日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 10月もはや7日ですか。……鬱です。中国の国慶節(建国記念日・10月1日)からの大型連休ももう終わってしまうという訳ですね。

 チナヲチ(中国観察の真似事)は私にとってはこの上ない娯楽。……ではありますが、それを楽しむためにはまず記事集めをやらなければなりません。過去に何度か書いたと思いますが、これが実に苦行なのです。

 たぶん私の要領が悪いせいだと思いますが、中国・香港・台湾と巡回して毎日約3時間は費やします。タイムリーな話題はもちろん、後々役に立つかも知れない記事まで目を配ると、最低そのくらいの時間が必要になるのです。それも仕事をしながらですから、「大紀元」をはじめとする反中共系サイトやタレ込みニュースサイトの「博訊網」などは、何か事件でも起きない限りのぞきには行きません。

 ただ、土曜と日曜は動きが少ないですから記事の分量も大幅減となるので楽です。祝祭日も然り。……という訳で、この一週間は中国が連休中ということで楽をさせてもらいました。

 でもそれも昨日で終わりです。この土曜・日曜は安倍首相訪中と党の重要会議「六中全会」(党第16期中央委員会第6次全体会議)の開幕、それに上海閥に対する掃討戦をはじめとした地方勢力潰しなどに関する記事が出てきますから平日並の分量になることは確実。

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 例えば今朝(10月7日)の香港紙では親中紙の『大公報』電子版が安倍首相訪中特集ともいえるような大量の記事を流しています。「高い格式を以て迎える」といった建前記事のほか、国会答弁での発言にブレがあるだとか、紙媒体やネット世論には訪中反対の声も根強いとか。

 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/ZM-632988.htm
 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/YM-633006.htm
 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/YM-632954.htm
 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/MW-632763.htm
 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/ZM-632984.htm
 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/ZM-633016.htm
 http://www.takungpao.com/news/06/10/07/YM-633008.htm

 それに
「盧溝橋参観の可能性も」という記事も気になります。これは今朝の『明報』の報道をパクったもので、同地の警備員が安倍首相が来るらしいと語ったことが根拠とのこと。『明報』は念入りにもその記事に反日活動家の第一人者・童増(保釣運動=尖閣防衛運動や対日民間戦時賠償請求訴訟関連の民間団体の親玉)まで登場させて、盧溝橋訪問について、

「もし安倍がそんなちっぽけなことすらやらないのなら、筋が通らない」

 と語らせています。

 ●『明報』(2006/10/07)
 http://hk.news.yahoo.com/061006/12/1u8k4.html

 『大公報』電子版はこれもまるまるパクっているのですが(笑)、親中紙が即座に転載したということは確度高めと判断していいのかどうか、親中紙筆頭格の『香港文匯報』は音無しの構えですから何ともいえません。

 ただ盧溝橋には小泉前首相も訪中時に足を運んでいます。今回の安倍首相の滞在日程は限られているものの、首相夫人にも独自の参観イベントが組まれているようですから、「高い格式のおもてなし」に盧溝橋詣でという嫌がらせイベントを無理やり紛れ込ませても不思議ではありませんね。ちなみに、北京の日本大使館はこの件についての事実確認を拒んだとなっています。

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 ところで安倍首相の訪中は「六中全会」の日程と重なってしまうのですが、この異例ともいえる手配りは、当然ながら胡錦涛サイド、当ブログのいう「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟同盟)が人事異動が行われる可能性もある「六中全会」を自らのペースで仕切ることができる、という自信を持った証拠とみていいでしょう。

 要するに「擁胡同盟」は政争において、敵対勢力である「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)にコールド勝ちないしはそれに近い圧倒的な得点差をつけることができたということです。上海閥だけでなく、その他「諸派」も沈黙させた点が重要かと思われます。

 「六中全会」は世代交代や大型人事の行われる来年開催の第17回党大会を控えた最後の前哨戦となる可能性が高く、それだけに主導権争いが熾烈になるところです。

 ところがその重要会議たる「六中全会」開幕早々に異例にも安倍首相の訪中を受け入れ、胡錦涛・国家主席と温家宝・首相がそれぞれ首脳会談に臨むのです。このスケジュールから、「諸派」に含まれているであろう対日強硬派、あるいは「反日」を掲げることで利権にありつこうとする勢力が太刀打ちできない、文句を言えない状況に陥っていることが垣間見えます。

 少なくとも昨年秋、胡錦涛のやりたい人事に全く手がつけられなかった「五中全会」や、その直後に小泉首相(当時)による靖国神社参拝が行われて対日姿勢が硬化した時期に比べれば、政治状況が大きく変化しているのは事実です。

 端的にいえば、胡錦涛が政権発足当時(2004年9月)に試みて3カ月で挫折した独自の対日外交路線を再開させる環境が整っている、ということでしょう。もちろんその具体的な内容は2年を経て変化した部分もあるでしょうが、胡錦涛が杞憂なく切り盛りできるようになった、といっていいかと思います。

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 恐らくそれは対日外交だけでなく、他の内外諸政策についても胡錦涛が確たる主導権を握ったといえるのだろうと思います。それを考える上で大きなポイントは、やはり陳良宇・上海市党委員会書記のクビを飛ばして上海閥を事実上解体させたことでしょう。

 現在、党の最高意思決定機関である中央政治局常務委員会は上海閥系が多数派ということになっています。事実その通りでしょうが、「多数派」の少なからずが来年の党大会で世代交代となり第一線から退くことになるでしょう。陳良宇というプリンスが斬首されたことがここで効いてきます。上海閥は世継ぎを失ってお家断絶が確実になったからです。有力な政治勢力が崩壊していくのをリアルタイムで見物できるというのはラッキーですね(真剣)。

 しかも以前紹介したように、胡錦涛はこの処置によって「一石五鳥」を狙い、現時点ではそれが思惑通りに運んでいるようにみえます。重複を恐れずに並べておきますと、

 ●次世代の有力者を潰すことで上海閥を壊滅状態にする
 ●「あの上海でもやられるのか」と「諸侯」に衝撃を与える
 ●それによって経済面での中央による統制力を強化する
 ●大物(陳良宇)の汚職摘発によって一般市民の喝采を浴びることで政権への求心力アップ。
 ●上海閥の力を削ぐことで「六中全会」及び来年開催の第17回党大会での人事権掌握を容易にする

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 さらに追い打ちをかけるように、河南省の高官らが土地収用不正の咎で更迭されました。この荒療治が、やはり「反胡連合」の一角を占める一部の「諸侯」、つまり地方勢力を黙らせる結果になったと思います。いや、「反胡連合」かどうかは別としても、「諸侯」がとりあえず鳴りをひそめる破目になった一撃というべきでしょう。

 陳良宇解任は、「反胡連合」の主軸である
「あの上海閥でもやられる」ことを内外に示しましたが、続いて断行された河南省に対する措置は、

「上海閥でなくてもやられる」
「土地収用に関わる案件でも潰される」

 という恐怖を「諸侯」に与えたのではないかと思います。

 特に後者が重要です。陳良宇の罪状は「社会保険基金を流用した」などでしたが、土地収用での不正ならどの地方勢力も身に覚えがあるでしょう。特に中央から派遣された胡錦涛系の「雇われトップ」を体よく祭り上げてやりたい放題だった地元のボス格を緊張させるものだったのではないかと。

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 ともあれ陳良宇が上海市関連の役職を全て解任され、兼任していた党中央委員及び党中央政治局委員については「六中全会」で答が出るでしょう。

 台本はもう出来上がっているのでしょうが、党中央政治局委員から解任されるのは確実かと思われます。この陳良宇解任を口実に党中央政治局委員の陣容見直しや員数合わせが行われ、主導権を握る胡錦涛サイドが次世代の有力者を党中央政治局委員ないしは委員候補、あるいは党中央書記処あたりに滑り込ませる可能性があります。

 そして、陳良宇が党中央委員の地位まで失うかどうかは、現時点において上海閥の抵抗力がどれだけ残されているかのリトマス試験紙になるでしょう。

 ただ、過去の例に照らせば人事が100%「擁胡同盟」の思惑通り、となることはないと思います。得点差という意味ではより大差のあった1992年の第14回党大会でもトウ小平は抵抗勢力(保守派)に配慮したバランス人事を行わなければなりませんでした。

 今回も、もし本格的な異動が行われるなら上海閥ないしは地方勢力への配慮、そして党の長老格たちのご機嫌をとるため「太子党」と呼ばれる二代目政治家の抜擢が行われることになるかと思います。そこまで人を動かすのなら、駆け引きはやはり党中央政治局委員クラスが舞台となるでしょう。……とりあえず、陳良宇が党中央委員の地位を保てるかどうかを見どころのひとつに挙げておきます。

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 それにしても、独立王国・上海が解体されることで、従来の「高度成長最優先」が中央によって「成長率より効率重視」に改められることになります。昨春の反日騒動などでも垣間見られた「政治なんかより経済優先。とにかく利権」路線にも幕、ということになります。

 ……という訳で当ブログに登場したありし日の上海。

 ●怪文書。(2005/04/29)
 ●斜陽の広東王国に村民のハンストに上海の情報戦。(2005/09/01)
 ●外資に身を任せた上海は中央など眼中になし。・上(2005/11/01)

 進出している日本企業も色々大変でしょうね。担当者が代わるだけでも面倒なのに、窓口だった部門や有力なパイプ役が一夜にして消滅してしまえばもう途方に暮れるしかありません。山吹色を効かせた商習慣にまで影響が及ぶのかどうかはわかりませんが、様々な面で「粛清」のとばっちりを喰うことは間違いないでしょう。

 幸い当ブログにはコメント欄がありますのでどうぞどうぞ。愚痴という名のタレ込みは大歓迎です(笑)。




コメント ( 6 ) | Trackback ( 0 )



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コメント
 
 
 
曽慶紅が (通行人)
2006-10-08 00:04:57
胡錦涛派に寝返ったともっぱらの噂ですね。でも裏切る人間は信用できないな。そのうち御家人さんの大嫌いな温家宝とタッグを組んで胡錦涛追い落とし図ったりして。胡錦涛の国家主席は小平の指名だったって話ですけど、後ろ盾宋平が死んだら4人組のようになったりしてね。つか、毛沢東が一度失脚してその後文革で反撃したようなことを江沢民やらないかな。毛のようなカリスマは無いけど。そのほうが中国2500年の合従連衡の伝統っぽくて面白そう。
 
 
 
経済への影響は? (ささらい)
2006-10-08 00:26:36
 上海閥を制し権力基盤を強化した胡錦涛が反日強硬派を押さえ込み対日関係改善に向かう、というのはある程度予想できた事でしたが、予測できないのは「効率重視の経済」にハンドルを切った後の中国経済の行方ですよね。ソフトランディング出来るのかどうか。

 権力闘争を有利に進める胡錦涛政権ですが、今後の経済運営次第ではまたどうなるのか分からないですね。
 
 
 
日中関係の改善を希望しています (アハハな母)
2006-10-08 07:24:19
総理の戦犯と国内法云々の発言に驚き、良く知らなくてはと、拝見させていただきました。大変参考になりました。

又、寄らせてください。
 
 
 
Unknown (popper)
2006-10-08 19:03:50
このことが日本にとってプラスになるのか、そうでないのかも、機会があれば解説お願いします。一応コキントウは知日派なんでしょう。
 
 
 
反日から(一応)知日派の戦略へ? (dongze)
2006-10-09 08:13:13
御家人さん、



ある意味(無視していりゃ良かった)「反日」派より厄介なコンビですよね。胡&曾は。

力押しで何をしたいのかわかり易い状況から、(経済界の謀反人らがあれこれ工作する)水面下での対日工作が大増殖しそうで、、、ああやだやだ。経済界と一部政界に聞く「アースレッド」をほしい気分。(笑)
 
 
 
Unknown (御家人)
2006-10-13 16:55:59
>>popperさん

 日本にはプラスにならないと思います。中国指導部が一枚岩になると、小粒な政争で足を引っ張り合ったりして時間を浪費することがありません。長期的・戦略的な方策を練りやすくなるので、対日外交にも腰を据えて取り組むことができるようになります。

 隣国の政情不安は日本にとって必ずしもプラス要因になるとは限らないのですが、現在までのような、相手をKOできないレベルでの、内乱に発展する恐れのない小粒な綱引きを繰り返してくれる方がありがたいように思います。
 
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