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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『ニューヨーク市警特別捜査官/スーパー・ニンジャ』

2008-07-07 23:21:07 | カンフー映画:佳作
「ニューヨーク市警特別捜査官/スーパー・ニンジャ」
忍者無敵
SUPER NINJA
THE NINJA SQUAD: KILLERS INVISIBLE
1984(86?)

●クズニンジャ映画レビュー三本目の今回は、フィルマーク作品の登場だ。こっちとしてはフィルマーク系列を三連続で見るのはかなり辛いものがあるが、今回はキャストが羅鋭(アレクサンダー・ルー)ら台湾系の猛者ばかりということなので、ある程度安心して見られるようになっている。
羅鋭とユージン・トーマスはニューヨーク市警の刑事。しかしこんな2人が良い子で優等生なワケが無く(笑)当然のように問題児だ。そんな羅鋭が、ある日突然麻薬所持でブチこまれてしまう。まったく身に覚えのない羅鋭だが、署長は私怨も含めた暴力的な取調べを敢行する。拷問に苦しむ羅鋭だが、その脳裏にかつて龍世家(ジャック・ロン)によって受けたニンジャの修行風景がよぎった。
その後羅鋭は忍術を駆使して脱獄し、自らの身の潔白を証明すべく行動を開始する。遂にはニューヨークの裏社会で暗躍する謎のニンジャ軍団の存在を知ったが、ニンジャ軍団も羅鋭が嗅ぎ回っていることを察知し、ヒロインの父を殺害してしまう。かくして、羅鋭VSニンジャ軍団の壮絶な闘いが始まるのだった。
敵の目的が香港にあると知った羅鋭とユージンは一路香港へ(っていうか、ニューヨークロケはたぶんやってない)。ヒロインもおじさんの唐龍(タン・ロン…羅鋭の兄貴の方)を頼って香港の功夫道場にやって来るが、さっそく襲撃を受けて唐龍は退場。おまけにヒロインは誘拐され、ユージンまでもが裏切りを働いた。羅鋭はユージンを一蹴するが、かつての友ということもあってこれを見逃した。
ニンジャ軍団のボスである張一道が顔を見せる中、羅鋭はニンジャ装束へと袖を通し、ニンジャとして張一道らと闘う決意を固める。白きニンジャとしてニンジャ軍団とバトルを繰り広げる羅鋭。改心したユージンはヒロインと脱出して羅鋭と合流し、ここに羅鋭&ユージンVS張一道の決戦が繰り広げられる!
本作の武術指導は朱客と龍世家。そのせいか作中の功夫アクションは迫力があり、ワイヤーや早回しなどを駆使したファイトの数々はとても面白い。羅鋭の作品といえば、思い浮かぶのがお色気シーンと早回しアクションとニンジャであるが、本作はその3つの要素をたっぷり詰め込んでいる(笑)ので、まず一見の価値はあるだろう。
それにしてもクズニンジャを三連発で紹介するとは…つ、疲れた(爆

『Zombie vs Ninja』

2008-07-05 21:48:11 | カンフー映画:佳作
Zombie vs Ninja
別題:Zombie Rival The Super Ninja Master/Zodiac America The Super Master
製作:1987年

●今回も『忍者プロテクター』に引き続き、クズニンジャ映画のレビューです(爆
前回の『忍者プロテクター』は日本発売された作品なのである程度ストーリーは解ったのですが、この作品は国内未発売ということもあって情報が全く無し!これと同じ事は前にも『Ninja Empire』や『Ninja Champion』でも経験済みなのでどうにかなるかと思いましたが、この作品はどっかで見たような…(後述)。
冒頭、キョンシーと道士が格闘するカットののち、忍者とヒゲ男(明らかにこの両者は別撮り合成)の会話シーンを挟んで物語は始まる。その後、主人公の青年たちが謎の三人組によって襲撃を受け、続いて先程の道士が再び登場する。襲撃に遭った青年はこの道士に助けられ…って、この青年は鄭眞化(エルトン・チョン)じゃないか!
どうやらこの作品、鄭眞化主演の韓国産コメディ功夫片『少和省葬儀師』にニンジャが登場する場面を追加撮影した作品らしい。『少和省葬儀師』に関してはよく知らないが、たぶんオリジナルのストーリーは道士に助けられた鄭眞化が悪と闘う…というようなものだったかと推察される。
ちなみに冒頭のヒゲ男は王龍(マイク・ウォン)で、悪党たちをけしかけたのもこの男。本作で王龍はニンジャの組織と通じていることになっており、正義のニンジャとの闘いが同時進行で進んでいく(もちろん「水と油」状態なのは言わずもがな)。
仇討ち相手のことを知った鄭眞化は道士に功夫の特訓をしてくれるようにと懇願。棺桶を使ったウェイト・トレーニングや穴掘りといった地道な特訓を教わり、第二段階は道士が操るキョンシーとのバトルだ。徐々に強くなっていく鄭眞化だが、ヒロインを我が物にしようとする町の名士?とのトラブルに巻き込まれ、そこから仇である三人組のしっぽを掴むに至った。それと同時に、善と悪のニンジャたちの物語も終局に向けて加速していく…って、こっちはどうでもいいですよね?(爆
というわけでご覧の通り、本作はニンジャは完璧無視して素材だけを楽しんだほうが無難な作品です。
終盤からは鄭眞化が三人組や王龍を相手に連戦を繰り広げていくのだが、これがまたなかなか面白い!特にラストバトルの鄭眞化VS王龍はスピーディーで見応えがあり、王龍としてはベストバウトかもしれない。コメディ的な展開も悪くなかったし、アクションも上々の出来。これは是非『少和省葬儀師』を見てみたくなりましたね。
ちなみに本作のタイトルである「Zombie」とは、作中登場するキョンシーのことらしい。キョンシーは英語で「Vanpire」だろ!と言いたくもなるところだが、作中に登場するキョンシーはあんまりキョンシーらしくないので、これはこれで的を得ているのかも?

『少林寺厨房長』

2008-06-04 18:03:52 | カンフー映画:佳作
少林寺厨房長/少林寺廚房長
英題:Shaolin Drunken Monkey
製作:1981年

●本ブログでは二度目の登場となる鄭真化(エルトン・チョン)主演のこの韓国産功夫片は、彼の代表作…であるらしい。キャラクターとかは完全に『蛇拳』『酔拳』フォロワーなのだが、ストーリーはそこそこ作ってあり、武術指導も韓鷹(イーグル・ハン)が担当していて、とりあえず見応えのあるものにはなっているが…。
冒頭、王龍(マイク・ウォン)が韓鷹によって倒されるも、九死に一生を得るところからこの物語は始まる。主人公の鄭真化は厨房見習いだが、かつて父親を韓鷹によって殺された事があり、功夫を習いたいと思っていた。
夜中に自主練をしていた少林寺の門弟の様子を覗き見し、見つかってこっぴどく叱られたりする鄭真化。ところが、突如として少林寺に韓鷹が仲間を引き連れて現れ、あっという間に少林寺館長を殺してしまった。館長の孫娘だった金明兒は仇討ちのために出立し、鄭真化も同じ様に街へと降りていった。
そんな鄭真化の前に王龍が現れ、色々とちょっかいを出してきた。なんだかんだで王龍に弟子入り?した鄭真化は王龍の特訓を受けることになる。一方、韓鷹一行は少林寺を制すると街でショバ代をせびったり飲食店を乗っ取ったりとやりたい放題。鄭真化は韓鷹らの幹部を何人か倒し、金明兒と合流すると、特訓の総仕上げに取り掛かった。王龍の厳しい修行に耐えた鄭真化は見違えるような腕に成長し、遂には韓鷹とのバトルへ挑むのだった。
この作品は言わずもがな、ジャッキー映画風の作品である。しかし、くどいコメディ描写で話の流れを止めたりはせず、あくまでオリジナリティのある話にしている点は評価に値する。
また、韓国産の功夫片はその産地の都合上、蹴り技を多用するテコンドーをベースにした殺陣になりがちなのだが、本作では香港映画のように手技も足技もじっくりと見せるアクションにしている。個人的にはもうちょっと韓鷹の鋭い蹴り技を見たかったが、及第点以上の迫力はあったと思われる。
そんな力作であるこの映画における悪い点は、王龍にあまりユーモアを感じられなかったところだろうか。本作での王龍は『酔拳』の赤鼻じいちゃんまんまな格好で登場するのだが、ずっと仏頂面で愛想も無いし、功夫の指導をしているシーンにも温かみがまるで感じられないのだ。ここだけはどうにかしてほしかったなぁ…。
ところでこれは余談だが、本作で韓鷹は「シルバーイーグル」という役名を名乗っている。もしかすると、彼の英名であるイーグル・ハンという名前は本作から頂戴したのだろうか?

『ドラゴン・キッズ/七福星』

2008-05-27 22:53:59 | カンフー映画:佳作
「ドラゴン・キッズ/七福星」
「カラテキッド七小福」
原題:七小福/7小福
英題:Lucky Seven/Seven Little Lucky/7 Ninja Kids
製作:1985年

●以前、"好小子"特集で様々な好小子系列の作品を紹介した事があるが、この作品はその時レビューが敵わず、見ることが出来なかった一本だ。言うまでも無いが本作は傑作だった『カンフー・キッド/好小子』の便乗作品であるのだが、本家との差別化を図って登場する好小子を7人にしたりするなど、一応はそれなりに考えられて作られているように見える。
しかし、物語は夏休みを楽しんでいた七人のガキがダイヤ争奪戦に首を突っ込むだけというもので、『カンフー・キッド』にあったような家族の絆といった筋の通った題材は無い。つまり、本作は「好小子たちがずっとはっちゃけて遊んでいる姿のみを撮っただけ」という感じの仕上がりになっているのだ。
出演している七人の好小子たちは、それぞれ女の子・猿っぽい子・デブ・ロッキー・スケボー・李小龍・ニンジャと、それぞれに個性を持たせようと特色を分けている。だが、さすがに七人という人数は多かったのではないだろうか。「特色を分けている」と書いたが、その特色はあまり上手に分けられてはいないのが実情だ。『カンフー・キッド』でさえ、デブの陳崇榮以外はキャラ立ちがあまり出来ていなかったのに、七人に増やすとはそれこそ自殺行為だったと言えなくもない。
ただ、功夫アクションについては本家に勝るとも劣らない勢いのあるアクションになっているのは流石だ。邱英洪の指導によるアクションは危険なスタントなどで本家に対抗。ここだけに関して言えば、『カンフー・キッド』に近い迫力だった(ちょっと早回しを多用気味だけど)。
そして本作で一番目を引くのは、やはり『カンフー・キッド』にも出演した台湾の黒人アクター、ユージン・トーマスだろう。本作でも子供を相手に容赦の無い蹴りを放っており、ニンジャ映画で羅鋭らと闘った威圧感を存分に示していた。
明らかに好小子が何人か人を殺していたり、いきなり殺伐とした展開になったりと細部に気になる点はあるものの、これはこれで面白いと思うのだが…。

『新・キョンシーズ』

2008-05-03 22:16:56 | カンフー映画:佳作
「新・キョンシーズ」
原題:彊屍訓練營
英題:School for Vampire/Stiff Corpse Teach Practice Camp/Vampire Training Camp
製作:1988年

▼前回に引き続き、今日もキョンシー映画のレビューです。
かつて、日本でキョンシー映画が全盛を極めた時期、後先考えずに大量の作品が輸入されて次々とビデオ化された事があったが、本作もその1つである。
この作品は今まで詳しく紹介したサイトが無く、どのような作品かと思っていたが、これがなかなか悪く無い。タイトルにあるとおり典型的な『キョンシーズ』便乗作品(作中、テンテンみたいな女の子も登場する)だが、これが結構ユニークなお話なのだ。

■龍世家(ジャック・ロン)はキョンシーを養成する学校の道士。ここで訓練されたキョンシーは一人前のキョンシーとして故郷に凱旋することが出来ると評判だった。
だが、それを妬んだ三流道士が嫌がらせを行い、キョンシー学校に厄介なキョンシーたちを押し付けてしまった。これは何者かの陰謀と察知した龍世家だが、名門である手前、彼らを放り出す訳にもいかない。そこで問題児なキョンシーたちとの奇妙な訓練生活が始まるのだった。
次第に立派なキョンシーとして成長していく問題児のキョンシーたち。三流道士はなおも嫌がらせを続け、ついには先輩道士である李嗣興(アラン・リー)を担ぎ出してくるまでに至った。三流道士とは打って変わって手強い李嗣興に苦戦する龍世家。果たして、キョンシーたちはこの難題をどうクリアするのであろうか?

▲本作はズバリ「キョンシー学校」という1アイデアで成り立っている。
登場するキョンシーたちはリーダー格の強面キョンシーを筆頭に、水にトラウマを持つキョンシー、この手の作品には付き物のベビーキョンシー、仮死状態になっただけでキョンシーと思われている盗賊の親分(後半で意外な活躍をする)、キョンシー姉妹など、とても個性的な連中ばかりだ。
この他にキョンシーになるための様々な訓練、キョンシーたちの食事など、他の子供だましな亜流作品とは一線を画す内容なのも面白い。また、武術指導は羅鋭(アレクサンダー・ルー)と李嗣興の2人で、作中のアクションもそれなりに頑張っている(功夫映画ファンとしては、劇中2度繰り広げられる龍世家VS李嗣興にも要注目か)。
この作品は製作総指揮を務めた染野行雄のプロダクションにて作られた作品である。
制作には台湾の名匠・李作楠(日本のデータベースサイトで本作の監督は彼とされているが、これは誤りである)、プロデューサーには陳少鵬が名を連ね、監督は『新南拳北腿』などで脚本を書いた張建佶が、カメラマンにはのちに『ゴーストパワーを持つ少女』を撮る莊胤建が控えている…なるほど、この布陣なら本作が個性的な出来になる訳だ。
そして、最後にこの作品の最も特異な点について少々…というのも、本作はそのほとんどのシーンが韓国ロケで撮影されているのだ(出演者も一部韓国系の人が混じっている)。山深い谷や雪が積もったお寺など、あまり香港や台湾映画などで見かけないシチュエーションで作られた事が、本作をより独自性のある作品にした…というのは考えすぎでしょうかね?

『霊幻道士5/ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ!』

2008-05-01 22:55:59 | カンフー映画:佳作
「霊幻道士5/ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ!」
原題:一眉道人
英題:Vampire Vs Vampire
製作:1989年

●お久しぶりです、帰ってきました龍争こ門です。前言の通り、今月からはまた更新を再開致しますので、また今後ともよろしくお願い致します。
で、再開一発目にご紹介するのは『霊幻道士』シリーズ第5弾のこの作品です。『霊幻道士』といえば最近はもうめっきり聞かなくなってしまったキョンシーを扱った作品で、日本でも子供を中心に大きな人気を呼んだ作品でした。で、この『霊幻道士』シリーズなのですが、実際にシリーズとされているのは第1作から第3作まで。以降の作品は無関係の物を勝手に続編としてリリースしたものであることは皆さんもご存じかと思います。
この続編が(前3作と比較して)ロクでもないものだったことで、これらの作品群はあまり評判が良くないとされています。前3作以降の作品は次の通り…『霊幻道士完結篇/最後の霊戦』『霊幻道士5/ベビーキョンシー対空飛ぶドラキュラ!』『霊幻道士6/史上最強のキョンシー登場!!』『霊幻道士7/ラスト・アクション・キョンシー』『霊幻道士8/空飛ぶドラキュラ・リターンズ』等々…亜流作品も含めるとかなりの数がビデオ化されました。
で、この『5』も例によってあまり注目されていない作品ではありますが、制作はちゃんとGHだし、スタッフも前3作に登場した面子揃い。加えて林正英(ラム・チェンイン)道士の数少ない監督作の1つということで、これがそんなに悪くない作品なのです。
霊幻道士の林正英は、村の村長に「河の水源が汚染されていたので新しい水源を探してほしい」と相談を持ちかけられる。新しい水源を探し出した林正英だが、ある夜コウモリによって目印が置き換えられてしまう。そこから蘇ったドラキュラは八面六臂の大暴れ。マリアら教会の修道女や警官隊の樓南光(ビリー・ロー)も巻き込んで、霊幻道士とドラキュラとの異文化決戦が始まるのだが…?
タイトルにはベビーキョンシーとドラキュラの対決を予想させるものですが…まぁそのへんはご愛敬(笑)。今回は敵がドラキュラということもあり、キョンシーが出てくる場面は少ないものの、前3作を手がけたGHの制作だけあって特殊効果などは以前のシリーズに負けないぐらいに頑張っています。
監督・林正英の手腕に関しては可もなく不可もなしといったところで、至極スタンダードな内容に徹しています。
普通、こういう監督兼任で主演作を撮る場合は「オレ様映画」になる危険性が高いのですが、劇中での林正英は修道女たちに露出した下半身を見られてしまう(爆笑)など、どちらかというと損な役回りを引き受けています。
安易に「オレ様映画」にならないところを見ると、林正英の人柄がなんとなく感じられるような気がしないでもありませんね。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地撃攘』

2008-04-19 21:52:47 | カンフー映画:佳作
「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・チャイナ/天地撃攘」
原題:黄飛鴻之五龍城殲覇
英題:Once Upon a Time in China V
製作:1994年

●趙文卓(チウ・マンチェク)という男をご存じだろうか。徐克(ツイ・ハーク)の黄飛鴻シリーズを李連杰(リー・リンチェイ)から引き継ぎ、その後は電視劇版に至るまで同シリーズを盛り立てた武星だ。
肉体的なポテンシャルやマスクは同時期に活躍した李連杰や甄子丹にも劣ってはいない趙文卓だが、日本では彼の目だった活躍は90年代の武侠片ブーム以降ほとんど音沙汰が無い。実際は近年でも日本と合作した『国姓爺合戦』など彼の出演作は一応日本でも見ることができるものの、李連杰や甄子丹と比較すると少し知名度は落ちており、趙文卓自身も出演作は先の2人より少ないのだ(電視劇での活動も挟んだ上での話だが)。
思うに、趙文卓が大々的なブレイクを果たせなかったのは、彼なりのスタイルが確立できないままズルズルと引きずってしまっている事が原因ではないだろうか。李連杰は文字通りの"一騎当千"なスタイルを、甄子丹は過剰ともいえる早回しアクションを自分のスタイルとしている。趙文卓はアクションセンスも悪くはないが、あの2人に太刀打ちできそうなポイントが見当たらないのである。

この李連杰・甄子丹・趙文卓と似た構図がアメリカでも存在している。かつて数々のアクション映画を世に送り出した「マーシャルアーツ三羽烏」がそれだ。
何者をも寄せ付けないスティーブン・セガール、股割りと回し蹴りで市場を席巻したジャン・クロード=ヴァン・ダム、そしてそれら2人と比較すると迫力負けしてしまっているドルフ・ラングレン…彼らが「マーシャルアーツ三羽烏」だ。これをそれぞれに当てはめると、李連杰がセガール、甄子丹がヴァンダム、そして趙文卓がラングレンに相当する。
この趙文卓とラングレンは、共に大物スターの対戦相手としてスクリーンデビューを果たしたという共通点があった(趙文卓は李連杰の『方世玉』で、ラングレンはスタローンの『ロッキー4』)。だが、私自身まだ彼らの主演作には見ていない作品が多くあるため、趙文卓とラングレンについてはこれからも期待したいところ。
趙文卓の主演作で気になるのは、代表作と呼ばれる『刀/ブレード』、彼の作品では傑作とされる『生死拳速』、盧惠光との蹴撃戦が要注目の『麻雀飛龍』だが、とりあえず今回は日本で見られる作品の中から本作の紹介です。

本作はスーパー獅子舞大戦と周比利(ビリー・チョウ)でハチャメチャだった前作『天地覇王』から直結した物語で、今度の敵は実在した大海賊・張保仔だ。この張保仔を演じるのは武術指導家の易天雄(『無問題2』にも参加)、そしてラスボスが張保仔の息子役で出演している董[王韋](トン・ワイ)と、2人の武術指導家が相手となる。これに五大弟子を引き連れた趙文卓が挑む物語だ。
作品としては前作以前よりも規模が縮小され、単なる海賊退治の物語でしかなくなっている。第一作のようにメッセージ性が強いというわけでも、第四作のようにハジケまくった作品でもないため、どこかもどかしさを感じる作りとなっているのが惜しい。アクションはそれなりに良いぶん、そこのところは残念である。
ところで前から気になっていた事だが、前作の『天地覇王』はまだいいとして、本作のタイトルである『天地撃攘』って…何?(爆

特集・好小子たちの戦い(05) 『カンフーキッド4/SF大冒険悪ガキ三人衆』

2008-03-21 22:43:23 | カンフー映画:佳作
「カンフーキッド4/SF大冒険悪ガキ三人衆」
越時空的小子/跨越時空的小子/飛越時空
Young Dragons Kung Fu Kids IV/Kung Fu Kids III
1987

▼『カンフーキッド』以降、同じ顏正國・左孝虎・陳崇榮らメンバーによって次々と続編が作られ、日本においても第一作を皮切りに、『カンフーキッド2/悪ガキ6人衆(老少江湖)』『カンフーキッド3/飛びだせ!悪ガキ三兄弟(苦兒流浪記)』『カンフーキッド続集(好小子第2集)』などが公開された。本作は年代的に見ると日本に登場した最後の『カンフーキッド』といえる。なお、本作以後も続編は作られ、第6弾までシリーズは続いていく。
とはいえ、シリーズといっても『カンフーキッド』の正当な続編である『カンフーキッド続集』以外は全て無関係の内容で、共通しているのは主演の3人と英題のみ。現在では第一作の『カンフーキッド』共々、まったく人目に触れられる事はなくなってしまっている。私は好小子特集を組むに当たって近所のレンタルショップに走ったが、残念ながら第一作と中古落ちの本作しか発見できませんでした…が、これが面白いから侮れません(笑

■時は清朝。左孝虎演じる霍元甲(!)の道場が、各地の道場を荒らしまわっている日本人の挑戦を受けた。左孝虎の父が日本人の挑戦に受けて立つも、直前に手傷を負っていて勝てる見込みは薄い。そこで左孝虎は父の変わりに闘うべく、修行のために仙人のもとへと向かったが、仙人の手違いで現代の香港に飛ばされてしまう。
てなわけで、舞台は現代へと移る。キャンプに来ていた顏正國と陳崇榮の兄弟は、そこで左孝虎と出会う。最初は弁髪姿の左孝虎を「おかしな奴だ!」と相手にしなかったが、左孝虎が過去の人間だと知ってびっくり仰天。しかも張沖(ポール・チャン)率いる組織の陰謀にぶつかり、左孝虎を現代に送り返そうとする発明家の呉大維(デビッド・ウー)ともども、一大パニックに巻き込まれていくのだった。

▲異邦人が現代に現れ、そこから巻き起こる騒動を描いた本作は、ありがちな展開ながらほんわか楽しいものでした。ストーリーにアラが多く、捻ろうとしたオチも弱いですが、個人的にはかなりお気に入りの部類です。
特に本作で1番大きな特徴は、第一作から二年が経ち、成長した3人のアクションにある。以前よりちょっぴり大人びた風体になった3人だが、背が伸びたおかげか功夫アクションも成長。武術指導は本シリーズおなじみの林萬掌が担当し、相変わらずのデンジャラスなスタントは健在だ。
更に、現代劇と功夫片の両方が楽しめる欲張りな構成となっており、ラストには日本人のボスで龍天翔(ショウブラで後期の張徹作品に出演した功夫スター)が出ているところも、功夫映画ファンにとっては嬉しいところである。
また、第一作でおデブの陳崇榮以外あまりキャラ立ちができていなかった点が、左孝虎を異邦人にするということで解消しているのも評価できるポイント。キッズ向けとしても楽しく、功夫映画ファンの鑑賞にも堪えうる、まさしく「もっと評価されるべき」作品なだけに、このまま埋もれてしまうのは非常に残念なのだが…。

特集・好小子たちの戦い(04) 『カンフーキッド/好小子』

2008-03-20 17:14:01 | カンフー映画:佳作
「カンフーキッド/好小子」
好小子
Kung Fu Kids/Young Dragons Kung Fu Kids
1985

●功夫映画に一石を投じた黄一龍の存在。しかし彼に継ぐ後進が成されなかったことで、次なる好小子たちの登場はしばしのブランクを挟む事になった。本作は日本でもそこそこヒットした作品で、好小子の系列を決定的に形作るきっかけとなった記念すべき作品でもある(ちなみに、本作にはそれとは別にもう1つの大きなポイントが存在するが、それは後述)。
顏正國・左孝虎・陳崇榮の三人兄弟は、怖いおじいちゃんの陳慧樓(チェン・ウェイロー)のもと、山奥で暮らしていた。ある時、三人は陳慧樓と別れたおばあちゃんを探して町に行く事を決意する。初めての大都会に山育ちの三人は行く先々で大騒動を引き起こすが、なんとかおばあちゃんと再会を果たした。だが、三人を利用しようとしていたマフィアに妹をさらわれ、三人は単身組織へと立ち向かっていくのだった…と、物語はこんな感じだ。
本作で一番画期的だったのは、あくまで引き立て役に徹していた黄一龍(『三毛流浪記』は主演だが、クライマックスは王虎に持って行かれる)の立ち位置から一歩進んで、完全に好小子が主役となっている点にある。
幾多の功夫猛者と渡り合った黄一龍を引き合いに出すまでも無く、子供が功夫アクションをするならまず第一に求められるのが肉体的なポテンシャルである。本作に於ける顏正國ら三人の活躍ぶりはかなりのもので、十分良い動きをしている(やられ役のスタントも含めて)。
アクロバティックな動作と柔らかい体を駆使していた黄一龍のスタイルに対し、三人の場合はヌンチャクアクションや李小龍のパロディなど、現代的な味付けを加えたものを構築している。残念ながら殺陣はややバリエーション不足にも思えるが、これだけやってくれれば十分だろう。なお、武術指導を担当した林萬掌は本作の監督である朱延平(チュー・イェンピン)の作品に多数参加。倉田保昭の『悪漢列伝』では危険なスタントを交えたアクションで彩っている。
そして先述したが、本作にはある特異な特長がある。
もともと、彼ら三人の登場以前に日本で公開された功夫映画は、そのほとんどがジャッキーの影響下にあった。サモハンやユンピョウもジャッキー人気のあおりで日本に紹介され、似たようなことは李小龍の登場でフィーチャーされた王羽や倉田保昭、李連杰の登場で便乗して主演作が日本公開された劉家輝にも言える。これは以前『香港麻薬捜査官』の項でも語った話だが、本作はそれらとは違う、完全に新しい形式の作品として紹介された功夫映画なのだ。
ジャッキーが日本を席巻していた当時、ジャッキーの影響下ではない状態で日本でブレイクした功夫映画は、キョンシーと『少林寺』の李連杰と本作しかいない。そう考えるとこの作品、かなり希有なものだと思えてくる。
それでいて彼らがその後ヒットに恵まれなかったのは、本作の公開以降日本でリリースされた続編がビデオスルーだった事など、色々要因が考えられる。今では時代のアダ花と化している本作。しかし好小子系列の作品では間違いなく傑作であり、以後の好小子に路を作った作品として、再評価されるべき時ではないだろうか。

特集・好小子たちの戦い(03) 『大武士與小[金票]客』

2008-03-18 19:09:41 | カンフー映画:佳作
大武士與小[金票]客/大武士與小票客
Hero of the Wild/Heroes of Shaolin
1977

▼前回触れた黄一龍は、どちらかというと独立プロを渡り歩いた好小子だったが、逆に大手から羽ばたいた好小子も存在した。それが本作の主役である丁華寵だ。彼はショウブラで『紅孩兒』『八道樓子』『馬哥波羅』などの張徹作品に出演している。
以後、丁華寵は独立プロで活躍していくが、1960年生まの彼は1964年生まれの黄一龍よりも年上である。本作の撮影当時は17歳ぐらいだったと見られ、好小子とは言い辛い…というか、はっきり言って本作は好小子系列の作品ではないのだが、黄一龍と同年代のスターで、彼意外にもこのような人がいたということを知って頂きたく、敢えてこの特集に取り上げる次第であります。

■凧揚げを楽しむ丁華寵と師匠の元に、かつて師匠に敗北した陳星(チェン・シン)が現れた。勝負の末に師匠は死に、丁華寵は仇討ちを試みるが軽くいなされてしまう。
「仇を取りたいのなら俺と付いて来い」と呟く陳星に、丁華寵は追従した。陳星は旅の武芸者で、丁華寵の拾った犬を殺したりと非情な顔を見せる一方で、傷付いた丁華寵を看病したり、売られそうになった娘さんを助けたりと、その行動は要領を得ないが…。
陳星と丁華寵は相反しながらも同じ道を進み、丁華寵は陳星に教えを受けるが、仇討ちは忘れていなかった。だが、幾多の敵が襲い来る中で、いつしか仇討ち相手に情を感じ始めていた丁華寵…それは、陳星も同じだった。一方、陳星と対立している黄正利(ウォン・チェン・リー)の一派は、羅烈・ユンピョウ&元奎・龍君兒と、次々に刺客を送ってくる。どうやら陳星とは、大きな因縁のある相手らしい(英語吹替えだと細部に関しては不明)。
そして、ついに黄正利の登場となったが、さすがの陳星でも黄正利には苦戦し、敗北してしまう。そこで丁華寵が立ち上がり、陳星に代わって強豪たちと闘おうとするのだが、突然として龍君兒らを鬼面の刺客(冒頭でも陳星と接触)が殺害!続いていよいよ最後の決戦に挑もうという陳星と黄正利の間にも鬼面の刺客が割り込み、黄正利をも屠った。果たして、この鬼面の刺客の正体は!?
…って、残っている疑わしい人物は1人しかいないんですがねぇ(苦笑

▲丁華寵のアクションセンスは、本作に登場する数多の猛者を相手にしても引けを取らないものだった。流石に本作を好小子系列としてカウントするかどうかは微妙なところだが、若干17歳(推定)にしては結構な頑張りようではなかっただろうか。ルックスもそれなりに決まっているし、その後ブレイクしなかったことが不思議である。
また、ストーリーもアクションも凝った内容の本作は、単なる復讐劇に終わらないようなものになっている。丁華寵と陳星の一筋縄ではいかない顛末や、鬼面の刺客の正体も含めて、なかなか独創的な作品となっているのも評価できる。ここらへんは脚本に参加した倪匡(イ・クオン)の労力だろうか。
そして、本作には『詠春興截拳』同様に、なんとなく呉思遠(ン・シーユエン)の匂いが感じられるのだ。陳星・黄正利・武術指導も兼ねているユンピョウと元奎と袁信義の存在…その他にも、一部過去の呉思遠作品でも見たロケ地があったり、単なる功夫片に終わっていない物語の構成などなど、呉思遠の関与があったと思しきポイントがいくつか確認できるが…?