猫じじいのブログ

子どもたちや若者や弱者のために役立てばと、人権、思想、宗教、政治、教育、科学、精神医学について、自分の考えを述べます。

納得できない是川夕の『「移民国家」になる日本』

2021-11-29 22:45:33 | 社会時評

4日前の11月26日の朝日新聞に、是川夕へのインタビュー記事『「移民国家」になる日本』がのった。日本に、観光客とは別に、働きに留学にどんどん外国人来日しているが、人口が減少している日本としては、いろいろな課題があっても、これが救いになるという是川の主張である。

読めば読むほど違和感の残るインタビュー記事であった。本当は、いろいろな課題にどうするかが、問題なのではないかということである。

入管の報告書によれば、2019年には、外国から日本に2,840万人が訪れている。そのうちの59万人が90日をこえる滞在である。

是川によれば、《多くの外国人労働者が、働くための在留資格という正面玄関ではなく、研修目的の技能実習制度や留学生のアルバイトなどのバックドアから入っているという見方が主流です。》

このバックドアは、必ずしも不法入国者という意味ではなく、働くための在留資格をとらずに入国したにもかかわらず、いつのまにか、日本で働いているということである。たとえば、日本語習得を目的として入国しても、それから大学に入学でき卒業できれば、日本人卒業生と同じく企業に就職でき、専門的知識を生かした永住資格を取ることも可能となってくる。

日本の企業の多くは、外国と貿易しているから、外国生まれの社員が必要である。

また、日本の企業はかたよった年齢構成になっており、給料の安い若年層の社員を求めている。国税庁の民間給与実態調査によると、2019年には、どの産業においても、45歳から49歳に労働人口の分布の山がきている。これは、日本人口の年齢構成と合致している。第2ベイビーブーマーが日本の労働人口のピークをなしている。

すなわち、国際協調ではなく、日本国内の格差社会を維持するために、外国からの若い移民が必要だと、是川は考えているのではないか。

日本が生きのこるための国際協調を重視すれば、外国の移民たちが日本で弱い立場にあることを見て見ぬふりをしてはいけないはずである。日本が外国から尊敬されるには、日本国憲法で「国民は」と規定されている人権を移民労働者にも当てはめないといけない。

私は若いとき4年間カナダの大学で研究者として働いたが、カナダ政府からカナダ人と変わらぬ社会保障を受けた。

是川が《ゆがんだ制度によって外国人労働者が来日し、それが故に人権侵害が一部でおきていることも否定できません。しかし、それだけでは大切なことを見落とすことに気付きました》という。

人権侵害がおきるのはまずいのではないか。強欲な経営者たちのために、「ゆがんだ制度」を作り維持する政府を、見ぬふりはできないのではないか。

是川は《各種調査によれば、アジア諸国から見て日本は憧れの国です。・・・他の国と比較くして相対的に、ドライに日本を選択しているだけだと思います》という。

この「ドライ」のいう言葉に違和感がある。是川の「ドライ」に「移民がつらい思いをしても移民の自己責任だ」という気持ちがあるのではないか。雇う日本人と雇われる移民の間に、互いの尊敬の念が生じなくても良いのだ、と言い切っているのではないか。

確かに、是川が、移民を日本文化に同化しなくてもよい、という主張、《文化的なものは私的な領域に属する部分も大きく、日本人も外国人もそれぞれが大切にすればいい》にはうなづける。

しかし、人権は普遍的な価値ではないのか。民主主義と人権とで尊敬される日本であるべきと私は思う。