日々是チナヲチ。
素人による中国観察。web上で集めたニュースに出鱈目な解釈を加えます。「中国は、ちょっとオシャレな北朝鮮 」(・∀・)





 ちょっと妙な動きが出てきました。尖閣問題です。政争を反映したものなのかどうか、現時点では判断に迷うところなので本当はあと数日寝かせておくべきネタですが、まあとりあえず速報しておきましょう。

 尖閣諸島、中国語では「釣魚台」で、その領有権を主張し「釣魚台」防衛を呼号するのが「保釣」運動(保衛釣魚台運動)です。呼号するだけでなくボロ漁船をチャーターして尖閣諸島への上陸を試みては海上保安庁の巡視艇・巡視船に阻止される、といったことを繰り返していたのを御記憶の方も多いかと思います。

 その「保釣」を支持する連中の拠点が「愛国者同盟網」と並ぶ反日サイトの総本山、「中国民間保釣連合会」ですね。糞青(自称愛国者の反日教徒)が蛆のようにわんさか湧いている場所です。この組織の会長は少し前に、

「民間の対日戦時賠償訴訟を中国国内で立ち上げよう」

 と活発に動いていた童増です。珍獣(プロ化した糞青)の第一人者であり、代表的な反日活動家。……そういえばあの訴訟活動は続報がありませんが、一体どうなったのでしょう。

 あの活動は「反胡連合」(反胡錦涛諸派連合)が上海閥を中心として「擁胡同盟」(胡錦涛擁護同盟)に対し華やかな連続攻勢をかけていた時期に、そのひとつとして放たれた一撃だったと私はみていたのですが、「反胡連合」が最近凹みがちなので童増の活動も尻すぼみになってしまったのでしょうか。一応関連エントリーを挙げておきます。

 ●政争勃発か?対日戦時賠償請求、中国での訴訟実施へ。(2006/04/03)
 ●対日賠償請求問題――これはいよいよ香ばしい。(2006/04/04)

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 尖閣問題に話を戻しますと、いわゆる「保釣」分子というのは香港にも台湾にもいます。もちろん船を出したりもします。ただ顔ぶれから察するに騒ぎ屋中心で、「七・七」「九・一八」といった反日記念日に香港の日本総領事館前で抗議声明を読み上げたりする連中です。

 もちろん騒ぎ屋ですから、報道陣の前であることはお約束。だって連中にとっては一種の選挙運動ですから。船を出すのもそうした行動の一環で、マスコミ露出を狙ったより大仕掛けなパフォーマンスといったところでしょう。「反日」「保釣」だけでなく「天安門事件の名誉回復を!」なんて叫んだりもしています。

 で、今回は香港の関連組織「保釣行動委員会」が6月8日に記者会見を開き、10月までに「保釣2号」という船で尖閣諸島上陸を目指すと発表しました。「保釣」で散った烈士・陳某の10回忌記念だと香港紙は報じています。

 ●「保釣2号」10月にも釣魚島へ「邪魔する奴は中国人じゃない」(明報 2006/06/09)
 http://hk.news.yahoo.com/060608/12/1ol2n.html

 大陸(中国本土)の人間を「野蛮だ」「汚い」「教養に欠ける」などと見下している香港人が、こういうときだけは「中国人」になってしまうので不思議です(笑)。この烈士とされる陳某にしても、その死にっぷりがいかに無智で情けなかったかは下記のエントリーをどうぞ。まさに笑点を地で行く素晴らしさ。いや昇天でしたか(あっ山田君何するんだ私の座布団を……)。

 ●香港で経験した「保釣運動」の馬鹿さ加減(2004/08/04)

 それでも現在の香港がまだ健康的なのは、こうした活動が広範な市民から支持されている訳ではないことです。具体的には活動資金カンパには消極的ということ。今回の記者会見も、実は「保釣2号」をチャーターするのには資金不足のため、「中国人」という旗印を仰々しく持ち出して市民にカンパを呼びかけたものなのです。

 社会にある種の閉塞感が充満していれば、こういう馬鹿騒ぎがもてはやされて10年前のように火がつくこともあるでしょう。少なくとも現在の香港社会はそういう状態にない、ということです。

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 ともあれ「保釣」。香港でそういう動きがある、ということはいいのです。問題は「再び船を出す」というこのニュースが中共政権下でも流されたこと。まずは前述の童増率いる「中国民間保釣連合会」が6月8日、つまり記者会見が行われたその日のうちに掲示板で詳報しました。

 http://www.cfdd.org.cn/bbs/dispbbs.asp?boardid=90&star=1&replyid=67802&id=39714&skin=0&page=1

 このスレはいまなお健在です。都合の悪い内容だと当局に間髪入れずに削除されるのが常なのですが、今回はなぜか見逃されています。

 さらに昨日(6月12日)になって中共系通信社・中国新聞社が「米国の華字紙の報道によれば……」という形で記事に仕立て上げ、このニュースを中国国内メディアに配信したのです(2006/06/12/10:58)。

 http://www.chinanews.com.cn/news/2006/2006-06-12/8/742578.shtml

 当然のことながら大手ポータル「新浪網」はじめ多くのニュースサイトがこの記事を掲載しました。とうとうマスコミも動き出した次第です。

 ただ、国営通信社の電子版「新華網」や『人民日報』電子版の「人民網」、また胡錦涛・総書記の御用新聞である『中国青年報』やその電子版、さらに「擁胡同盟」の主力とみられる解放軍主流派が掌握している人民解放軍機関紙『解放軍報』も、その電子版ともどもこのニュースを報じていません。

 このあたりは上述した童増による訴訟活動や江沢民・前総書記が母校の上海交通大学を視察したときのメディアの反応に似ています。どうもキナ臭い、といったところです。

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 今回の一件、冒頭に書いた通り今回は速報扱いですし材料も多くないので大きく踏み込むことはできません。ただ単純に考えて「どうしていま尖閣?」という疑問が湧きます。日本側の報道(共同電)ではありますが、3月31日の時点で、

「日本の指導者がA級戦犯を祀っている靖国神社参拝をやめるなら首脳会談をする用意がある」

 と言っていた胡錦涛が、

「機が熟せば訪日する用意がある」

 とまで姿勢を軟化させてきています。しかも「機が熟せば」であって「靖国参拝」といった固有名詞は出てきません。

 http://hk.news.yahoo.com/060612/3/1oodr.html

 他方、日本による経済制裁ともいえる対中円借款(ODA)今年度分凍結が解除になる見込みといった歩み寄りムードが表面的には日中間に漂っています。さらに尖閣諸島についていえば、領有権争いを棚上げにして、と言い出したのは他ならぬ中国側なのです。

 それなのにどうしていま尖閣?ということです。「中国民間保釣連合会」の関連スレが削除されないのも、中国新聞社から関連記事が配信されたのも、政治勢力の後ろ盾あってのことでしょう。

 理論闘争で敗北した観のある「反胡連合」が攪乱策に出たのか?……とか、「反胡連合」のうち軍非主流派など電波系対外強硬派の画策か?……といった邪推ができるかも知れませんが、やはり裏付ける材料がないので現時点では文字通り邪推のままです。

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 この1年余り、「中国民間保釣連合会」は何度か尖閣諸島への船出を試みているのですが、その都度警察当局がメンバーを連行するなど実力で阻止し、「保釣」運動は封殺された状況が続いています。その理由は船出を許すことで日中関係がさらに複雑なものになることを避けようとした、というのがまずあるかと思います。

 さらに、毎回ボロ漁船が尖閣近海で海上保安庁に包囲されて「公開処刑」されています。中国代表(ボロ漁船)は護衛なしで見殺し、ということになりますから、その惨めさに国民感情が刺激されます。鉾先は政府だけでなく「海軍は何をしているんだ」という声が軍部にも寄せられます。これは兵員の士気に響くでしょう。

 国民にしても、同じことがまた起きれば自発的な反日活動が生起しないとも限りません。昨年10月の小泉首相による靖国神社参拝に際しても参加者十数名の「なんちゃってデモ」を一度やらせるだけにとどめ、「SAYURI」まで公開禁止にするほど神経質な胡錦涛政権です。社会状況が悪化しているなか、どう発展するかわからない自然発生的なムーブメントの出現は絶対に避けたいでしょう。

 そこで次に船を出すときは海軍はともかく、少なくとも巡視船の護衛付きで、ということになるでしょうが、そうなると日本側との接触で不測の事態になる恐れがある。胡錦涛政権としては、現時点ではそういうリスクを回避したい。だから「保釣」運動は実行する気配があれば即封殺、という姿勢を堅持してきたのだと思います。

 10年前の香港はまだ英国の植民地でしたから、中国は我関せずで済ますこともできました。でもいまは違います。現実に則した対応としては、空気を読めない香港の「保釣行動委員会」に裏から圧力をかけて船出企画を断念させるのが妥当なところでしょう。とはいえ中国国内でもニュースが流れたように「保釣行動委員会」にも政治的保護者がいる筈ですから、胡錦涛政権にそれができるかどうか、ということになります。

 「どうしていま尖閣?」という疑問は解けないままですし、何やらキナ臭い中国国内メディアの動きが今後どういう展開をみせるかにも注目ですが、ともあれ数日は転がしておいて続報待ち、ということになりそうです。



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