功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『七歩迷踪/七歩迷蹤』

2008-04-03 21:39:26 | カンフー映画:傑作
七歩迷踪/七歩迷蹤
英題:Seven Steps of Kung Fu/Kung Fu of Seven Steps/Shaolin Raider Of Death
製作:1979年

▼巨匠・張徹(チャン・チェ)導演がショウブラザーズで送り出した最後期のスター、程天賜の主演作である。スターとして一本立ちする以前の程天賜は、張徹作品の端役や台湾映画などで脇役として活躍しており、日本では『クレージーモンキー・笑拳』でジャッキーと対戦している姿が確認できる。そんな彼が張徹にスターとして担ぎ出される以前の主演作がこの映画で、当時流行していたジャッキー風のコメディ功夫片である。

■程天賜はおっちょこちょいだが功夫の腕前は達者な好青年。ヒロインの張正蘭とは良い仲で、師匠の嘉凱(茅瑛の『舞拳』でラスボスを演じた人)からは手厚く功夫の修行を受けたりと、充実した日々を送っていた。
ところがそんなある日、お寺でりんごをつまみ食いしようとした程天賜は、そこで奇妙なメダルを拾った。メダルを見た嘉凱は「これをどこで拾ったんだ!?」と顔色を変える。実はこのメダルは悪党の常山(チャン・サン)一味のメンバーの証であり、常山たちが再び動き出そうとしているのでは…と、嘉凱は危惧した。
嘉凱が予見したとおり、続々と町に異邦人達が現れ始める。幹部のリーダー格である龍飛(ロン・フェイ)、ヒゲ面の金銘(トミー・リー)、傘を武器にする徐永康、紅一点の林伊娃、槍使いの王折生らが、常山の腹心・劉立祖のいる屋敷に集結しはじめたのだ。
程天賜と嘉凱は敵の動向を探ろうと屋敷に潜りこんだりするが、動きを察知した敵方も程天賜たちへ接触を開始。龍飛たちに襲われて嘉凱が重傷を負うなど、攻撃は日増しに激しくなっていく。そこで嘉凱は更なる修行を程天賜に施し、来るべき決戦に備えた。次々と襲い来る常山一派の刺客たち。特訓のかいもあって、程天賜たちは順調に敵を倒していくのだが、ついにラスボスの常山が姿を現すのだった…。

▲ストーリーは特にこれといって深いものではないものの、シリアスになりすぎず、コメディ部分もくどくなりすぎない、さっぱりした仕上がりになっている(ちょっとコメディ色が足りないかな?)。本作の見どころはそのアクションにあり、地味だが技巧派揃いのキャストで締められた本作は、最初から最後まで怒涛の功夫アクションが続いていく。
特に、常山たちとの本格的な対決になる後半からは攻防戦に徹しているため、濃いバトルがひっきりなしに続くという、この手のファンにはたまらない構成になっている。まずはVS林伊娃を皮切りに、VS徐永康・VS金銘・VS龍飛&謎のモンゴルブラザーズ(笑)・そしてVS常山と、手を変え品を変えて繰り広げられる戦いはなかなか面白い。
主演の程天賜は『五遁忍術』でものびやかでアクロバティックなアクションを見せていたが、本作でも高度な技を次々と披露。嘉凱とのタッグバトルやウェポン戦なども難なくこなし、最後は台湾映画随一のキッカーである常山との一大バトルと、改めて程天賜の武打星としての実力を評価したいところである。

更新履歴(2008/3月)

2008-04-02 22:05:10 | Weblog
3月の更新履歴です。今回は久々の特集ということで頑張ってみたのですが、実は当初の予定では『カンフーくん』の公開日である03/29に会わせてオーラスを飾ろうと考えていました…が、ご覧の通りちょびっとズレこんでしまいました(爆
でも私としても、この特集をやらなければ出会わなかったであろう好小子たちと巡り会うことが出来たので、とても充実した特集だったと思います。惜しむらくは、うちの地域の映画館が『カンフーくん』を上映してくれないことなのですが…(涙


03/01 『惡爺』
03/02 『ユニバーサル・ソルジャー/ザ・リターン』
03/04 『フォース』
03/05 『ブラック・ソルジャー』
03/08 『冒険者カミカゼ』
03/11 『ブラッド・ウォリアー』
03/12 『旋風十八騎』
03/16 特集・好小子たちの戦い(01) 『好小子とは?』
03/17 特集・好小子たちの戦い(02) 『秘法・睡拳』
03/18 特集・好小子たちの戦い(03) 『大武士與小[金票]客』
03/20 特集・好小子たちの戦い(04) 『カンフーキッド/好小子』
03/21 特集・好小子たちの戦い(05) 『カンフーキッド4/SF大冒険悪ガキ三人衆』
03/22 特集・好小子たちの戦い(番外編) 『幽霊道士』
03/25 特集・好小子たちの戦い(番外編) 『新・桃太郎』
03/26 特集・好小子たちの戦い(06) 『クロオビキッズ』
03/28 特集・好小子たちの戦い(07) 『ビビアン・スーの恋しくて…』
03/29 特集・好小子たちの戦い(08) 『D&D/完全黙秘』

特集・好小子たちの戦い(終) 『総括』

2008-04-01 22:02:23 | Weblog
これまで、駆け足だが好小子について色々と触れてきた。
呉思遠作品から端を発し、黄一龍や丁華寵らが好小子系列の基礎を固めた70年代、顏正國らカンフーキッドたちが1つのジャンルとして成立させた80年代、マイケル・トリーナーら白人好小子の出現を挟み、90年代は釋小龍と謝苗の2人によって受け継がれた。
だが好小子系列の作品はそれぞれの最盛期が飛び飛びであり、大きく間隔が開いている。このように1つのジャンルとして継続していない分、好小子作品には通常の功夫片や武侠片、そして香港ノワールやコメディ作品のように、受け継がれて発展していく物が無いように思える(スタント技術については功夫片などの物で、好小子系列ならではの"継承"は存在していない)。
そればかりか、現在に於いてもキッズ向けという特異性ゆえに、あまり功夫映画ファンからも目を向けられていないのが現状だ。しかし、今回レビューした一連の作品(番外は除外)は、必ずどれも見どころがあり、また、主演を務めた好小子たちの頑張りようは賞賛すべきものだ。
キッズ向けであるという点に関しては賛否の分かれる所であるが、好小子たちが見せる可愛らしい表情と、打って変わって繰り広げられる功夫アクションの数々は、とても微笑ましいものばかりである。

そして、時代は2000年代を迎えている。
不況で元気のない香港・台湾の映画界にこれといった好小子たちは(私の知る限りでは)まだ現れていないようだが、この日本で先ごろ初の国産好小子片・『カンフーくん』が公開されたのは記憶に新しいことだろう。主演の新たなる好小子・張壮(チャン・チュワン)が、これからどんな活躍をしていくかはまだ誰にもわからない。だが、確実に好小子というジャンルそのものは彼へと「継承」されているのだ。
時代の隔たりがあろうとも、世代の開きがあろうとも、彼らの放つ輝きは決して衰えはしない…"好小子"たちよ、永遠なれ!