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ぽかぽか春庭「地三鮮を食べながら」

2017-08-19 00:00:01 | エッセイ、コラム
20170819
ぽかぽか春庭日常茶飯事典>2017十七音日記8月(2)地三鮮を食べながら

 池袋駅北口にある中国東北料理の店。中国に赴任したときの同僚と何回か「東北料理なつかしいね」と言って食べにきたことがあります。
当時は、店のお客さんはほとんどが中国の人。

 日本の中華料理は日本人の好みに合わせてアレンジしてあるところがほとんどですが、この東北料理店は、東北地方の味のままだったので、日本の人にはちょっと味覚が合わなかったのか、中国の人ばかりの感じでしたが、そろそろ日本人向けの味も出てきたかなと思って食べて見ました。私は本場の味も日本風アレンジの味もどちらも好きです。

 1994年に初めて中国へ行ったときは、日本のラーメンと中国の拉麺がとても違いの大きい食べ物だったことに驚きました。しかし、今は、「すべてを取り込み、自分たちに合わせてアレンジする」というのが文化なのだと思っていますから、ごま油たっぷり入れた韓国の巻き寿司も、チーズやアボカドを加えたカルフォルニアの寿司もみなそれぞれの味と思っています。

 早めに家を出て、サンシャインの中を通過。平日だけれど、夏休み中だから、まあ、人出も半端ない。ポケモン映画に合わせたイベントとやらで、親子連れわいわいと。
 サンシャイン近くのブックオフ、ジュンク堂、西武地下のリブロから変わった三省堂と本屋をめぐりました。
 この程度でもう歩き疲れてしまい、池袋東口から北口まで「ちょい乗りタクシー410円」でいこうかなあと思ったのだけれど、がんばって歩くことにしました。それだけカロリー減らしてこその生ビール、と思って。

 久しぶりに出かける店。何度か行っているから大丈夫と思ったのだけれど、やっぱり「あれ、お店はどこ?」と、わからなくなり、幸い交番があったので、尋ねてみる。若いお巡りさんは、お店の名を知らなかったので、電話で問い合わせをして教えてくれました。交番から200mくらいまっすぐ行った先でした。

 店構えも、店の中も、高級中華料理店のようなこぎれいな作りではないし、中国人店員さんの応対も、ことばはぶっきらぼうだし、まあ、サービスも中国風。しかし、夕食時になったら、テーブル満杯の繁盛ぶりでした。前は中国の人がほとんどの客層でしたが、10日の晩は日本人客のほうが多かったです。でも、味は日本人向けのアレンジではなかった、と私は思ったのだけれど、同席の中国人3人はどう思ったかしら。

 私の好物は、なす、ジャガイモ、ピーマンを炒め煮にした「地三鮮」です。
 地三鮮も、この店の名物らしい「東北醤大骨(豚背骨のタレ煮付け)」も、とてもおいしかったです。

 中国東北地方の料理がなつかしいと思って選んだ店でしたが、3人の出身地は、山西省太源市と河北省張家口市。どちらも歴史上名高い町です。張家口市は、韓国ピョンチャンの次の2022年冬季オリンピック開催地なので、きっと大がかりな工事なども始まっていることでしょう。

 教え子夫妻と教え子の妹&妹の娘3歳、という集まりの会食でした。
 3歳の女の子は、保育園ではミカちゃんという日本名で通園しているそうで、ピンクの靴にピンクのワンピース、ミニーマウスの髪飾りというかわいらしいスタイルです。「今年の4月から日本の保育園に通うようになった」ということなのに、すっかり日本語のおしゃべりが得意になり、妈妈(マーマ)にも日本語で話しかけていました。

 私からの子育てアドバイスとして、「バイリンガルに育てばいいけれど、ときどきどちらの言葉もハーフ、半分しか使いこなせなくなる症状になる子が現れるから、気をつけて」と言いました。
 人のことばは、コミュニケーションの手段として使うほか、思考の道具として大切な「人間らしさ」の要。コミュニケーションの手段としてふたつのことばを使いこなす人は多いけれど、思考の道具として、どちらのことばで考えるのか、とても重要です。

 津田梅子は、満6歳で米国留学し、ほとんど日本語を使うことのない生活によって11年を過ごしました。17歳で帰国した後も、梅子は、話し言葉は日本語復活したけれど、書き言葉そして思考の言語としては、晩年まで英語だったということです。英語での思考がしっかり身についていた。それはそれでよいのです。自分が頭の中で思考するときに使う言葉がはっきりしているので。それに 津田梅子は英語教育を生涯の仕事としたので、英語思考の生活で問題はなかったようです。

 しかし、こどもの言語形成期に養育者が対応をあやまり、子供の思考言語に留意しなかったために、どちらの言語でも「深く考える」ということができない子供も出現するのです。バイリンガル(二重言語)ではなく、ハーフリンガル(どちらも半分しか使えない)になる恐れがあります。

 ことばの並べ方(文法)が同じ言語であるなら、スペイン語とフランス語のバイリンガル、英語とドイツ語のバイリンガルなどほとんど問題は起きませんが、言語の文法形式が異なることばのバイリンガル、英語と日本語、中国語と日本語などの場合、注意が必要です。

 教え子夫妻のお子さんは、去年生まれました。食品会社研究所研究員の奥さんも、大学研究所客員研究員の夫も忙しいので、妻の両親と夫の両親が交代で来日して子供の世話をしているのだそうです。
 中国では働く両親に変わって、祖父母が孫の世話をすることは一般的です。しかし、祖父母が中国在住のまま日本の孫の世話に来るとなると、たいへんです。来日は観光ビザなので、最長半年の滞在となり、両方の祖父母が交代で孫の世話、というのも大がかりなことです。
 赤ちゃんは、今は主な養育者の言語である祖父母と両親の中国語を耳に乳児期を過ごしていますが、保育園に入ったら、昼間は保育園保育士の日本語を聞いて育ち、夜は両親の中国語を聞いて育つことになります。
 「くれぐれもハーフリンガルに気をつけて」と、美人の奥さんに伝えました。

 夫のエイイさんは、2009年に教えた学生です。奥さんは同じ学校の1年後輩。もともと中国の大学院修士課程の先輩後輩。先にエイイさんが国費留学生の資格を得て日本に来ることになったので、奥さんにも国費留学生になるようにすすめて、ふたりとも日本留学を果たしたとのこと。

 「日本での子育てで、わからないことがあったら相談したいです」という奥さんのことばでしたが、「子育て失敗例なら、いくらでもお話しできますよ」と答えました。
 子育て失敗例のふたりは、母がいない夕食に「ピザとって食べた」と、母の手料理よりも満足したみたい。はい、はい、料理下手な母で悪うござんした。母親業失敗例の私。

<つづく>
コメント (2)
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