猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

当初の「新しい資本主義」にあった「再分配」はどこに行ったのか、岸田文雄くん

2023-02-06 00:13:26 | 政治時評

けさの朝日新聞に、「首相を支える秘書官が、性的少数者や同性婚について差別発言をして更迭」との記事がのった。彼は「演説の執筆やメディア対応」を担ってきたとある。すると、ことしの1月23日の岸田文雄の施政方針演説も彼が書いたのかもしれない。それは書き出しこそ格調が高いが、各論に入るとめちゃくちゃであった。

施政方針演説の「五 こども・子育て政策」を読み返してみよう。

演説は、「新しい資本主義は、『持続可能』で、『包摂的』な新たな経済社会を創っていくための挑戦」とし、「こども・子育て政策」を「我が国の経済社会の『持続性』」の「最重要政策と位置付けている」と述べる。

演説が「急速に進展する少子化により、昨年の出生数は八十万人を割り込むと見込まれ、我が国は、社会機能を維持できるかどうかの瀬戸際」「こどもファーストの経済社会を作り上げ、出生率を反転させなければなりません」と大上段に述べるにもかかわらず、「年齢・性別を問わず、皆が参加する、従来とは次元の異なる少子化対策を実現したい」、「本年四月に発足するこども家庭庁の下で」検討するとしか言わない。具体策がない。

なぜ、出生数が減少の一途をたどるのか、それは国民の貧困化だと、私は考える。国会で与野党が「貧困化」の視点から「出生率の低下」をとらえないのが不思議である。

「貧困」という問題は相対的なものである。子どものとき、私の家には、給湯器、洗濯機、冷蔵庫、エアコン、風呂がなかった。しかし、私は自分が貧困だと思わなかった。ほとんどの家庭になかったからである。

ところが、いつのまにか、これらがあって当たり前になった。貧困か否かのラインがあがったのである。この新しい文化的生活を維持しようと思うと、結婚や子どもをもつことをためらうようになる。

それに加え、都市では子どもの塾通いが多くなっている。子どもの教育に使う費用が増えている。みんなが大学に押し寄せても、高等教育に見合う仕事があるはずがない。

「貧困化」と「子育て費用の増大」がなければ、多くの人は子どもをもちたいと思うはず、と私は考える。したがって、「こども・子育て政策」の基本は、「貧困」の解消と「子育て費用」の抑制しかない。しかし、このために政府ができることは限られる。

政府が「賃金をあげろ」と叫んで、それが実現するとは思わない。賃金上昇を価格に転嫁せよというが、そんなことをしたら、際限のないインフレが進む。結局、大企業の社員の給料だけがあがって、経済格差が拡大する。

政府ができるのは税制と福祉を通じた「再分配」である。

戦後しばらくは、公営住宅の供給に政府は力を入れていたが、現在、資産家の反対で、公営住宅の供給を抑えている。これはいけない。

公営の安い賃貸がふえれば、みんなが、そのお金を洗濯機、冷蔵庫、エアコンにまわせる。給湯器、風呂をつけた賃貸公営住宅を供給すれば良い。昔と違って、温水の給湯を外にできるから、外気を遮断できる。そうすれば、冷房費、暖房費が節約できる。国のエネルギー使用量が減らせる。

子どもを育てるには子どもとともに住む場所が必要である。

「子育て費用」が増大しているのは、共稼ぎと教育費の増大が大きい。

共稼ぎを減らすことは、社会が女性の労働力をも必要としていることもあり、むずかしい。それなら、社会は集めた税金で保育所・幼稚園を大幅に資金援助すべきである。また。育児を共同で行う親たちを援助すべきである。私は、「保育所」「幼稚園」が企業として存在することに疑念を持っている。幼い子どもは親の愛情を必要としている。幼い子どもをもつ親たちが協力し合って共同で子育てをするのが一番良いと考える。

ここでもキーは「再分配」である。

教育費がかかるのは、現在の教育機関が、子どもに競争させ、将来の経済的格差を正当化する役割を担っていることにある。「教育が貧困を解消」というのは妄想であって、現実には、「教育によって格差を正当化」しているのである。このような教育のありかたを変えるには、公立大学は学びたい子どもを誰でも受け入れ、大学卒を何かのパスポートにさせないことである。また、公務員の採用をくじで行い、障害者や貧困家庭出身者や高齢者や中・高卒の人を積極的に雇うようにすることである。

入試制度や雇用習慣を根本的に変えなければ、競って塾に行かせる、有名中学校、有名高校に行かせるという、現在の愚かな行動パターンは変わらない。

岸田文雄の施政演説は見かけだけの格調で、資産家や経営者の利益にくみし、根本から間違っている。当初の「新しい資本主義」にあった「再分配」はどこに行ったのか、岸田文雄くん。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿