くらぶアミーゴblog

エッセイを綴るぞっ!

ある朝の風景 現実逃避もここまでくれば...

2005-08-05 13:19:05 | ジョーク

 夢の中に、電車の音が入り込んでくる。ああ、これは夢だったか、もうすぐ目が覚めるんだな、と自覚する。
 やがて、“すっ...”と、目が覚める。薄目を開けて時計を確認すると、起き出す時間まであと三十分。満足の吐息を一つやって、また目を閉じる。
 しかし、電車の音や通りを走る自転車の音が、さっきよりも明確に聞こえてくる。目を閉じてはいても、意識は少しずつ現実の世界の側へ向かっているのだ。
 手探りでテレビのリモコンを取り上げ、スイッチを入れる。イタリア語のニュースが聞こえてくる。何を言っているのかは分からないが、内容など、どうでもいいのだ。ここはローマなのだと思いこんでいるから。

hotel245
え?

 ついにタオルケットをはねのけて起き上がる。狭い浴室に入り、頭からシャワーを浴びる。しばらく目を閉じている。ホテル『レジーナ・カールトン』の朝食を思い起こしているのだ。カリンカリンのベーコンと、バゲットと、スクランブルエッグ。オレンジジュースと、濃いコーヒー。そうだ、間違いないぞ。
 浴室を出てから、まずは冷えた水を一杯飲み干す。ハウス六甲のおいしい水と書いてあるが、努めて気にしない。テレビ画面を眺めると、ベルルスコーニ首相がこぶしをあげて何かを訴えている。相変わらず何を言っているのか分からない。リモコンの“音声”ボタンを押せば、日本人通訳の声が聞こえるのだが、ここはローマだということになっているからそんなことはしない。
 そうして、ささやかながらホテルの朝食を再現してこしらえ、ニュースを眺めながらゆっくりと食べる。いい気分だ。早起きした甲斐があったというものだ。「ここはローマなんだ...」と思い込めば通勤前の憂鬱もどこかへ吹っ飛んでいる。
 NHK・BSはいつの間にかドイツのニュースに変わっていたが、そこも気にしないようにする。ついでに白状すれば、このおバカなことはすべて一人でやっているのだが、それも深くは考えないようにする。やるからにはトコトンまでやりましょう。
 僕は時折、こうして毎朝のルーティンをブチ破って楽しんでおります。