指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

『生きる』は、川崎市役所だった

2015年04月19日 | 映画

先日、元東宝の録音技師だった林頴四郎さんからお電話をいただき、世田谷美術館の「東宝スタジオ展に行きましたか」と聞かれた。

もちろん、この展示は知っていて行きたかったのだが、この間小津安二郎論を書いていたので、行く暇がなかったのだ。

昨日は、芝居を見に行ったので、最終日の今日の昼間に行ってきた。

非常に興味深い資料が沢山あり、それについてはまた書くが、買った「図録」に松山崇の図面が載っていて、川崎市役所とはっきり記入してあった。

あの映画の市役所はどこだろうか、と思ってきたが、これで解決した。

確かに、あの映画に出てくる事象のスケールから考えれば、川崎市あたりが適当だろう。

そう思うと、志村喬がヤクザの宮口精二に脅かされる廊下の感じは、川崎市役所の由緒ある建物の感じに似ている気もする。

                                       


三条美紀、死去

2015年04月19日 | 映画

女優の三条美紀が亡くなられた、86歳。

彼女は戦後大映の新人女優としてデビューし、三益愛子と共演した「母物」で人気女優になる。

だが、彼女の出演作品で重要なのは、黒澤明の問題作の『静かなる決闘』に主人公として出ていることである。

これについては、黒澤明の徴兵されなかったことの「贖罪意識」だと言うのは、何度も書いたので繰り返さないが、三船敏郎の相手役となった彼女も戦争の被害者だったのである。

母物といい、『静かなる決闘』といい、彼女は戦争の被害者役を演じてきたと言えるだろう。

                                                

 

1970年代以降は、市川崑監督の『犬神家の一族』以降の横溝正史シリーズ作品でも必ず出ていた。また、市川崑の晩年の傑作『細雪』では、槙岡本家の女中役も演じていた。

言うまでもなく、かつて若手女優として活躍されていた紀比呂子は、彼女の娘だった。

戦後の映画を代表する女優のご冥福をお祈りする。

それにしても、愛川欣也の訃報は新聞の一面トップと言うのは、少し扱いが大きすぎるように思うが。