私の日常

毎日の生活で印象に残った出来事を記録しておきたい。

五月晴れの中で

2014-05-10 13:59:33 | 日記
May 10, 2014

5月9日(金)
出来上がった点訳を点字印刷機で打ちだすために、事務所に出かける。朝から弁当もちで出かけ、帰宅したのは5時近かった。点訳は何とか人並みにできるようになったが、点訳データをそろえてひもでくくったりする作業は、もう無理だと実感する。指先の腹の部分の力がなくなってきているので、細かい作業が難しい。なるほど、これが歳相応ということかと、元気がなくなった。それはさておき、往復の電車を使って、読みかけていた乙川優三郎『生きる(文春文庫)を読み終える。表題のほかに『安穂河原』『早梅記』を含めた3篇の中編集で、直木賞を受賞している。

私は、朝日新聞に連載された小説『麗しき花実』で乙川ファンになったので、その前の作品はほとんど読んでいない。今回この3つの中編を読んで、作家になろうとし始めた人の初々しさと、また、昨年の大佛次郎賞を受賞した現代小説『脊梁山脈』へ続いて行く道筋が約束されているような感じを持った。主君の死に殉死で応えるという時代背景の中での、人の本当の強さとは、あるいは弱さとは何かを問うている作品だ。避けていた武家物語の関連で、藤沢周平の作品もいくつか読んでみたが、読後に心に残る作品として、乙川の作品の方を取りたい。年齢的な近さにもよると思うが。

5月11日(日)
予定していた岩波ホールでの映画『ワレサ』を、友人とみた。ポ-オランドの独立自主管理労組「連帯」の闘いを、初代委員長ワレサと彼の家族の日々を通して描いた映画だ。当時撮影された記録映画が組み込まれていて、なかなかの迫力だった。監督は、『地下水道』、『灰とダイヤモンド』など、私も若い頃に何度も見てさまざまな場面が目に焼き付いている、第2次世界大戦におけるポーランドの苦難の歴史を描いた、アンジェイ・ワイダだ。パンフレットには、「1970年から1980年代のポーランドをはじめとする東ヨーロッパの国々は、ソ連邦の傘下、検閲や思想統制など社会的に束縛され、きわめて厳しい状況の中にあった。その体制に対して、人々が自由のために闘い、未来のために議論し、力を合わせて抗したことを、ワイダ監督は映画に記して、のちの世代に残そうとした。」とある。おりしも日本は、何かきな臭い方向に政治が進もうとしている。集団的自衛権の行使が容認された時に、まず矢面に立たされる若者たちが、もっと政治に関心を持ち、また熱く語ってもらいたい。今東ヨーロッパの国々は、平和を取り戻してはいるが、戦争の火種は世界中に転がっている。いつ日本の若者たちが駆り出されるやもしれない危ない法律が成立されたりしていく現状を、関係ないと見過ごしていかないでほしい。久しぶりで「闘う」という言葉の意味が具体化される映像に引き込まれた。

岩波ホールのある神保町のタイ料理の店で野菜の沢山はいったタイ麺を食べて、地下鉄三田線で一本で行ける友人の家にお邪魔させていただき、いつものことながら、まったくくつろいでしまった。読書会でご一緒だった友人なので、本の話から何とはなしに読書会に話が及び、やめてしまった「読書会」を復活させようかといった話になった。やめる時は手づまりになったように感じていたが、読書会を続けた40年の歴史は、戻る道筋もつけてくれるのかもしれない。私はやめると言った張本人なので少し恥ずかしいが、今、蜷川幸雄の演出で舞台で上演されているカズオ・イシグロ『私を離さないで』(早川書房)も、読書会でどなたかが選んでくださったから手にした本である。私はこの本にとても感銘を受けた。メンバーの4人で電話で話あって、7月から再出発することに決定した。今は少しわくわくしている。

画像は、「アネモネ」。一昨年植えた球根で、今年もたくさん花が咲いたのに、残り花になってしまった。