昨日は世田谷の友人宅にお邪魔するため、渋谷からバスに乗っていった。普段利用することのない路線だったので、30分ほどの道中は楽しくてしょうがなかった。「おやここの更地は以前何があったか知らん」、「やあ素敵な中古家具屋があるぞ今度冷やかしてみようか」という具合で車窓の風景は飽きることがない。海辺や山岳の無辺際も魅力だが、都内のごちゃごちゃした光景も同じくらい好きである。
さて。
一通り眺めたあとで、僕の目は前の席に座っているご高齢の婦人のところでとまった。正確には彼女が持って眺めている携帯電話の液晶画面である。そこには「先日のレセプションでは何某がどうした、次回はどこそこで開催予定・・・」とかなりの長文が表示されている。それを彼女はちゃっちゃっとスクロールして読んでいき、そのあと手慣れた様子で返信のメールを打ち始めたのである。後ろ姿から察するに恐らく70歳は越えていると思われる彼女の的確な機械操作に、しばし僕はうっとりとしてしまった。渋谷センター街をずるずる歩く、前意識が原始時代まで退行現象を起こしたとしか思えない“マンバ”族にすっかり見慣れてしまった人でも、このご婦人の優雅でかつ正確な手際と思考には感心しなければならないのである。
そうしてバスを降り、友人宅に到着。夕飯の時間には遠慮なくお呼ばれしてしまったのだが、そこで何かの折りに友人のお父さんが言うのである。
「あのアヤメの画像、メールに添付して携帯に送っておいてくれないか」
その“事もなげ”な言い方に僕はまた感心してしまったのである。友人は僕と同年代だから、お父さんは恐らく60代である。まあ僕のオヤジも携帯についてそのくらいは知っていそうだからそれほど驚くこともないのだが、しかしさっきのご婦人のあとだから感じ入った。太平洋戦争を経験した世代の方々が、精密で最新の機械を日常の道具として使いこなしているのである。素晴らしいではないか。
夜更けてから友人宅を辞去し、田町の駅に帰ってきた。すると今度は客待ちのタクシーの運転手が歩道に座り込んで、なにやら携帯を見せ合って談笑している。さりげなく聞き耳を立てると
「フォーマにして良かった、テレビ電話は面白いよ」
「第三世代だからパケット通信速いんだよね」
「あっ、よっちゃん900is買ったってよ」
「俺はカメラ使わないからプレミニにしようかなあ」
このお二人も見事な白髪頭である。う~む、ヤルではないか。バスで景色を眺めてはしゃいでいる場合ではない。そういえば今は“あの”21世紀なのである。
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さて。
一通り眺めたあとで、僕の目は前の席に座っているご高齢の婦人のところでとまった。正確には彼女が持って眺めている携帯電話の液晶画面である。そこには「先日のレセプションでは何某がどうした、次回はどこそこで開催予定・・・」とかなりの長文が表示されている。それを彼女はちゃっちゃっとスクロールして読んでいき、そのあと手慣れた様子で返信のメールを打ち始めたのである。後ろ姿から察するに恐らく70歳は越えていると思われる彼女の的確な機械操作に、しばし僕はうっとりとしてしまった。渋谷センター街をずるずる歩く、前意識が原始時代まで退行現象を起こしたとしか思えない“マンバ”族にすっかり見慣れてしまった人でも、このご婦人の優雅でかつ正確な手際と思考には感心しなければならないのである。
そうしてバスを降り、友人宅に到着。夕飯の時間には遠慮なくお呼ばれしてしまったのだが、そこで何かの折りに友人のお父さんが言うのである。
「あのアヤメの画像、メールに添付して携帯に送っておいてくれないか」
その“事もなげ”な言い方に僕はまた感心してしまったのである。友人は僕と同年代だから、お父さんは恐らく60代である。まあ僕のオヤジも携帯についてそのくらいは知っていそうだからそれほど驚くこともないのだが、しかしさっきのご婦人のあとだから感じ入った。太平洋戦争を経験した世代の方々が、精密で最新の機械を日常の道具として使いこなしているのである。素晴らしいではないか。
夜更けてから友人宅を辞去し、田町の駅に帰ってきた。すると今度は客待ちのタクシーの運転手が歩道に座り込んで、なにやら携帯を見せ合って談笑している。さりげなく聞き耳を立てると
「フォーマにして良かった、テレビ電話は面白いよ」
「第三世代だからパケット通信速いんだよね」
「あっ、よっちゃん900is買ったってよ」
「俺はカメラ使わないからプレミニにしようかなあ」
このお二人も見事な白髪頭である。う~む、ヤルではないか。バスで景色を眺めてはしゃいでいる場合ではない。そういえば今は“あの”21世紀なのである。
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