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功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『侠大兒乞』

2008-02-27 22:05:22 | カンフー映画:佳作
侠大兒乞
Boxer's Adventure/Militant Eagle/Great Soldier Wins a General
1978

▼この作品、もしかして本当のタイトルは『乞兒大侠』なのではなかろうか?
HKMDBやいくつかのサイトでは本作のタイトルは『侠大兒乞』ということになっているが、逆読みしてみると『乞兒大侠』…つまり「こじきの大侠」という意味になるのだ(『侠大兒乞』のままだと変な言葉になってしまう)。
更に、本作のタイトルにはまだ疑問がある。それは英題の『Boxer's Adventure』についてだ。『Boxer's Adventure』でネット検索をすると、同じ英題を持つ譚道良の『旅』という作品が出てくるのだ。オマケにくだんのHKMDBでは、本作の項に『旅』の画像が使われている。これは別のサイト(Hong Kong Cinemagic)でも同じ事があったのだが、果たして本当に本作の英題は『Boxer's Adventure』なのか…一抹の謎が残る。

■時は乱世。悪政が跋扈する世の中に人々は苦しんでいた。悪徳役人とその配下によって身内を殺されたり傷つけられた衛子雲(ビリー・チャン)・燕南希(ナンシー・イェン)・薛漢(シェ・ハン)は、悪徳役人の悪事を偉い将軍に直訴した。だが、悪徳役人は突然現れた白衣の刺客・凌雲によって殺害されてしまう。
そう、真の敵は別にいたのだ。
実は悪徳役人は、将軍と敵対している白鷹(パイ・イン)と通じており、悪徳役人と共に悪行を重ねていた萬重山、そして凌雲もその仲間だった(この他に配下は馬金谷・歐陽鐘・蔡弘・蕭錦・茅敬順など)。その凌雲は姉が白鷹の妻(あまり仲は良くない)で、燕南希の父母を殺したのも彼。そして驚いた事に、凌雲は衛子雲の兄弟弟子?でもあったのだ。
その後、敵の本拠地を知った燕南希と薛漢は攻勢を仕掛けるも、逆襲に遭って薛漢が捕らえられた。逃走する燕南希を追って凌雲が出動するが、前々から姉に対する白鷹の仕打ちに反感を抱いていた凌雲は、白鷹を裏切り気味だ。それに白鷹も気付いており、疑いの目を向けていた。
傷付き倒れた燕南希を、凌雲は自責の念から庇う。しかし、あと一歩で隠れていた燕南希が白鷹たちに見つかりそうになった時、凌雲の姉が自らの命を投げ打って目をそらさせた。このことをきっかけに凌雲は白鷹への反逆の意思が芽生えていく…。
一方、衛子雲は敵地に潜入して白鷹の娘を捕まえていたが、彼女も白鷹に対する不快感は同じだった。そのため自分から衛子雲に捕まり、騒ぎの隙に凌雲が薛漢を助け出した。衛子雲と凌雲は戦うフリをして敵陣から脱出して燕南希と合流。ところが、将軍が苗天の裏切りによって捕まってしまった。
処刑されようとしている将軍を助けるべく、凌雲が、衛子雲たちが立ち上がる!

▲本作は武侠片だが、剣撃・功夫アクションが豊富にあり、二転三転する物語はなかなか面白い。本作の監督は金劍と李家志の2人で、両者とも監督作は少ないようだが、出演者の顔ぶれやエキストラの数から、結構な規模の作品として作られているところが垣間見える。
アクションに関してはそんなに大したものではないのだが、クライマックスで個々のキャラクターにそれぞれ一対一のバトルを用意するなど、なかなか気が効いた構成にしてあって興味深い(武術指導は何維雄…あまり裏方仕事は多くないようだが、多くの出演作を持つ)。無名の作品にしては結構頑張っている一本。これまた掘り出し物、といった感じの作品でした。

『蕩寇灘』

2008-02-23 20:23:33 | カンフー映画:佳作
蕩寇灘/死亡灘
The Bloody Fists/Death Beach/Deadly Buddhist Raiders
1972

●傑作の『餓虎狂龍』でも素晴らしいワークを見せていた、呉思遠&陳星(チン・セイ)による功夫片である。『ドラゴン怒りの鉄拳』によって抗日功夫片が多く作られ、『餓虎狂龍』でも同様に抗日的な要素を含んだ作品を作った呉思遠だが、他の作品のように「右へ倣え」というような作品は作ってはいない。やはり呉思遠、このへんは流石だ。
悪党の陳星は警察の手から逃れながら、とある寂れた町へとやって来た。ここではちょうど日本人たちが進出してきているところで、于洋(ユー・ヤン)ら町の若者は突然現れた異邦人に動揺を隠せない。手始めに町の功夫道場が日本人たちの嫌がらせを受けたが、ワッキーっぽい顔の山怪や赤い胴着の方野には敵わなかった。
さて、ここで首領を演じているのは、あの陳觀泰(チェン・カンタイ)だ。当時はショウブラにいたはずだが、同じくショウブラにいた呉思遠の繋がりで無理を押して出演したのだろう。その証拠に、一部の場面で別人がスタンドインを演じている(劇中、陳觀泰は顔半分をマスクで隠しているが、目鼻立ちが違うので別人だとすぐ解る)。
陳星は町で聾唖の韓國才とその祖父(『燃えよドラゴン』の李小龍の父親役だった人)に出会い、暖かく迎え入れられるが、町が一大事になっていることを知り、人知れず立ち去ろうとする。しかし、こっそり于洋の加勢をしていたことを陳觀泰に見抜かれ、陳星は陳觀泰たちの挑戦を受けた。陳星は方野たちを圧倒して立ち去るが、道中で病に倒れ、再び韓國才に助けられた。人の温かさに触れ、その目に涙を浮かべる陳星だが…。
一方、町では于洋の仲間が殺され、人々が虐げられていた。于洋が捕まりその妹も乱暴され、韓國才とその祖父は日本人たちの毒牙によって命を落としてしまう。今まで逃亡者の身ということもあり、韓國才たちにも迷惑をかけまいとしていた陳星も、ここに及んで怒りを爆発!陳觀泰らとの死闘に望む!
話としては非常にシンプルで、要は「流れ者が日本人を倒す」だけの話であり、陳星と于洋ら町の人間らとの関わりもほとんど無い。他と違う事をしようとして工夫を凝らしたのは察することができるものの、作品自体はあまり評価に値するものではないと言える。だが、こと功夫アクションについてはやたらめったら激しく、野性味溢れる陳星の立ち回りは迫力満点。共にパワーファイター系である陳星VS陳觀泰というバトルも、製作年度を抜きにしてもかなりのものだ。
武術指導は当時新鋭だった袁和平が担当しており、彼にとっても初期の武術指導としてはベストなのではなかろうか?これの発展系が『餓虎狂龍』と考えると、なんとも感慨深いものを感じずにはいられません。無法者として生き、英雄として最後を飾る陳星の姿に心打たれる快作。必見です。

『“酔猿拳”VS“蛇拳”(猴形扣手)』

2008-01-21 19:43:41 | カンフー映画:佳作
「“酔猿拳”VS“蛇拳”」
原題:猴形扣手
英題:Snake in the Monkey's Shadow/Snakefist vs The Dragon
製作:1979年

▼以前レビューした『真説・モンキーカンフー』と同じく、酔拳プラス猴拳を扱った映画である。しかしあまり魅力の無かった『真説~』に対し、本作は張午郎(チャン・ウーロン)・唐偉成(タン・ウェイシン)・陳耀林・侯朝聲・尹發と実力派揃い。おまけに製作が協利電影ということで前々から見たかった作品であり、もうこれである程度の質は保証されたも同然である。
それにしても協利はいいねぇ…(笑

■話は、初っ端から猴拳の使い手・[ン先]林VS蛇拳の使い手・陳耀林との激しい対決で幕を開け、この戦いで[ン先]林が勝利する。所変わって、こちらは侯朝聲の酔拳道場。大勢で酔拳の練習をしているというシチュエーションがどことなくユニークだが、その稽古の様子を張午郎が覗き見していた。
張午郎は鮮魚店で働いている功夫修行志望の青年だ。今日も配達の途中で道場に立ち寄ったのだが、それで配達に遅れてしまった。受け取り手の成金はプンプンで、尹發(髪の毛がフサフサ!)といっしょに張午郎をボコボコにした挙句、笑いものにするのだった。
「ちくしょう!俺にも功夫の腕があれば!」…彼は強くなるために侯朝聲の道場へと押しかけた。しかし、酔拳道場らしく酒を飲みまくっての入門試験を受けたはいいが、途中で酔いつぶれてしまう。山林に置いてかれた張午郎だが、そこで彼は[ン先]林と出会うのだった。
後日、張午郎は再び侯朝聲のもとへとやって来た。『蛇拳』よろしく雑用として住み込むこととなり、修行を受けさせてもらえないので深夜に自主トレを重ねていく。そしていつの間にか、張午郎は兄弟子たち以上に強くなっていった…って、後から来た雑用に追い抜かされるなんて兄弟子たちは何やってるんだよ!
兎にも角にも、実力の認められた張午郎は正式に酔拳を学ぶ事に。さらに[ン先]林からも猴拳を教えてもらい、両手に花の張午郎はあの成金と尹發にリベンジを決行する。まんまと仕返しに成功するが、私闘に拳法を使ったことが発覚して、侯朝聲にこっぴどく叱られてしまった。
腹の虫が治まらないのは成金たちの方だった。成金の親父も侯朝聲には歯が立たず、なんとしても見返したくて二人の用心棒を雇った。それが冒頭の陳耀林、そして唐偉成ら蛇拳コンビだった。張午郎の不在時に酔拳道場へと現れた蛇拳コンビは侯朝聲らを倒して道場を壊滅させ、張午郎も叩きのめてしまう。
満身創痍の張午郎は[ン先]林のもとに駆け込むが、蛇拳コンビの真の狙いはもちろん[ン先]林の復讐にあった。ほどなくして[ン先]林のもとに現れる蛇拳コンビ。陳耀林1人だけならまだ何とかできたものの、今回は唐偉成と一緒ということもあって、[ン先]林も倒される。1人残った張午郎は、[ン先]林の"師匠"だった猿の動きを参考に修行し(ここらへんも『蛇拳』ですね)、酔猴拳を編み出して蛇拳コンビに対抗する!

▲功夫を習いたい主人公、蛇拳が悪役、酔猴拳と、『真説~』と似通った設定の本作だが、やはり出来はこちらが数段上だった。協利作品といえばレア対決が作品の目玉だ。本作でも張午郎VS尹發という成家班同士の珍しい対決がある…が、特別見せ場というわけではない。むしろ本作は、アクションの質で勝負した作品だといえるだろう。
ストーリーについては凡庸なコメディ功夫片のひとつと思われがちが、全ての混乱の原因が張午郎にあるのが本作を手放しで評価できないポイントでもある。事の発端である張午郎と成金の確執も、元はといえば配達に遅れたのに詫びる様子も無かった張午郎の自業自得であるし、道場への入門もほとんど逆恨みから来る行動だ。ある意味、張午郎のせいで侯朝聲の道場が潰されたといっても過言ではないかもしれない(爆
…と、物語はちょっとアレな評価を下してしまったが、前述の通りアクションで通そうとしている作品だけあって、頭の先から尻尾の先まで詰まった功夫アクションは良質なものばかり。しかも酔拳・虎拳・蛇拳・猴拳・そして酔猴拳と、バリエーション豊かな拳法の数々を見ているだけでも本作は楽しいものがある。
う~ん、やっぱり協利はいいねぇ…(笑

『好小子的下一招』

2008-01-19 08:56:44 | カンフー映画:佳作
好小子的下一招
Fighting Ace/Kung Fu Ace/Master of Death/Kid's Ace in the Hole
1979

▼足技ファイター・劉忠良(ジョン・リュウ)の主演作だ。これは台湾映画なのだが、いつも台湾映画にあるような泥臭さはあまり感じられず、ストレートな正統派の功夫片として仕上がっている。
本作の特色は師匠が一人ではないというところだ。劇中劉忠良は様々な師匠と出会うのだが、これがまた多種多様な面子揃い。とりあえずまずはレビューをご覧あれ。

■悪党の程清に父母を殺された劉忠良は、父母の使用人と共に仇を探してさすらっていた。そんなある時、彼らは成金の家に招かれた功夫の達人・権永文と出会う。あの凄い足技を身に付けたいと思った劉忠良たちは、その成金の家に小間使いとして潜り込んだ。
朝は小間使いとして仕え、夜はこっそりと覗き見した権永文の技の特訓に励む劉忠良。もともと筋のよかった劉忠良は独学でもかなりの腕を上げ、仲良くなった小間使いの王太郎のつてで、なんと権永文に直接指導してもらえる事になった。最初は渋い顔をする権永文だが、指導していた成金のバカ息子がダメダメだったこともあり、劉忠良に指導を施すのだった。
しかしこの秘密授業が成金にバレてしまい、劉忠良はクビになってしまう。ここで同じくクビになった王太郎が劉忠良に同行し、次に大道芸をやっている功夫の達人と知り合った。その後、チンピラに襲われていた午馬(ウー・マ)とも出会うが、こちらも実は功夫の達人。助けてくれたお礼に技を教えてくれる事になったが、これで同時に2人の師匠を持つ事になってしまうのだった(しかし、午馬が師匠でその上強いってのも珍しいなぁ…)。
大道芸の師匠からは手技を、午馬師匠からは拳法を習う劉忠良と王太郎。権永文の娘である龍君兒(ドリス・ロン)が合流するが、「私の父に弟子入りしたのに、この上さらにかけもちなんて!」と、もっともな事を言われ、龍君兒の横槍でかけもち修行がバレてしまった。しかも運の悪い事に、この2人の師匠は犬猿の仲!結局2人の修行はうやむやになってしまった。
その後、暴漢に襲われていた龍君兒を助け、改めて謝罪する劉忠良たち。だがこの暴漢たちのボスが何を隠そう、程清だったのである。お互いの素性を知らぬまま、程清は強い劉忠良に「もっと腕を磨いてみんか?」と弟子入りを持ち掛けた。龍君兒の一件で懲りていないのか、劉忠良は程清と手を合わせた。
程清は悪事に劉忠良を利用し、様子を見に来た劉忠良の使用人は程清の存在を確認する。その頃、劉忠良は程清に自身の生い立ちを話してしまう。「あの時のガキか…」不敵な笑みを浮かべる程清。劉忠良が全てを知ったのは、程清とその手下たちが襲い掛かってきたときだった。遂に仇敵と向かい合う劉忠良は、決死の戦いに挑む!

▲本作で劉忠良が弟子入りするのは権永文・大道芸の人・午馬・程清と4人に上る。仇討ちのために強くなりたいのは解るが、これじゃー龍君兒じゃなくても節操無しだと言いたくなるレベルだ(笑)。とはいえ、それら修行してきた技はちゃんとラストシーンで役立っており、アクションのレベルもきちっとしていて楽しむことができる。
また、本作において劉忠良と共に登場した王太郎が個人的に気に入りました。彼は茅瑛の『舞拳』で師匠の一人を演じ、『片腕カンフーVS空とぶギロチン』では龍君兒にヌードにされていた猿拳使いのあの人だが、見た目のショボさとは打って変わってアクロバットなアクションを難なくこなす技巧派(たぶん京劇系の人でしょうね)。コメディリリーフとしても活躍し、ラストバトルでは劉忠良の手助けをするなど、本作の彼は中々おいしい役として光っていました。
ストーリーに?が付く事もありますが、個性的な面々が繰り出す功夫アクションとも相まって普通に面白い功夫片ですので、劉忠良作品の入門編としてみてもいいかもしれません。

『雙馬連環』

2008-01-18 09:08:20 | カンフー映画:佳作
雙馬連環
英題:Mystery of Chess boxing/Ninja Checkmate
製作:1979年

▼本作は、かつて某功夫映画レビューサイトにて『ミステリー・オブ・将棋拳』(だったかな?)として紹介されていたものである。くだんのサイトによると海外で結構なヒットになったとの事で、その証拠に"Mystery of Chess boxing"の名を冠した黒人ラッパーによる曲が存在する(同じ様に海外のラッパーが功夫片から名前を貰った例はあり、『少林寺三十六房』『五毒』と同じ名を持つものもあるらしい)。
さてその内容だが、まさしく典型的なコメディ功夫片の一本ともいえるもので、ご丁寧に袁小田も引っ張り出されている。

■父を悪党の龍冠武(マーク・ロン)に殺された李藝民(サイモン・リー)は、仇討ちのために功夫道場へと入門する。下っ端ゆえに先輩からもイビられ、修行もロクにさせてもらえない李藝民。主人公特権(笑)で袁小田にちょっとだけ修行を受けさせてもらう李藝民だが、道場の師匠に龍冠武と関わりのある人物だと知られ、「面倒事は御免だ!」と破門されてしまう。
行く宛の無い李藝民は、以前会った将棋と功夫の達人・龍世家(ジャック・ロン)の元へと駆け込み、そこで新たな修行生活を送る事になった。隠遁していた龍世家は最初こそ渋っていたが、熱心な李藝民の頼みでようやく奥義・将棋拳を伝授させるに至った。
 李藝民はメキメキと実力を上げていくが、そこに龍冠武が姿を現す。龍冠武は先に登場した道場の師匠を倒し、次にいよいよ龍世家のもとへとやって来た。さすがに龍冠武は強敵で、さしもの龍世家でも敵わない。そこに李藝民が救援に現れ、仇敵との最後の闘いが始まった!

▲監督の郭南宏(ジョセフ・クオ)は、過去にも本作と似通ったキャストで『ドランクマスター・酒仙拳』という作品を撮っている。こちらは『酔拳』におんぶにだっこといった目論見が見え、作品自体も余り面白いものではなかったが、本作は下手に傾倒しなかったおかげで良質の作品になっている。
 英語吹替えのものを見たので龍冠武の目的がいまいち解りづらいが、ストーリーはオードソックスだが破綻は無いし、アクションもスピーディーかつアクロバットな殺陣で、とても見応えがある(武術指導は出演もしている王圻生や程天賜など)。なかなかに手堅い作りで、なるほどこれなら海外でもヒットした理由が何となく解る気がします。個人的には今まで見てきた李藝民の主演作ではベスト。功夫映画依存症の方にも是非見てもらいたいタイトルです。

『洪文定與胡亞彪』

2007-12-30 21:55:03 | カンフー映画:佳作
洪文定與胡亞彪/採陽女[封帛]主
The Guy with the Secret Kung fu
1981(1978?)

▼今年も早いもので、もう正月を目前に控えています。今年の「功夫電影専科」最後のレビューは、あまり年内に触れる事の少なかった孟飛(メン・フェイ)の主演作にスポットを当ててみたいと思います。
私が孟飛と初接触したのは『武道大連合・復讐のドラゴン』だったんですが、まだデビュー間もない頃だった孟飛の動きはあまり良いものではなく、修正前のレビューではかなり孟飛の事をボロクソにケナしていたこともありました。そして、今回取り上げるこの作品は孟飛が全盛を誇っていた時代に製作されたもので、立派な功夫スターとして成長した孟飛の動きは『武道大連合~』の頃とは比べるまでもありませんでした。
さて、その内容といいますと…。

■孟飛と李中堅が釣りをしていたところ、襲われている親子を目撃する。すぐさま助けに入った彼らは悪漢どもを撃破する(この時、敵の船頭の中に馮克安らしき顔を確認)。やられた悪漢たちはボスの陳莎莉に報告するが、陳莎莉の影にはもう1人の大きな悪の影…?
街中を歩いていた李中堅は悪漢たちの襲撃を受けていた。抵抗する李中堅だが、敵の苗天にヒロインを人質にとられ、捕まってしまう。話を聞いた孟飛はさっそく町へと繰り出すと、そこに朝廷の将軍(王侠?)が姿を現した。
さっそく一芝居打って人の目を逸らした孟飛は李中堅を助け出したが、既に孟飛の動向に気付いていた将軍が先回りしており、捕まってしまう。しかし孟飛たちは無罪放免で開放された(理由は不明)。
翌日、いつかの悪漢がまたヒロイン親子を襲っていた。しかし再び孟飛と李中堅に倒され、悪漢どもは陳莎莉に制裁を受けそうになる。そこに彼女の主人?が帰還し、「若造の1人や2人なぞ、ワシが叩きのめしてやる!」と意気込んだ。
その頃、孟飛と李中堅はすすり泣くおばさんを見かけた。曰く、「うちから誰か男を陳莎莉に差し出さないといけないんです…もし反対したら何をされるか…」と。
陳莎莉は悪漢どもを仕切る親玉でもある。そこで孟飛は人身御供に扮して潜り込んだ。だが陳莎莉は毒針の使い手で、これまでに何人も男たちが犠牲になっていた。孟飛も毒針を喰らうものの、なんとか脱出して李中堅の治療で一命を取り留めた。
更に、悪漢たちはヒロイン親子のところに彼らがいることを突き止め、陳莎莉とその主人は呪術でゾンビ(!)の鄭富雄を復活させた。そして2人の不在を狙い、主人が鄭富雄と共に襲撃に現れてヒロインの父を殺害し、ヒロインを誘拐してしまった。
後を追った孟飛と李中堅は鄭富雄に足止めを喰らい、墓守を父に持つ燕南希(ナンシー・イェン)の協力でゾンビ倒しの秘薬を作ってもらった。再び敵陣へと飛び込んだ2人だが、秘薬が通用せずに再び虜の身と相成った。そんな2人のところへ、先の将軍が現れた。そう、すべては将軍の策の内だったのだ!
その時、秘薬が不十分だったことに気付いた燕南希が救援に現れた。薬の完成版を持ってきた燕南希は鄭富雄を倒し、脱出した孟飛と李中堅は三度目の対決で主人を撃破する。一方、燕南希の手引きによってヒロインも脱出に成功し、異変を感じた悪漢たちが2人に襲い掛かってきた。これを退けた孟飛たちの前に、いよいよ最後の敵である陳莎莉と将軍が現れる!

▲本作はいたって平凡な台湾功夫映画だが、オードソックスな作りながら功夫アクションには見栄えがある。スターとして大成した後の孟飛アクションは初めて見たが、文頭で挙げた作品よりも格段に進歩した功夫の腕は目を見張るものがあり、これから孟飛の主演作を見るのが非常に楽しみである。
ところで、孟飛といえば方世玉スターとして有名だが、今回彼が扮しているのは"洪文定"である。この"洪文定"は『少林虎鶴拳』で汪禹(ワン・ユー)も演じていたキャラクターで、"洪熙官"の息子である。"洪文定"はこの作品以外にも『続・少林虎鶴拳/邪教逆襲』で劉家輝が演じている。タイトルにもう1人連なっている"胡亞彪"という人物も『続・少林虎鶴拳~』にも登場しており、こちらは"胡惠乾"(『続・嵐を呼ぶドラゴン』で戚冠軍が演じた役)の息子だとか。
はてさて、来年はどんな功夫映画に巡り会えるのでしょうか?当ブログは2、3日の中休みを挟んでから復帰致しますので、それまではしばしのお別れです。それでは皆さん、良いお年を!(強引に〆)

『チャック・ノリスin地獄の刑事』

2007-12-17 00:22:38 | カンフー映画:佳作
「チャック・ノリスin地獄の刑事」
黄面老虎
Yellow Faced Tiger/Slaughter in San Francisco/Karate Cop
1974

▼本作は元々羅維(ロー・ウェイ)が李小龍の主演作として用意していた作品だったが、李小龍に蹴られ、当時新人だった王道(ワン・タオ)へとお役が回ってきた曰く付きの作品である(同じような経緯を辿った作品として、ジミー先生の『冷面虎』などがある)。
国内ではポニー版の英語吹き替え版ビデオが出回っていたが、最近になってフォーチュンスターから中文オリジナル版が発売されている。向こうのバージョンには勇壮な主題歌があるとのことだが、現在はショウブラ復刻も含めて未公開作にしっちゃかめっちゃかなため、私は買うかどうか解りません(爆

■舞台はサンフランシスコの中国人街。王道は警官で、デビュー当時の張艾嘉(シルビア・チャン)が絡んだ事件で王道は人を殺してしまう。しばらくして社会に復帰した王道はレストランのウェイターとして新たな人生るが、彼の前に、マフィアのチャック・ノリスが現れた。
コーヒーを注ごうとした王道の手に火の付いた葉巻を擦り付けたが、王道はぐっと堪えてコーヒーを注ぎ終わった。その根性を気に入ったノリスは彼を仲間に引き入れようと呼び出すが、正義の心は健在だった王道はこれをはねのけるのだった。
その夜、王道と飲み明かした元相棒のジョージは強盗事件を目撃。立ち向かうジョージだが殺害され、翌日になって強盗事件の発覚と共にジョージの死も確認された。
その死体があったのは張艾嘉の家の前で、目撃者の証言から犯人グループは中国系だったということもあり、何の罪もない張艾嘉の父は警察の留置所送りになってしまう。
親友の死の真相に迫るべく独自操作を開始した王道は、ジョージが死の間際にちぎり取ったと思われる犯人のシャツの切れ端をゲットするが、そこで再び張艾嘉と出会う。張艾嘉の彼氏が迎えに来たので後をつけてみると、そこはチャック・ノリスの屋敷だった。
潜り込んで調べてみると、切れ端にぴったりの破れた服を所持する男・銭月笙(チェン・ユーサン)を確保した王道。早速警察に連れて行ったが、確証できないから釈放されてしまう…ってんなアホな!
そこで王道は再び銭月笙に詰め寄り、裏で事件の糸を引いている人物を倉庫街に呼び出すよう命じた。呼び出してみると、黒幕の正体は警察のお偉いさんだった。彼はノリスと共謀して大金をせしめようとしていたのだが、結局王道の手により地獄送りとあいなった。
敵も黙ってはいない。張艾嘉の父の弁護士が林正英(ラム・チェンイン)に消され、彼氏といた張艾嘉もノリスに襲われそうになった。王道の所へ転がり込んだ張艾嘉は、事件の真の黒幕はノリスだった事を告げ、王道はノリスの手下が大勢控える屋敷へ単身乗り込むのだった。

▲これが初主演となる王道だが、そのいかにも正統派といった感じのマスクは格好良く、またアクションも果敢にこなしている。日本で見られる彼の主演作が本作と『ニンジャ・サンダーボルト』などのニンジャ映画くらいなのが惜しいが、彼は本格的な功夫スターであり、『南拳北腿』などの正統派路線でその実力を見せている。
本作で気になるのがやはりノリスの存在だろう。いわずと知れた『ドラゴンへの道』での彼と比べると流石に劣る(もっとも、李小龍という男が相手なのでこの差は仕方がない)が、年代のわりにはなかなかのバトルを披露。個人的には殺陣のテンポが不統一だった『少林門』より、本作が好きだったりします。
ストーリーはご覧の通りの勧善懲悪。『ドラゴン危機一発』みたいに逮捕されたりとかはしないので後味も悪くないし、まだあどけない張艾嘉の姿も見モノ。なかなかどうして必見です。

『師兄師弟』

2007-12-05 23:20:54 | カンフー映画:佳作
師兄師弟
Masters of Tiger Crane
1984(1982?)

▼黄正利(ウォン・チェン・リー)が出演している韓国功夫片で、主演は徐炳憲(ベニー・ツイ)という兄ちゃんだ。役柄的にジャッキーを意識したキャラクターを演じている徐炳憲だが、いかんせんいかつい顔なのでムサ苦しいというかなんというか…(爆

■物語は少林寺の寺男である徐炳憲が、黄正利とその妹(2人とも『武装煉金』みたいなパピヨン仮面装着…ハズかしいぞ!)に師匠を殺され、兄を誘拐されるところから始まる。とはいえ、仇討ち相手に関する手がかりは死に際に師匠から託された黄正利のネックレスのみ。関所で門番にからかわれたり、チンピラにボコられそうになったり、変なジジイに連れられて食い逃げの片棒を担がされ、食堂で働かされたりと七転八倒。一向に仇敵探しは進展しなかった。
更には黄正利の手下に持っていたネックレスを見られた徐炳憲。報告を受けた黄正利は「あの小僧からネックレスを取り返せ!」と手下に命じ、あっという間に徐炳憲を捕らえてしまう。今回の黄正利は誘拐された徐炳憲の兄に絵を描かせており(画家?贋作職人?)、その絵を役人に売り渡していた。絵を売って金儲けって…悪事のスケール小さいぞ黄正利!(笑
捕まった徐炳憲は兄と悲劇の再会を果たすが、その晩にあの変なジジイに助け出された。ジジイは今まで幾度か徐炳憲のピンチを助けており、先に殺された師匠の兄弟弟子でもあった。かくして、ジジイ師匠からこの手の作品ではお馴染みのヘンテコ修行を受け、腕を磨いた徐炳憲はいよいよ本格的な仇討ちへと向かった!

▼徐炳憲が仇討ちに向かったところからアクションは俄然ヒートアップ!作中ではここまでずっとやられてばかりだった徐炳憲は、その鬱憤を晴らすかのように大暴れを展開している。さすがに黄正利には苦戦するものの、ジジイ師匠の決死の加勢で遂に仇を討つなど、ほとんどその勢いは『ヤング・マスター』もビックリといった感じだ。
アクロバットな動作を交えたラストバトルはかなり面白いが、個人的に驚いたのが徐炳憲である。徐炳憲はぜんぜん知らない人だが、本作では黄正利に負けないテコンドーアクションを披露。その迫力たるや、黄正利も霞んでしまうほどだった(もっとも、本作の黄正利にあまり凄みが無かったということもあるのだが…)。
しかしこの展開を見ても解るとおり、本作はこのクライマックスから完全に別物のストーリーとなってしまっている。
前半は典型的な『酔拳』チックのコメディ功夫片だが、後半に進むに連れてどんどん陰惨な展開へと向かっていき、食堂の娘さん・徐炳憲の兄・ジジイ師匠に至るまで、徐炳憲と親しくしていた人々は全員殺されてしまうのだ。食堂の娘さんは明確に死んだ描写は無いものの、最後に登場したシーンを見るに、無事では済んでいないハズである。
コメディ部分の演出がちょっとモタついていたところを見ると、本作の監督はあまりこの手の話が好きではなく、とっととシリアスなストーリーに持っていきたかったのではないかと思われる(あくまで推測ですが…)。決して悪くは無い作品ではあるが、最後の展開がなぁ……う~ん。

『無招勝有招』

2007-12-03 22:16:31 | カンフー映画:佳作
無招勝有招
Crazy Couple
1979

▼この作品は、以前「面白い広報イラストの作品がある」と聞き、ちょっと気になって入手したものである(笑
しかし実際に見てみるとスタッフやキャストの充実っぷりに驚きました。主演は劉氏兄弟の一番地味な方(爆)の劉家勇で、他に石天(ディーン・セキ)を始めとしたジャッキー映画系の面子が締めている。びっくりしたのがここからで、製作は曾志偉(エリック・ツァン)、監督が劉觀偉(リッキー・リュウ)、脚本が黄百鳴(レイモンド・ウォン)と、まるでシネマシティのような布陣が揃っているのだ。
シネマシティといえば『悪漢探偵』などの傑作を作り出し、香港映画界に新風を吹き込んだ会社だ。昔ながらのありきたりな功夫片は作らないことを旨としていた事でも知られているが、そのシネマシティの主要スタッフが作った功夫片が本作だ。功夫映画ファンとしては、かなり気になる組み合わせである。

■劉家勇は売れない猿回しで、獣医の王清(ワン・チン)の家に居候している。一方の石天は陳龍の道場で師範代をしており、2人は仲がいいのか悪いのかよくわからない間柄で、本作は彼らが主役である。
ある日、突然石天のいる道場が唐炎燦(トン・ウェンチャイ)率いる一派に襲撃された。どうにか王清と劉家勇の加勢で撃退したものの、その裏には馮克安(手下に火星がいる)の影があり、唐炎燦は馮克安によって始末される。劉家勇と石天は馮克安が黒幕と知らずに近付いたため、王清が殺されてしまった。
悪党の馮克安は陳龍をも殺し、劉家勇と石天もまた追われる身となってしまう。その後、2人はなぜか黄蝦(ウォン・ハー)に何度もちょっかいを出されたり、功夫の達人である周潤堅に弟子入りを志願したりと七転八倒を繰り広げ、最終的には何故か黄蝦のところへ弟子入りを決定した。
黄蝦のもとで修行に励む2人はそれぞれ拳法を習得していくが、ある日顔見知りの李麗麗(リリー・リー)と再会した事から、2人は再び馮克安と遭遇する事となる。猿拳の劉家勇とタコ拳の石天VS鷹爪拳の馮克安との死闘の行方は、果たして…?

▲本作は言葉で説明している箇所が多いので、細部まで理解する事は出来なかった。馮克安はどうして悪事を働くのか、劉家勇たちはどうして黄蝦に弟子入りしたのか、李麗麗はなぜ劉家勇らを襲ったのか等、表面だけの情報ではちょっと解りづらいところがある。
しかし本作はそれを差し引いても面白い要素が多い。石天は今回もギャグを炸裂させ、功夫アクションもこなすし(今回の石天は最初からある程度強い!)、しっかり笑いを取っている。これについては石天ウォッチャーも注目だろう。ギャグといえば、先にも紹介した曾志偉が王清の娘役(!)で登場しているのが特筆で、石天とのラブシーンまであったりするから困ったものだ(爆
また、王清VS劉家勇、陳龍VS唐炎燦、馮克安VS唐炎燦、劉家勇VS黄蝦などなど…挙げたらキリがないが、本作には他ではあまり見かけないような顔合わせのバトルがあったりする。そのバトルの内容も濃く(武術指導は馮克安と黄蝦)、こちらだけでも十分楽しむ事ができる。
それにしても、やはり細かいところが解っていたらもっと面白いはず…ここだけはどうしても残念だ(日本語吹替えとかあったら更に面白そう)。ジャッキーブームの頃にテレビ放送していてもおかしくなさそうなコメディ功夫片。とりあえず石天迷&功夫映画ファンは一軒の価値ありです!

『天才カンフー(天才功夫)』

2007-12-02 22:47:38 | カンフー映画:佳作
「天才カンフー」
原題:天才功夫
英題:Kung Fu Genius
製作:1979年

▼本作は前々から見てみたかった作品の1つである。製作はかの協利電影で、主演は『蛇拳』の主演候補にも挙がっていた金童(クリフ・ロク)。そして何よりも、個人的に注目していたのは本作に小候が出演している事である。小候は『マッドクンフー・猿拳』などで驚異的な身の軽さを披露し、劉家良(ラウ・カーリョン)作品の軽業担当として大いに活躍した名スターだ。他にも監督兼任の唐偉成や李海生など、ショウブラ系の面子が顔を見せている。
これがショウブラ作品なら「ああ、これなら安心してみられるな…」と無難な感想しか抱かない所だが、劉家輝も汪禹もいない独立プロ作品となれば話は別。協利は『懲罰』で倉田保昭を、『巡捕房』で黄正利を呼んだが、本作では彼らが画面を引き締めているのだ。

■金童は功夫の達人で、一度見たものはすぐ覚えてしまう天賦の才を持っていた。ある時、1人しかいない弟子(『少林寺VS忍者』で劉家輝の書生をやってた人)の進言をキッカケに、金童は思い切って"天才武館"なる道場を建てた。
一方その頃、こちらは近くにある陳龍の道場。ここでは神打を用いた訓練をしており、門下生の1人が金童の道場が建ったことに腹を立てていた。彼は「大変ですよ師匠!このままじゃウチの道場が潰されるかもしれません!」と注進したが、陳龍は「新しい道場の一つや二つが何だ?」と大人な対応。反面、その門下生は小候を連れて金童の道場へと乗り込んだ。
金童VS小候という珠玉の顔合わせによるバトルが行われ、結果は金童の勝利に終わったが、件の門下生は腹の虫が治まらない。そこで金童の弟子を闇夜に紛れて襲ったところ、あまりに強くボコったせいで金童の弟子は知的障害者になってしまった(!)。
 翌日、弟子を小候に猿回しにされて(『マッドクンフー・猿拳』じゃ逆の立場だったのに…)怒りに燃える金童だが、ここは大人しく弟子を伴って引き上げた。例の門下生は娼館で女と遊んでおり、追ってきた金童と大乱闘を繰り広げる。しかし、そこに悪党の李海生が介入し、門下生をタコ殴りにしてしまう。奴は外道だが放ってはおけない…金童は李海生らを相手取って大立ち回りを展開。本当は殺してやりたかったが、金童は門下生を手厚い仕置きに処するのみに止めた。
ところが、李海生の所では乱闘に参加した息子がショックで知的障害者になっていた(またかよ!)。仕返しはしたいが金童に自分の腕では敵わない…そこで李海生は用心棒の唐偉成を呼び寄せた。手始めに李海生一味は問題の発端となった門下生のいる陳龍道場を襲撃し、続いて金童を襲った。その戦いの中で陳龍道場から唯一生き残った例の門下生も死に、弟子は李海生たちに人質として捕らえられてしまうが…?

▼本作の金童はあまりコメディ功夫片には見られない、生まれながらの天才というキャラとなっている。奥義書をペラ見しただけで拳法を暗記したりと、苦労して形を覚えていた『酔拳』のジャッキーも涙目になりそうな設定だ。しかし、これがかえって作品の広がりを狭めてしまったようにも思える。
未熟者の落ちこぼれであれば、奇抜な修業で笑いを呼べるし、人間的に成長したりと描けるドラマの幅は大きい。しかし本作のように最初からプロフェッショナルだと、逆に動かしづらいものだ(要は演出次第だが)。
 よって、本作は最初こそコメディ風味だが、途中からは陰惨な物語になっている。終盤に例の門下生が死ぬものの、金童が立ち上がる動機付けとしてはあまりにも微妙だ。この男は金童にとっては弟子をパーにした仇だし、元を辿れば李海生との確執が生まれる元になったのもこいつである。いったいどこに怒りをぶつけていいものかどうか…これには金童も戸惑っているようだった(苦笑
しかし功夫アクションについてはかなり健闘している。注目の金童VS小候は素手の対決とウェポンバトルで2回行われて満腹だし、李海生&唐偉成VS陳龍という珍バトルなど見どころは多い。それにアクロバットな動きや様々な拳法、加えて豊富な武器術などで満遍なくアクションを展開する金童が素晴らしい。ストーリーさえマトモだったら、文句なしの傑作だったんだけどなぁ…。