20230323
ぽかぽか春庭にっぽにあニッポン語教師日誌>日本語学校早春~春(2)おわかれメッセージ、おわかれ会食
HALせんせが3月末に退職することは、別段秘密でもなかったのですが、授業中に学生に伝えることはせず、卒業式でも言い出しませんでした。
4月の入学式で新任の講師陣が紹介されるとき、「あれ、HAL先生の顔が見えないなあ」と、それとなくわかればそれでいいかなと。
卒業式の場でおわかれの言葉などを口にだしたら、「やめたくて辞めるんじゃないよぉ」と、ぐちっぽい挨拶になるかと案じての「あえて言わず」でした。
私のリストラ退職の影響で、2019年4月からいっしょに日本語教育をになってきた非常勤講師のH先生S先生も退職することになりました。
3月20日におわかれ会食を約束して、最寄り駅に集合。
すると、思いがけないことに、駅前にH先生S先生が担当したクラスの在学生が集まっていました。「センセー、やめちゃうのー」と、さよなら挨拶にきてくれたのです。
思い思いに、メモ用紙、ボールペン、便箋、ぬいぐるみ、沐浴剤などかわいらしいグッズを詰めた袋と、メッセージをプレゼントしてくれました。駅前の人通りのある場所だったので、ひとつひとつの品にお礼を言うことができなかったですが、家に帰ってから学生たちのせいいっぱいの心がつまったプレゼントをあたたかい気持ちでながめました。
メッセージをくれた学生は、2022年4月に入学し、初級クラス(午後)と中級クラス(午前中)の両方に出席するという意欲的な学習姿勢で、たった1年の間に格段の進歩を見せました。書いてくれた「おわかれメッセージ」も、なかなかしっかりと書かれていました。「ショックしました」や「小い」などの送り仮名やスル動詞に間違いなどは散見しますが、自分の気持ちもよく表現できています。
1年間の日本語教育は、日本の中学生が中学3年間に英語を学ぶ時間数とほぼ同じ学習時間です。少なくとも、私が中学を卒業するときは、以下の日本語文章のようなしっかりした英語は書けなかったと思います。漢字圏の学生は、漢字の読み方がわからなくても、意味がわかる、という有利な点がありますが、進歩いちじるしい学生の例として示すことができます。
「先生へ
短い1年でいろいろなことを教えた先生に「ありがとうございましたと言いたいです。日本にきたばかりに、私に知らないことがあくさんあったけど、先生は辛抱強く説明してくれました。感激の極みです。先生と一緒に過ごした時間は、私にとって、懐かしくて大切な宝物です。私は絶対に忘れません。
正直に言います。私は先生が学校から退職するという情報がわかると、ショックしました。先生が学校にいるまま、ずっと勉強し続くと思いましたが、情況を見ると、私のこの小い願いは叶わないと思います。でも、大丈夫です。私は頑張っていきます。先生はいなくても、これから必ずとまらないように、進歩をとって、いい成果を果たすことを目指して、努力します!先生はとても優秀教師で、日本語についての知識をたくさんおしえてくれませいた。本当にありがとうございました。李」
1年の日本語学習でここまで進歩する学生はそうはいません。これは、もともと優秀な学生であり、けんめいな努力を続けた成果です。決して春庭の教え方がよかったからではありませんけれど、学生からの感謝のことばを素直に受け取りましょう。この夏には大学受験を目指しているインタツさん、応援しています。がんばってね。
S先生H先生とは2019年以来、いっしょに初級クラスから中級、上級の日本語教育に携わってきました。よい仲間とごいっしょできて、高い水準の日本語教育のレベルにできたこと、とてもありがたかったです。
とくに、2023年1月2月の授業では、「卒業クラスのしあげ」として、クラス内プレゼンテーション「SDGsについて、私たちができること」というグループ発表や、「ビブリオバトル」の活動「私がおすすめする本、アニメ」などの個人発表の活動をS先生H先生の指導おかげで立派に仕上げることができました。日本語教師めざして京都にある外国語大学の大学院に進学する学生の発表は、「源氏物語のもののあはれについて」というものだったと聞き、他クラスの授業があったので、聞くことができなくて、残念な思いをしました。
「本校は、日本の社会文化、日本の言語文化歴史文化を知り、地域コミュニケーション、国際交流への参加を重視する」という目標のもと、2018年の開校以来、5年間いっしょうけんめい教育に従事してきました。
しかし、コロナ禍で2021年は4月生も10月生も来日できず、入学金と授業料で経営を続ける学院の財政が悪化しました。
昨年10月すぎから、「2023年4月からは、文化だの交流だのという、お金がもうからない目標」ではなく、「少しでも偏差値の高い大学・大学院に本校卒業生を送り込むこと」を目標とすることを申し渡されてきました。
「当校は文化活動を重視します」なんていうことでは学生は入学してくれず、「当校に入学して日本語を学べば、日本の有名大学一流大学に入学できます」ということを標榜しなければ、入学する留学生は増えない、というのです。
そんな中、2022年12月10日には、学院主催の文化講座を開催できたことが、最後の花道になりました。市民の視聴者を迎え、市長の挨拶を得て、「シルクロードの錦」というすばらしい講演会を行い、司会をつとめたことが、よい思い出になりました。
もう、このような「入場無料の講演会」などを開催する余裕はいっさいありません。毎日毎日、偏差値教育。
EJU(日本留学試験)とJLPT(日本語能力試験)に少しでも高い点数をとる学生を育てて、少しでも偏差値の高い大学に卒業生を送り込むことが至上命令です。
HALには、ようでけまへん。
この「偏差値教育」についていけない、という老兵はリストラされることになり、3月31日付で退職の仕儀となりました。
S先生は「今よりもっと自宅に近い日本語学校」、H先生は「小学校の日本語教育(親に連れられて日本にきたけれど、日本語がまだわからないブラジルをはじめとする中南米その他の国のこどもたちに対する日本語教育)」という新しい日本語教育のシーンで活躍されることと思います。
私には、まだこの先は何もありませんが、少し休んでから、この先も働きたいです。
<つづく>
ぐち聞いてもらって救われたのは私の方です。
いろいろおありでしたが、ほんとうに誠実に健闘されたと思います。教え子さんが集まってこられたのもそれがちゃんと伝わったからですね。私まで感動しました。
学生さん字がきれいで上手ですね。
これからもよろしく。年末にはお付き合い20周年ですね。
A子
次は遅刻しないよう、気をつけます。いじめにあってリストラされて夜眠れず、明け方ちょこっとひと眠りのつもりが目覚めたら16時なんていうマヌケはもうやらないと思うけれど、年末には金欠病で瀕死かも知れず。
お互い元気でいられるよう、無理は禁物体が資本。おしごと上手くいきますように。
私も何か探します