気が付けばはや11月ですか。……いや思えばですよ、抗日何たら60周年の今年は年初から、
「日本による中国侵略の新証拠発見」
なんて記事が連日中国国内メディアを賑わせていました。いやー今年は新発見が多いなあ、と思っていたら8月15日以降はそれがめっきり減って、9月3日の反ファシズム何たら記念式典以降はほとんど見かけなくなりました。不思議ですねえ(笑)。
中国国内でテレビやラジオ、新聞を通じてこういうニュースに接することのできる人たちは「またあんなことやって」と思うくらいの民度はあるでしょう。あるでしょうけど、こと「小日本」ないし「日本鬼子」絡みなだけに、一方で感情というか情緒がやや不安定なるかも知れません。
特に「江沢民チルドレン」と呼ばれる愛国主義教育(=その大半が反日教育)を叩き込まれた若い世代、その全てではないでしょうけど、「糞青」(自称愛国者の反日教徒)たちにとってはいい「燃料」になることでしょう。
糞青というのも面白いもので、愛国者を自認するなら反日だけでなく、エイズ患者を支援したり環境問題に取り組んだり、農民の法治意識向上活動にも励めばいいのにと思うのですが、連中は不思議とそういうことはしません。で、そういうことをしている人たちが政治犯扱いで投獄されるのがいまの中国ですね。
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いま日中をめぐる事態がちょっと休み時間のようになっていますが、微妙な変化のようなものはみてとることができます。今回は一見地味ながら、下手をすると由々しき事態に発展しかねない重要な問題に取り組んてみたいと思います。
プロ化した糞青である「珍獣」、その代表格である童増・中国民間保釣連合会会長はなかなか苦労人で、日本の法廷で行われる個人に対しての対日賠償請求訴訟(強制労働など)の支援を長年やっています。当然ながら敗訴続きではありますが、そうした活動を長年できて、また中国国内メディアが報道するというのは当然ながら中共政権がそれを許しているからでしょう。御墨付きのある証拠です。
御墨付きがなければ、つまり当局が時宜を得ないと判断すれば断固阻止されます。先日の上海領事館への抗議行動を試みて拘束された糞青にしてもそうですし、童増の中国民間保釣連合会は尖閣防衛が趣旨の組織ですが、昨年秋以来、現地に船を出そうとすれば治安当局に邪魔され、香港の類似団体のイベントに出席しようとしたメンバーも出境を阻止されています。
まあ「保釣」については別の機会に譲るとして上述した個人訴訟、これは御墨付きがあるだけでなく、今後事態の展開次第では対日カードに使えるかも知れないという中共政権の思惑があるから続けさせているのでしょう。奇怪なことに、戦時中に中国人を強制労働させた日本企業の一覧表みたいなものも出回っています。北京の地元紙『京華時報』が報じたのを「新華網」(国営通信社のウェブサイト)が転載しています。
●「新華網」(2005/07/01)
http://news.xinhuanet.com/newscenter/2005-07/01/content_3160282.htm
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今春の反日騒動でも扶桑社の歴史教科書を支援する企業・個人名一覧のようなもの(◆◆)が中国国内メディアによって全国に流されました。叩くならここを叩け、と言わんばかりです。
いや実際に対日訴訟だけでなく、この運動をやっている民間組織(笑)「中国被虜往日本労工聯誼会」とその弁護団が10月31日に北京の鹿島建設を訪れ、「勧告書」を同社北京首席代表に手渡しています。要するに敗訴続きの裁判を飛び越えて強訴に及んだという訳です。
●謝罪しろ。
●賠償金を払え。
●同じ過ちはもう繰り返しませんと誓え。
という内容ですが、こういう行為は中国の法律ではどういう扱いになるのでしょう。司法を通さない以上、これは脅迫といってもいいのではないでしょうか。ちなみに「勧告書」は30日以内に回答するよう求めています。これも『京華時報』『北京晨報』などが報じたものを「新華網」が転載しています。御墨付きなのです。
●「新華網」(2005/11/01)
http://news.xinhuanet.com/politics/2005-11/01/content_3711301.htm
連中は他にも11月2日に在上海の日系企業5社に「勧告書」を手渡したと『中国青年報』(2005/11/03)が報じています。そしてこれをまた「新華網」が転載。
●「新華網」(2005/11/03)
http://news.xinhuanet.com/world/2005-11/03/content_3722521.htm
『中国青年報』は共青団(共産主義青年団)中央の機関紙、言わずと知れた胡錦涛総書記の御用新聞です。どうも5月末の「呉儀ドタキャン事件」以来精彩を欠いている気がするのですが、ともあれ同紙も足並みを揃えたということは記憶しておいていいでしょう。
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それにしてもこの活動、「民間組織(笑)」なんて笑っている場合ではありません。「勧告書」の要求を呑むような弱腰の日本企業が出てくれば一種のトレンドになってしまい、それにならう他の日本企業も出てくる可能性があります。そしてそれが「踏み絵」化するかも知れません。
自らの手足である「民間組織」がそういう戦果を引きずり出せば、中共政権にとっては外交ルートを経ない「非公式な対日カード」ということになり、願ったりかなったりでしょう。
代表者が日本企業へと赴いて「勧告書」を渡すだけですから「デモ&プチ暴動」など不測の事態に発展する恐れもありません。だから大量の警備陣を繰り出す必要もない。実に低コスト&低リスクな対日カードです。
対日訴訟については活動の当事者や支援者たちから、
「中国国内で該当企業を訴えるのもありではないか」
という声が以前から出ています。ただ中共政権にしてみると、「日中共同声明」などで賠償権放棄を明記している以上、国内の裁判で勝訴させるならねじ曲げた法解釈(国家としての賠償権は放棄したが、これは個人による賠償権放棄までは含んでいない)を行う必要があります。それは困る訳です。
まあ中共政権がそういう乱暴な法解釈を行うのであれば、日本も「日中共同声明」では台湾を中国領土と認めていない訳ですから、「一つの中国」を堅持したまま「台湾関係法」のようなものを通してしまえばいいのですけど。
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いずれにせよ、「9・11小泉圧勝」に続く小泉首相の靖国参拝+靖国シフトとでもいうべき超攻撃型3トップ(小泉・安倍・麻生)という「靖国コンボ」が登場したうえ、前々回ふれたように現在の日本において対中関係は外交課題としての優先度が極めて低いことが判明しています。
靖国問題について麻生外相が言及した「話し合い」は断固拒否してしまいましたし、李登輝氏が来春訪日するという問題はまだ正式なものとなっていないので中共政権も正式には騒げません(たぶん)。
手詰まりとまでは言いませんが、中国にとって対日外交が一種逼塞したかのような現在の状況下において、「勧告書」のような動きが出てきたことは注意していいと思います。
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それからこれです。糞青お好みの基地外新聞『環球時報』(2005/11/02)に出た署名論評を「人民網」(『人民日報』電子版)が転載しています。
●日本はいま正に勝ちようのない世論戦を行っている(「人民網」2005/11/04/08:24)
http://world.people.com.cn/GB/14549/3827628.html
内容ではなく筆者に注目です。『人民日報』高級編集の肩書を持つ珍獣・林治波、他でもない糞青たちの理論的指導者です(糞青たちが勝手に崇めているのですが)。こういう手合いの記事が「人民網」のトップページに並ぶのも事態が微妙に動いているからではないか、と一応気に留めておきたいところです。
実は他にも中央でちょっと気になる動きがありますし、中国国内メディアに対する「靖国」関連の報道規制もまだ完全には解除されていないようです。ただそれに言及すると長くなってまた「上下」2篇(笑)になってしまいますので、次回以降の話題ということにさせて下さい。とりあえずはこの辺で。
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日本企業から金を巻き上げたとしても、それは単にカントリーリスクの引上げを
自らの手で行うだけのことになるのではないでしょうか。
「北京原人の頭蓋骨」摩擦らしいですよ。
どうも、むこうでは、北京原人を妬む日本が隠し持っているという論調がでているらしい。場所も皇居の地下ではないかと。これって、人民解放軍が日本に侵攻するときは、皇居も占領対照ですね。
カントリーリスク、これは各企業の対中戦略で大きく変わるかと思います。中国に深入りしてしまっている企業、消費市場として中国を当てにしている企業が妥協する可能性は決して低くはないと思います。
>>タカダユウジさん
前回頂いたコメントもそうでしたが、HNがカタカナバージョンになりましたね。
皇居の地下に北京原人の骨があるなら取りあえず皇居へ核を撃つことはない、ということでしょうか。
>>近江源氏さん
御指摘の通りです。あとは槍玉に挙げられている(ブラックリストに載った)企業をみて考えることになりますが、1社でも妥協してしまえば中共の思う壷でしょう。
●謝罪しろ。
●賠償金を払え。
●同じ過ちはもう繰り返しませんと誓え。
と訴えている訳ですよね。
これ右翼やヤクザのやってる事ですね。
「看板があたったから詫びいれろ」
「うちの小冊子、一冊1万で買え」
「言うこと聞かないと街宣車つけるぞ」の類では。
「はいはい」で書類受け取るだけならまぁいいですけど、向こうの目的が謝罪と賠償の「公式発表」だとすると、そうは簡単に受け答えできないかと。
政冷経冷の国中国という関係も仕方無いんじゃないですか、ああいう国ならば。本とか読むと、昨日は反英、今日は反日、明日は反米とかやってたそうで。
しかしまーその場しのぎの八つ当たりと言う感じはぬぐえ切れませんよねー。
その企業からたかれる金とそれによって撤退・縮小する利益を考えたら崩壊へのスピードが速まるだけなんじゃないでしょうか?
安さだけが中国経済の売りなんだからそんな余分な経費がかさんでいったら元も子も無いだろうに。
>「日中共同声明」などで賠償権放棄を明記している以上、国内の裁判で勝訴させるならねじ曲げた法解釈(国家としての賠償権は放棄したが、これは個人による賠償権放棄までは含んでいない)を行う必要があります。
というあたりが鹿島が拒否する理由として新聞の一面買って解答書出したらさぞイヤな結果に終わるでしょうし。
鹿島には大々的に世界にこういう事態が中国で起きるとか宣伝していただき、チャイナリスクをあげて貰うのが良いかも。そのうち中央がこっそり泣いて謝りに来たりは………しないか。
ホンマにこの国の国民も政治家も官僚も中共や朝鮮の反日シャワーと左翼言論人の洗脳シャワーを浴び続けて、腰が抜けてますからねえ、嗚呼。
といった記事見たことあります。
個人では金あんまり取れないけど、数重ねて実績あがったら自尊心満足できるし、会社や国家への要求の時にも使えるかも。
ある日ドア開けたら、アジア系外国人が「あなたは謝罪と賠償する義務があります」と立ってたりして。
こういうのは定期的に掲示板に上がってくるんでしょうね。
リストアップされた日本企業にしてみれば「言いがかり、因縁付け」を理由に「カントリーリスクの増大」から投資縮小、さらには対中市場へのスタンスを仕切り直す絶好の機会と捉える事も可能じゃないでしょうか?
平たく言えば株主対策として逆利用が可能な訳です。
横並びに対中投資に深入りする日本企業の中で、リストアップされた「因縁を付けられた企業」がいち早く足抜けが出来る環境になりつつある。
株主に対しては「中国市場において、我が社は他社より不利なリスクを負ってしまった。だから追加投資はしないし、既に投下した資本の回収も前倒しする」と説明する「絶好の口実」を向こうがくれたと見る事も出来る訳です(笑)。
恐らくバブル崩壊は時間の問題ですが、ギリギリまで中国市場にコミットしていれば「ババ抜きのババ」を誰が掴むかというチキンレースになりかねない。
中共自身にそれを引かせる事が日本の国益である事は言うまでもありません。
アタマとシッポは他の誰かにくれてやれば良いのです。対中投資で既に「儲け」が出ている企業はいち早く撤退準備をするべきタイミングなのだと思います。
恐らく08年の五輪後にはブームの終わりは「誰の目にも明か」になるでしょう。
その時には逃げ出そうにも逃がしてくれない「超法規的措置」すら押し付けられる可能性があります。しかし今ならリストアップ企業が抜ける穴は、他の誰かが埋めてくれます。
これは僥倖かもしれません。
いつも貴重な情報ありがとうございます。
小生中国進出企業との仕事をしておりますが、総じてトップの方々は右よりというか至って健康な歴史認識の方々が多く心強いのですが、中には不勉強この上なく、または商売第一でCHINAに迎合するかのような考えの人間も居て、日々啓蒙・教育?に疲れる毎日でございます。来週も上海にてこのあたりの情報をネタに日系企業の覚悟をせまってこようと思います。
休み時間だからこそあらわになる事もあるのかもしれません。
とはいえ、中凶は靖国に継ぐ謝罪カードを新たに作り
”育てる”
のに必死なようにも見えます。
今は些細な要求かもしれませんが、中華的長期スパンでジワジワ大きくして行くつもりなのかもしれません。
過大な警戒は問題ですが、油断は禁物ですね。
日本人なら引き際は潔く引いて、中凶の目を白黒させて頂きたいものです。
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