YNWC的な日常

街の中でも季節を感じて暮らしたい。生き物や自然のの話を中心に美味しい食べ物、散歩のことなど綴っていきます

モンシロチョウと蜂とキャベツのお話

2022-03-17 06:00:00 | 生物の不思議・生命の神秘
※今日の記事は虫嫌いな方でなくても、うわっと思う写真があるかもしれません。しかも長文ですが、最後まで読んでくださると嬉しいです。この興奮と感動が伝わりますように!




啓蟄末候は「菜虫蝶化」。蛹で越冬していたモンシロチョウが羽化して、飛び始める頃です。ひらひらと舞う姿は一段と春を感じさせてくれます。しかし、自然界の熾烈な生存競争のなか、モンシロチョウも過酷な日々を過ごしています。



羽化直前のモンシロチョウの蛹です。羽の模様が完全に透けて見えています。
この後すぐに羽化が始まりました。
しかし、こんな風に羽化までたどり着く個体は自然界ではごくわずか。

本日は命をかけた生き物同士の攻防戦のお話です。
(2016年6月に書いたものを加筆修正しました)



梅雨入りし、じめじめと蒸し暑い日が続いています。卵だったモンシロチョウが次々に蛹になってきました。



そんなある日、驚きの出来事が起こりました∑(゚Д゚)

アオムシだけが入っていたはずのケースに、謎の卵が!!!



否、繭でした。

恥ずかしながら、実物を見たのが初めてで、最初は卵かと思ってしまいました。
アオムシは幼虫ですから卵を産むはずがありません(^^;;

では、この繭は誰が作ったのか?

実はこのたくさんの繭はアオムシに寄生していたアオムシサムライコマユバチの繭だったのです。

この長い名前の寄生バチは、まだ小さなアオムシの体の中に卵を産み付ます。アオムシの体内で孵化した幼虫は、アオムシの体液を吸いながら成長。やがて十分に成長すると、アオムシの中から這い出してきて蛹を作るのです。



ひー((((;゚Д゚)))))))

体液を吸われ続け、体に小さな穴を無数にあけられたアオムシさん。
この時点では辛うじてご存命でしたが、そんな体で成長が続けられるわけもなく、この2日目の朝には動かなくなりました。



亡骸を掲載するのは、どうかなとためらいつつ、ここは記録として残しておきます。

アオムシサムライコマユバチについて、wikipediaにはこんな風に説明されています。

アオムシサムライコマユバチは、モンシロチョウの幼虫の体内に約80個の卵を産卵する。産卵後約14日で、アオムシサムライコマユバチの幼虫は寄主の体を食い破り、繭を作って蛹化する。蛹化後約7日で成虫が羽化する。

なんとも、身の毛のよだつお話。80匹らしいですよ。しかも生き残りをかけた寄生蜂の戦略はこれだけにとどまらないのです。説明はこう続きます。

メス蜂が産卵する時に、寄主制御物質としてvenom(毒液)、polydnavirus(ポリドナウイルス)、卵巣タンパク質を卵と共に寄主に注入する。モンシロチョウの幼虫は、免疫系として、フェノールオキシダーゼによる液性免疫と血球による細胞性免疫を有しているが、これらは、寄主制御物質により抑制される。このため、寄生蜂の卵及び孵化した幼虫は、異物と認識される事がなく、寄主体内で生育が可能と
なっている。

なんかもうよく分からないんですが、ただ産むだけでなく、毒まで注入しちゃうんですね。

なんとも狡猾で抜け目がなく、サムライっていうイメージからは程遠いと思うのは私だけ?

成虫は一見するとハチというよりも羽アリのようです。その体長は、わずか3mm。



君たち、相当エグい生き方をしてるよね。

もっとも、その強かさで、種を存続させてきたわけですから、小さいながら、恐ろしい知恵の持ち主。

…と、ここまでは気持ち悪さが先行していた今回の観察。しかしながらここで知った新たな事実が、生き物の不思議、生命の神秘を感じさせてくれました。ここからがこの記事の本筋と言えます!!!



そもそもアオムシサムライコマユバチがどうやってモンシロチョウの幼虫を見つけるかという話なんですが…。

なんと、なんと、なーんと∑(゚Д゚)

アオムシに食べられて瀕死のキャベツ君が、「誰か、た〜すけ〜て〜!!」というSOSを出すんだそうです。



その危険信号は「カイロモン」と呼ばれる揮発性の化学物質。つまりは匂い?

そして、その匂いに引き寄せられて、やってくるのがアオムシの天敵であるサムライ君なのです。

「真実は人の数だけ」とはまさにこのこと。キャベツにとってみれば、この恐ろしいサムライ君は敵をやっつけてくれる救世主なのです。

このことは2021年に開催された国立科学博物館の「植物展」でも紹介されていました。



キャベツ同士でもコミュニケーションをしてちるなんて、ほんとびっくり!!ただ食べられているだけでなく、自衛しているのですね!!!

実は自然界では半数近くのアオムシが、寄生蜂の仲間に寄生されて命を落としてしまうんだそうです。よく見ればあちこちに繭ができているじゃあないですか。



確かにキャベツ君は瀕死の状態。



寄生という手段はなんともエグいとは思うのですが、子孫を残すということを考えれば、有効な手段であることは間違いありません。

しかし、因果応報といいましょうか、アオムシサムライコマユバチもまた、さらに小さな寄生蜂に寄生されることがあるんだそうです。

ちなみに羽化するときに失敗してしまうサムライ君もいるようです。



左端は残念ながら羽化途中で命を落としてしまった個体。そして真ん中の繭は左のものとは反対側の蓋を開けて出てきた様子。どうやら繭作るときの規則性はなく、上下左右バラバラのもよう。

空になった繭の下にある黒い塊は蛹化の時の脱皮の殻でしょうか?



双眼顕微鏡で見ると、やはりハチっぽいかな?

キャベツにとってはヒーロー。アオムシにとっては脅威。きっと、アオムシに寄生するハチがいなくなれば、アオムシは増えすぎ、キャベツを全滅してしまうことでしょう。そうなれば、次はアオムシの絶滅。

それにしても、植物であるキャベツが助けを呼ぶなんて…!!!

ちなみに、モンシロチョウの幼虫によく似たコナガの幼虫に寄生するコナガサムライコマユバチってのもいるそうです。…というか、寄生蜂の種類は非常に多く、アブラムシのような小さな虫に寄生するものもいるんだとか、そして、寄生蜂に寄生する種類も!!

そんな1mmにも満たない小さな虫たちも、地球の生態系のバランスを保つためには、けして欠かすことができないってこと。

自然界はそれぞれの種が必死に生き残りをかけて戦うことで成り立ち、均衡を保ってるんだなぁ…と。

そして、そんな小さな虫のことまで解明している研究者がいるっていうこともまたすごい!!

農業の発展のため、つまりは人間も生きるために必死に戦ってきたってことですよね。

奇跡としか呼べないバランスを保ちながら成り立っている地球。その地球に文明を築いてきた人類。

知ればしるほど、この世は驚きに満ちています!!!!!


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ジャムとペクチンと細胞のお話

2022-02-04 23:11:00 | 生物の不思議・生命の神秘



ジャムっていうのは、果実等を砂糖で煮ることで腐敗を遅らせた保存食。

正確には果実や果汁に含まれているペクチンに糖類と酸が作用して、ゼリー状に柔らかく固まる作用を利用した加工食品。

そう、ゼリー状になっていて初めてジャムと名乗ることができるのです

本日の主役であるペクチンというのは、植物に含まれる成分。種にはたくさん含まれていることが多く、ジャムを作るときには種も一緒に煮ることが大切です。

カリンジャムをにた煮た時に、一緒に入れたカリンの種がこちら↓



最後に取り出してびっくり!!
このネバネバがペクチンというやつのようです!!!

そもそもペクチンでいう物質は、植物には欠かすことができない「細胞壁」を作る成分。
久しぶりに細胞壁なんて名前を聞きましたが、植物だけが持つ組織でしたよね。
その主成分はセルロースとヘミセルロースとペクチン。どれも多糖類でセルロースが骨格、それを支えるヘミセルロース、その隙間を埋めるのがペクチン。

なるほど接着剤のような働きをしてくれそうな物質です。



ペクチンは、酸や糖の添加によりゲル化する性質を持っています。
これを利用してジャムを固めるわけです。

ペクチンが少ない果実でジャムを作る場合は、市販のペクチンを追加することもあります。



ジャムのとろっとした食感、いいですよね。

まさか細胞壁を作る物質に、日頃お世話になっていたとは…。



ジャム作り、まだまだ奥が深そうです。



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赤い実を守れ〜防鳥ネット登場〜

2020-11-15 12:23:00 | 生物の不思議・生命の神秘



去年は鳥に食べられてお正月を迎える前に何も無くなってしまったセンリョウの実。

今年はなんとしても死守するべく、防鳥ネットを購入。こんなやつ↓



買いに行くのが面倒で、ついつい通販から(^^;;




「買い物ぐらい体動かせ」とさだまさし さんに怒られそう…(@関白失脚)

で、とにかくかけちゃえと、支柱も立てずにただひっかけてみたのですが…



ネットの網目から一部の実が飛び出しちゃってます…。
これ、ひょっとしたら、ネットを外すときに実が落ちちゃうかしら…。



本末転倒_| ̄|○

…とか思いつつも面倒には勝てず、じゃんじゃんかけまくってしまいましたけど。



まだ青い玄関のマンリョウにも…




去年はこんな感じで軒並みやられちゃいましたからね。






葉の影になっているものも最後には上手に食べていました。

で、食べたそばから出す…。


鳥散布の種子は鳥の消化管を通ることで、発芽がしやすくなると理解していたのですが、写真の種子は一度お腹を通っているのか、ただ吐き出されたものなのか…

一度お腹を通っているなら、ずいぶん早い消化のサイクルだと思うのですが、赤い実も混じっているし、これは普通に吐き出したものなんでしょうかね…。

調べてみると鳥は空を飛ぶ為に絶えず体を軽くする努力をしているようです。そのため消化にかける時間も20〜30分。胃酸を貯めた胃と併用して、筋肉でできた胃を持っていて、その中に溜めた小石でガリガリすりつぶすんだそうです。砂肝ってそれか!?


※写真はイメージです(笑)

となると、やはり糞で正解???

ちなみにセンリョウの花は6月中旬を過ぎてから、マンリョウの花はそれに続いてひっそりと咲きます。

センリョウの花


マンリョウの花


マンリョウの方は少し目立ちますかね…

さてさて、今年の年末にはちゃんと収穫できるのでしょうか???


雑にひっかけただけの防鳥ネットの効果が期待されます!!!





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紅葉始まる

2020-10-24 08:27:00 | 生物の不思議・生命の神秘
 



通勤路にある小さな森。
わずに紅葉が始まりました。
このところの冷え込みと昼夜の寒暖差でいつもよりはっきりした色合い?

去年の11月1日↓



どうだろう?
もう少し様子を見たいと思います。



寒くなってくると、葉の中にあるクロロフィル(緑色の色素)が分解され、もともとあったカロチノイド(黄色い色素)が目立つようになります。これが黄葉です。



また、冬に備え、「離層」というコルク質の物質が葉の根本と枝の間に作られます。これによって養分や水分が行き渡らなくなった葉は、やがて枯れ落ちます。そうすることで、養分や水分が幹に集められるという、寒い冬を生き延びるための知恵。

葉にあった養分は戻ることができなくなり、そこに日光が当たると成分が変化します。糖が変化してできるのがアントシアン(赤色の色素)です。


つまりはこれが紅葉。アントシアンは糖がないと作られないので、すべての植物が「紅葉」するわけではありません。

また、日中は葉にたくさんの日光が当たり、夜は離層の形成が進むように気温が下がること。つまり秋になり、よく晴れて寒暖の差が大きくなるほど美しい紅葉が見られます。



予報では今年の紅葉の見頃は例年よりも少し遅くなるということですが、ここからの冷え込みと天候では美しい紅葉を見られるかもしれません。




とりあえずは、三ツ池公園にでも足を運んでみようかなあ。

最近、すっかり出不精気味な生活。この週末は少し行動的に過ごしたいです。
皆様も良い週末を!!




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これなぁ〜んだ?〜花粉のお話〜

2020-08-27 07:03:00 | 生物の不思議・生命の神秘



これなぁ〜んだ?

ダニじゃないですよ。
菌やウイルスでもありません。

なつかしの「もやしもん」のように顔を描きたくなるかわいさ♪

正解は…




昨日紹介したランタナの花粉!!

ものすごく小さいんです。300倍の顕微鏡で撮影したものをさらにトリミングして拡大してあります。

顕微鏡はこんな感じでスマホで撮影します。




スマホのカメラを接眼レンズに少しずつ近づけていくのです。

その際スマホのカメラは少しズームをかけておくほうが良いようです。片手にスマホ、片手で顕微鏡の調節ネジを握り、ピントの微調整して撮影します。

カメラが少しでも傾くとフレームアウトするのですが、割と綺麗に撮れるものです。

ヨウシュヤマゴボウの花粉も似たようなタイプでした。




今年、職場でたくさん咲いたジニアの花粉はこんな形




ヒマワリの種のような形はナスの花粉。



それぞれ受粉しやすいように考えられた形なんだろうなぁ…

きっと相手先のめしべの柱頭の構造も、これらの花粉に合わせて様々なんだろうなぁと…

楽しくなってたくさん撮影してみました。



左側の花粉は大きくて、形もはっきり見える、「観察向き」なものとなっています。

右側は小さかったり、形が不鮮明で見えにくいかなぁと…

どれも光源付きの児童向けの顕微鏡で100〜300倍で撮影したのち、トリミングしています。



これらの花粉が雌蕊について受粉することで始まる命。

今日も11歳のお客様と花粉の観察をする予定。生命の神秘を少しでも感じてくれたらいいなぁと思います。

新しい生活様式に合わせ、職場でもさまざまな発想の転換が迫られる中ですが、お客様たちにはこれまで通り、たくさんの体験をして欲しいとあれこれ工夫。これを契機により良い形が生まれたり…。「災い転じて福となす」、変化に要するエネルギーは膨大ですが、どうせなら良い方向に変化させていきたいものです。






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