面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「レ・ミゼラブル」

2012年12月22日 | 映画
妹の娘のためにパンを盗んだ罪で投獄され、19年もの服役の後に仮釈放となったジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)。
社会に戻ったものの先々で前科者と蔑まれて職に就けず、絶望の中で凍える夜を過ごそうとしたところを司教に救われる。
一宿一飯の恩義を受けたにも関わらず、ジャンは司教のもとから銀器を盗んで逃亡。
警察に捕まって司教は、銀器は彼に与えたものだとジャンを庇うだけでなく、忘れ物だとして更に銀の燭台を彼に渡す。
司教の深い慈悲に触れたジャンは改心し、過去を捨てて懸命に生きた。

やがて工場を経営するにまでなり、人格者として人望を集めたジャンは市長に就任していた。
ある日、彼のもとにジャベール(ラッセル・クロウ)という男が現れる。
彼は昔、看守として囚人を監視していたのだが、仮釈放の身から忽然と行方不明になったジャン・バルジャンを追っていたのだった。
新たに市の警部に着任した挨拶としてジャンに会いに来たジャベールは、市長の“正体”を訝しがる。
そんな中ジャンは、かつて自分が経営していた工場を解雇され、生活苦から娼婦に身をやつしたファンテーヌ(アン・ハサウェイ)と出会う。
彼女の人生を狂わせた要因は自分にあると自責の念に苛まれた彼は、ファンテーヌの一人娘であるコゼットを引き取って育てることに。
ところが、ジャベールから「ジャン・バルジャンが逮捕された」という話を聞くと、無実の罪で捕らえられた男を救うために正体を明かす。

再びジャベールから追われることになったジャンは、コゼットを守るために追撃をかわしてパリへと逃亡。
ジャンは、コゼットに父親として溢れんばかりの愛情を注ぎ、美しい娘に育て上げる。
親子として平和に暮らすジャンとコゼット(アマンダ・セイフライト)だったが、パリの下町で革命を目指して学生達が蜂起。
二人は激しい時代の波に飲み込まれていく……


ヴィクトル・ユーゴー原作の大ヒットミュージカルを、「英国王のスピーチ」でアカデミー賞を獲得したトム・フーパー監督が、舞台では再現できない映画ならではのシーンを交えて完全映画化。
ほぼ全てのセリフは歌になっていて、しかもアテレコではなく、実際に演技しながらその場で歌声をレコーディングするという、これまでのミュージカル映画にはない斬新な手法で制作されている。
この手法だからこそ、リアリティ溢れるセットの中で、歌によって会話し感情を表現するという、ともすれば違和感を感じてしまいそうな構成にも関わらず、演技と歌唱とが混然一体となって胸に迫る映像を作りあげることができたのだろう。

そんな厳しい撮影を乗り切ることができたのも、名だたる俳優陣全員がオーディションによって登用されていることにも因るのではないだろうか。
トニー賞俳優であるヒュー・ジャックマンの確かなミュージカル俳優としての能力のみならず、アン・ハサウェイ、ラッセル・クロウ、アマンダ・セイフライト、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエンと、皆確かな力量を持ったキャストが集められていることが、何よりも映画を成功に導いているのは間違いない。


劇中でもさんざっぱら泣かされながら、クライマックスで高らかに歌いあげられる「民衆の歌」に、万感の思いが込み上げて最後の涙を絞り取られ、脱水症状を起こすのではないか危惧した(そんなこたぁない)。
試写で渡されたプレスシートに「レ・ミゼラブル」の舞台公演のチラシが挟まれていたので、思わず前売り券の発売日を確認してしまった。
是が非でも、スクリーンを通してではなく、劇場の“ライブ空間”で「レ・ミゼラブル」を体感したいもの!
前売り発売が待ち遠しい!(ややフランソワ・トリュフォー風)
その前に、もう一度劇場で観よう♪

大感動のミュージカル大作にして、大いに心震える大傑作!


レ・ミゼラブル
2012年/イギリス  監督:トム・フーパー
出演:ヒュー・ジャックマン、ラッセル・クロウ、アン・ハサウェイ、アマンダ・セイフライド、エディ・レッドメイン、アーロン・トゥヴェイト、サマンサ・バークス、ヘレナ・ボナム=カーター、サシャ・バロン・コーエン