hiroの花便り

我が家に咲く花や日々の暮らしを綴っていきたいと思います

遠い山なみの光

2018-01-29 | 本・雑誌など

カズオ イシグロさんがノーベル賞を受賞したのは昨年の10月。
イギリス国籍とはいえ、純粋な日本人なので興味がわき、
翌日に近くの本屋さんを訪ねたのですが、在庫は一冊もありませんでした。
1か月後、ずらっと並んだ本の中から私が手にしたのは、
デビュー作の「遠い山なみの光」と
英国最高の文学賞、ブッカ‐賞受賞作の「日の名残り」でした。



「遠い山なみの光」は長女を自殺で失ったイギリス在住の悦子が
かつて暮らしていた終戦直後の長崎での出来事を思い出し、
自分の人生を振り返る作品です。

作者は1954年に長崎に生まれ、5歳から一家でイギリスに移住。
薄れていくあの頃の記憶を残しておくために、この本を書いたという。

イギリスの田舎町に住んでいる悦子。
回想シーンでは身ごもっていて、あと数カ月の出産を待つ身。
夫の転勤でイギリス在住なのかと思ったらそうではないらしい。
前夫とは死別なのか、離婚なのかもわからない。
前夫との娘・景子は引きこもりの末に自殺したらしいが原因は?
これだけでも一冊の本が書けそう。

長崎時代に知り合った親娘・佐知子と万里子の回想シーン。
佐知子がどんな人物で、どんな状況に置かれているか
分かっていながら、深く関わることに違和感と気持ち悪さを覚える。
たった数週間前に知り合った人に独身時代に蓄えたお金を
すべて差し出すだろうか?
半分ほど読んでしばらく中断した。

しかし全編を読み終える頃には、前半で引っかかっていた部分が、
自分なりに想像・理解できるようになり、
深い靄が晴れていくような快さを得、もう一度最初から読み直したほどでした。

カズオ イシグロさんの長編は7冊だけだそうです。
これだけでは彼の作品の良さは十分わかりません。
次は積んである「日の名残り」、残り5冊もおいおいに買い求めて
読んでいけたら良いな~と思います。
コメント (10)
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