12月4日に横浜市が「カジノ誘致」の説明会を行ったが、ひどいものだった。朝日新聞は、全国版では、これを報道していない。横浜版でも「市長力説も根強い反対」という見出しをつけ、説明会の実態を伝えていない。
朝日新聞よりテレビの報道がはるかにましである。とくに日テレの「スッキリ」の報道が実態を明らかにしている。
朝日新聞の「市長力説」に反して、おざなりの説明を林文子市長がおこなった。カジノ以外の話しに大半の時間を使った。台風15号での行政対応の謝罪や港湾整備の実績や農場の話など、50分の市長説明のうち、関係のない話を40分間以上続けた。
しかも、質疑応答も直接受けるのではなく、質問を用紙に記入させ、司会者の女性が代読して市長が答えるというスタイルだった。
参加者が「多くの市民が反対していることを、市長の考えだけで進めるべきではない。カジノのないIRを進めるべき」と質問すると、林市長はマイクを手にして答えようとするのだが、司会者が「質問という形ではございませんので、これでは回答はございませんね」と勝手に切り上げた。
問題は、「市民討論会」とか「市民の意見を聴く会」とかではなく、市側の一方的「説明会」であったことである。横浜市が求めたパブリックコメントの、94%がカジノ誘致に否定的だったという。各社の世論調査でも、誘致反対が60%を超えている。
市長は、「税収が他の大都市に比べて少ないという現状を鑑みたら、色んな所でお金を生み出していきたい」をカジノ誘致の理由とした。
(1)カジノを誘致したら本当に税収が増えるのか、(2)税収を増やすためにカジノを誘致することは倫理的にゆるされるのか、という問いがある。
(1)の問いは事実認定問題なので、市長がその根拠を明確に示さなければならない。まず、カジノ誘致で、年間2000~4000万人の訪問者が見込め、宿泊者が増えれば年間6300億~1兆円の経済効果が見込め、年間最大1200億円の増収になるというが、信頼性があるのか。誰が、どのような情報にもとづいて、この数値を作ったのか。
日本で大成功の東京ディズニーランドでさえ、2施設合わせて年3千万人である。いったい、どのような人間がカジノに訪れるとしているのか。東京ディズニーランドを訪れるのは子どもづれの家族やカップルである。ギャンブルに横浜の山下ふ頭に来るのは誰か。こんなに多数のギャンブル好きがいるのか。客層と各個人の落とす金額の予想の根拠を明確にしないといけない。
また、年間最大1200億円の増収とは、経済効果 1兆円からの税収なのか、カジノだけからの増収はいくらと想定しているのか。カジノの経済効果は建設業関係者に限られる。しかも、期間が限定される。
日本総合研の藻谷浩介は、シンガポールのマリーナベイ・サンズも、中国政府がマネーロンダリング(資金洗浄)目的の中国人のカジノ利用を厳しく規制した結果、経営が苦しくなったと指摘している。
本来、このような事実検証は、横浜市議会で委員会をつくり、丁寧になされるべきである。ところが、誘致賛成の自民党と公明党が横浜市議会の多数派をなしていて、増収の根拠が議論されていない。とくに市民の味方のフリをしてきた公明党の責任が問われる。
(2)は「人の不幸で得したいのか」ということである。増収か倫理かという問題は、市側がかってに選択するものでなく、市民が選択するものである。とくに、市議会が「民主的議会制」の市民を代表するという約束を踏みにじっている現状では、横浜市民の意志を問う住民投票を行うしかない。
林文子市長は、ギャンブル依存症や治安悪化の対策には、マイナンバーカードなどによる入場制限、区域外周辺の防犯カメラ設置などを挙げた。外国人にはマイナンバーカードがない。パスポートを使うだろう。マイナンバーカードを使うとは、日本人客を期待しているからだろう。
ギャンブル依存症とは、だれでもがなりうることで、人間の脳は、リスクを冒して何かを得ることに快感を覚えるようにできている。この特性が起業に勉学に向かえば、本人も幸せになり、社会も発展する。カジノは、この特性を、偶発的な金銭のやりとりに、無駄使いさせてしまう。パチンコと違い、動く金銭の額と速度が、カジノでは桁違いに大きいのだ。
しかも、カジノは必ず胴元が儲かるようにできている。すなわち、客は必ず財産を失うようにできている。カジノは「客の不幸で儲ける」産業である。
このようなことは、まっとうな市民社会では倫理的に許されないことである。
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