猫じじいのブログ

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民主的「皇帝」は現代日本に現れるだろうか

2021-10-09 23:15:35 | 政治時評

きょうの朝日新聞〈ひもとく〉、石川健治の『民主的「皇帝」は生き続けるか』は凝りすぎて何を言っているかわかりくい。きっと、この問題に詳しい知識人だけがニンマリとしながら読むのだろう。

私の信条からいうと、だいじなことは、誰にでもわかるように書かないといけない、と考える。しかし、わからないこそ、また、私の気を引く。

《 2月革命から4年に満たないフランス共和国の大統領は、自らの再選や任期延長を禁止する憲法の改正を画策し、それが失敗するやクーデターを起こして皇帝となり、自分都合の人民投票で民意を味方につけた。》

この書き出しの文には、いつのことか、誰なのか、を特定する年号、個人名がない。したがって、現代のことを言っているようにも、読める。

そして、冒頭の2段落まで読むと、19世紀のフランスで起きた革命騒ぎのなかで、強者と弱者との両方から支持された男がいたことがわかる。私は、高校のとき、歴史に興味をもっていなかったので、そんな男がいたとは、知らなかった。ルイ・ボナパルトのことである。

《人びとを震撼させる力をもってきた》マルクスの名作『ルイ・ボナパルトのブリュメールの18日』を早速、図書館に予約した。

しかし、ここでも、意味の分からない言葉を石川は挿入している。

《そうした翻訳の振幅を越えて》とは何だろう。マルクスの名作を日本語に翻訳するとき、訳語が不適切だとかの騒ぎでもあったのか。

それにつづく《彼はその男を現代シーザーとしては描かなかった》は何を意味するのだろうか。これは、マルクスが彼の著作でルイ・ボナパルトを笑いものにしていることなのか。

第3段落の先頭の《訳書としては、キレのある岡沢静也訳(講談社学術文庫版)を押すが》で、《原著初版を世に出した太田出版(現平凡社ライブラリ―版)》の翻訳に石川は不満があることがわかる。

第3段落の終わりの《「危機の想像的解決を唱える“ボナパルティズム”の出現」を4半世紀前に予言した、柄谷行人の評論が収められている》で、ようやく、石川の関心事の方向が見えてくる。

第4段落の終わりで、《過去の「亡霊」をよび起し意識的演出で大衆を惹きつけた権力者は、予言とおり現代日本に現れたのだ》で、石川の主張したいことが確定する。

それでも、人名が現れていないので、安倍晋三のことなのか岸田文雄のことなのか、わからない。老人の私としては、著者 石川の脳内で起きている連想ゲームにお付き合いさせられるのは、不愉快である。

第6段落で、はじめて、人名が出てくると同時に、原発の問題が提示される。

《これ(再生エネルギーによる発電)に対して、経産省・トヨタ・電力会社による猛烈な巻き返しが行われ、その受け皿になったのは岸田文雄現首相である。》

私のような老人には、これをはじめに言って欲しかった。しかし、どう考えても、のろまで操り人形のような岸田が、ルイ・ボナパルトと比較されるような、強者からも弱者からも支持される男になるのだろうとは、信じられない。



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