功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地撃攘』

2008-04-19 21:52:47 | カンフー映画:佳作
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地撃攘」
原題:黄飛鴻之五龍城殲覇
英題:Once Upon a Time in China V
製作:1994年

●趙文卓(チウ・マンチェク)という男をご存じだろうか。徐克(ツイ・ハーク)の黄飛鴻シリーズを李連杰(リー・リンチェイ)から引き継ぎ、その後は電視劇版に至るまで同シリーズを盛り立てた武星だ。
肉体的なポテンシャルやマスクは同時期に活躍した李連杰や甄子丹にも劣ってはいない趙文卓だが、日本では彼の目だった活躍は90年代の武侠片ブーム以降ほとんど音沙汰が無い。実際は近年でも日本と合作した『国姓爺合戦』など彼の出演作は一応日本でも見ることができるものの、李連杰や甄子丹と比較すると少し知名度は落ちており、趙文卓自身も出演作は先の2人より少ないのだ(電視劇での活動も挟んだ上での話だが)。
思うに、趙文卓が大々的なブレイクを果たせなかったのは、彼なりのスタイルが確立できないままズルズルと引きずってしまっている事が原因ではないだろうか。李連杰は文字通りの"一騎当千"なスタイルを、甄子丹は過剰ともいえる早回しアクションを自分のスタイルとしている。趙文卓はアクションセンスも悪くはないが、あの2人に太刀打ちできそうなポイントが見当たらないのである。

この李連杰・甄子丹・趙文卓と似た構図がアメリカでも存在している。かつて数々のアクション映画を世に送り出した「マーシャルアーツ三羽烏」がそれだ。
何者をも寄せ付けないスティーブン・セガール、股割りと回し蹴りで市場を席巻したジャン・クロード=ヴァン・ダム、そしてそれら2人と比較すると迫力負けしてしまっているドルフ・ラングレン…彼らが「マーシャルアーツ三羽烏」だ。これをそれぞれに当てはめると、李連杰がセガール、甄子丹がヴァンダム、そして趙文卓がラングレンに相当する。
この趙文卓とラングレンは、共に大物スターの対戦相手としてスクリーンデビューを果たしたという共通点があった(趙文卓は李連杰の『方世玉』で、ラングレンはスタローンの『ロッキー4』)。だが、私自身まだ彼らの主演作には見ていない作品が多くあるため、趙文卓とラングレンについてはこれからも期待したいところ。
趙文卓の主演作で気になるのは、代表作と呼ばれる『刀/ブレード』、彼の作品では傑作とされる『生死拳速』、盧惠光との蹴撃戦が要注目の『麻雀飛龍』だが、とりあえず今回は日本で見られる作品の中から本作の紹介です。

本作はスーパー獅子舞大戦と周比利(ビリー・チョウ)でハチャメチャだった前作『天地覇王』から直結した物語で、今度の敵は実在した大海賊・張保仔だ。この張保仔を演じるのは武術指導家の易天雄(『無問題2』にも参加)、そしてラスボスが張保仔の息子役で出演している董[王韋](トン・ワイ)と、2人の武術指導家が相手となる。これに五大弟子を引き連れた趙文卓が挑む物語だ。
作品としては前作以前よりも規模が縮小され、単なる海賊退治の物語でしかなくなっている。第一作のようにメッセージ性が強いというわけでも、第四作のようにハジケまくった作品でもないため、どこかもどかしさを感じる作りとなっているのが惜しい。アクションはそれなりに良いぶん、そこのところは残念である。
ところで前から気になっていた事だが、前作の『天地覇王』はまだいいとして、本作のタイトルである『天地撃攘』って…何?(爆