面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「プライド」

2009年01月31日 | 映画
アル中の母親との貧しい二人暮しながら、アルバイトで学費を稼ぎながら二流の千住音大に通い、声楽家を志す萌(満島ひかり)。
ある日、ハウスクリーニングのバイトで、名門・三田音大で声楽を学ぶ大富豪のお嬢様・史緒(ステファニー)と知り合う。
史緒の部屋に捨て置かれた1枚5万円のオペラのチケットを見つけ、思わず喚声をあげる萌に、史緒は「余ってしまったのでどうせ捨てるものだから」と、その夜の公演に誘う。
会場の幕間で、史緒が一流の音楽界の人々との交流をもっているのを見た萌は、自分の置かれた境遇とのあまりに大きな格差を思い知らされ、史緒に激しい憎しみさえ抱く。

萌は、みじめな自分の境遇を打ち破り、夢を現実のものとするため、優勝者にはイタリア留学が与えられるコンクール「パルコ・デ・オペラ」に出場する。
一方史緒は、突如帰国した父親(ジョン・カビラ)から、経営していた会社が倒産したことを知らされ、いきなり一文無しの境遇に陥る。
決まっていた留学もキャンセルせざるを得なくなった史緒は、担当教授の勧めで「パルコ・デ・オペラ」に出場することになり、今度は萌と優勝を争うことになるが…

原作は、少女漫画の巨匠・一条ゆかりの人気コミック。
全く違う境遇で育った二人の少女が、憎しみ合いながらも認め合い、音楽界で頭角を現していく姿を描く。
母親との貧しく悲惨な二人暮らしの中、音楽だけが心の支えだった萌は、裕福な家庭に生まれ育ち、幼いころから全てを与えられている史緒が憎い。
しかし、ふとしたきっかけで同じステージに立った二人は、思いがけなく美しいハーモニーを聴かせるのだった。
ラストのクライマックスでの、ミュージカル仕立ての二人の共演シーンは、少々むず痒さを感じるも、ちょっと小粋な演出になっていてニヤリとさせられる。
監督は『デスノート』2部作の金子修介だが、漫画原作の映画を撮らせたら、当代随一ではないだろうか。
「金子修介的」な物語の解釈と演出が、原作とはひと味違ったテイストを与えている。

史緒を演じるのは5オクターブの声域を持つ歌手・ステファニーは、本作が女優デビューとのこと。
しかし演技のぎこちさが、かえって誇り高い“孤高のお嬢様”の雰囲気を見事に醸しだしていて面白い。

また、萌を演じる『デスノート』2部作で夜神月の妹を演じた満島ひかりは、したたかに表裏を使い分ける野心家の顔を見事に演じている。
「あんた、そんな言動はどんどん不幸を呼び込むで」と声をかけたくなるくらいの“負のオーラ”全開の演技は、思わず背筋が寒くなるほどの迫力。
ヒロインを演じる「愛のむきだし」は必見だ!(なので観にいかねば!)


プライド
2008年/日本  監督:金子修介
原作:一条ゆかり
出演:ステファニー、満島ひかり、渡辺大、高島礼子、及川光博、由紀さおり、五大路子、長門裕之、ジョン・カビラ