私の日常

毎日の生活で印象に残った出来事を記録しておきたい。

日本の長編小説

2014-06-13 19:00:17 | 日記
June 12, 2014

久しぶりに、日本の長編小説、松家仁之『火山のふもとで』(新潮社)を読んだ。アメリカで、帝国ホテルの設計を手掛けたフランク・ロイド・ライドに師事したという建築家が所長である建築事務所の、夏の間移動する軽井沢の別荘での、「国立現代図書館」設計コンペに向かう仕事を中心に置きながら、所長である「先生」と所員たちの静かに流れていく生活を描いたものだ。長く新潮社で編集に携わってきたという著者の描く人物たちの織り成す物語は、上品で、人々の内面のどろどろしたところに踏み込まず、読者の想像に委ねている。私は知らなかったが、この本が世に出た1912年の秋には、各紙の文芸時評で話題になったという。私は、割合に偏った読書をする傾向があるので、たまにはこういった作品に触れてみるのもいいかもしれない。2作目の「沈むフランシス」はデビュー作ほどの出来ではなかったようだが、一応図書館に予約しておいた。

先日見た映画『ローザ・ルクセンブルグ』で、ローザが最後に当局に捕らえられる直前に、革命運動を共に闘ってきたカール・リープクネヒトに「ピアノを弾いて」と頼み、カールが、ベートーヴェンの「月光」を弾く場面がいつまでも頭から離れない。この直後の二人の悲劇を予感させながらも、静かな知的な空気が画面を包む。ローザもカールも当時の最高の学府で学んだ学徒であったことを、「月光」が暗示している。映像と耳から入る音の合体したものが醸し出す芸術性は、映画ならではのものだろう。というわけで、今日は一日、『火山のふもとで』を読みながら、「月光」「悲愴」「熱情」が入っているCDをくりかえしかけて過ごした。毎日こういったおだやかな日を過ごせればいいのだが、私はせっかちな性分なので、なかなかじっと1日家にこもっていることが出来ない。どんどん足腰が弱くなってきているこの頃、この落着きの無さは困ったものである。

画像は、妹のメールから、「梅花ウツギ」。