリス在住なのかと思ったらそうではないらしい。
前夫とは死別なのか、離婚なのかもわからない。
前夫との娘・景子は引きこもりの末に自殺したらしいが原因は?
これだけでも一冊の本が書けそう。
長崎時代に知り合った親娘・佐知子と万里子の回想シーン。
佐知子がどんな人物で、どんな状況に置かれているか
分かっていながら、深く関わることに違和感と気持ち悪さを覚える。
たった数週間前に知り合った人に独身時代に蓄えたお金を
すべて差し出すだろうか?
半分ほど読んでしばらく中断した。
しかし全編を読み終える頃には、前半で引っかかっていた部分が、
自分なりに想像・理解できるようになり、
深い靄が晴れていくような快さを得、もう一度最初から読み直したほどでした。
カズオ イシグロさんの長編は7冊だけだそうです。
これだけでは彼の作品の良さは十分わかりません。
次は積んである「日の名残り」、残り5冊もおいおいに買い求めて
読んでいけたら良いな~と思います。