1955年、東映で作られた時代劇で、『侍ニッポン・新納鶴千代』としてはサイレント映画の大河内伝次郎主演以来、3回目のリメイクになるが、ここでの主演は東千代介で、彼のやや線の細いニヒルな感じにあっている。
彼は、主題歌も良く歌っていたように記憶している。
幕末の江戸、町の道場に通っている新納鶴千代は、田代百合子と知り合い、人を介して婚姻の申し込みをする。
だが、田代の家は、加賀前田藩の重役で、山形勲は、「両親きちんと申し込みに来い」とはね付ける。
東は、芸者だった母高杉早苗が、まだ無役だった頃の井伊直弼(坂東蓑助 先日亡くなった坂東三津五郎の祖父)との間にできた子で、その後兄たちの死で、直弼急遽城主から大老にまでなったため、高杉と二人で暮らすことになったのである。
一方、道場の友人は水戸藩の者で、彼らは仇敵の井伊直弼の暗殺を企てている。
そして3月3日、彼らが江戸城登城の井伊直弼暗殺に向かった時、新納鶴千代は自分の父が直弼であることを知り、父の名を呼ぶが、二人とも惨殺されてしまう。
この東映作品の後、松竹でも田村高広のがあり、そして1963年には、三船敏郎主演、橋本忍脚本、岡本喜八監督で『侍』が作られる。
ここでは、父を憎んで、直弼の首を三船が取って掲げると言うラストになっている。このラストシーンの殺陣の凄さは日本映画史に残るものだと思う。それに比べれば、この東映版は、かなり劣る場面になっていた。
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