千歳市は2017年度、手話を言語として位置付けて聴覚障害への理解を促す「手話言語条例制定」の検討を進める。併せて千歳市障がい者地域自立支援協議会(荒洋一会長)も委員が全国の条例制定状況を調査・研究し、市に対して意見を述べるため、手話言語条例専門部会を新設した。市は今後、部会で出される関係者からの意見を聞きながら条例案の内容をまとめる方針だ。
手話言語条例は、手話を意思疎通や情報獲得の手段である言語として位置付けることで、手話や聴覚障害への理解の促進と差別解消を目的とする。全国では13年10月に鳥取県が最初に制定した。道内では同年12月に石狩市が全国の市町としては初めて制定。2月28日時点で登別市、室蘭市など全国9県65市町が条例化し、隣の苫小牧市も4月の施行を目指している。手話のほかに要約筆記、点字などの意思疎通も含めた情報・コミュニケーション条例として制定した自治体もある。
障害者基本法でも3条3項で「全て障害者は、可能な限り、言語(手話を含む)その他の意思疎通のための手段についての選択の機会が確保されるとともに、情報の取得又は利用のための手段についての選択の機会の拡大が図られること」として手話を言語に位置付けている。
「手話言語条例の制定を検討したい」。千歳市の山口幸太郎市長は昨年9月、千歳市内で開かれた全道ろうあ者大会の懇親会のあいさつでそう述べた。今月1日に開会した第1回市議会定例会でも市政執行方針の中で条例制定に向けて準備することを表明。手話に関わる関係者の期待は大きく、市内の手話通訳者、川北美由紀さんは「空港がある千歳はいろいろな人が来るまち。障害がある人にも優しいまちであってほしい。千歳の特色がある、いい条例ができれば」と期待する。
手話が言語と位置付けられることは、聴覚障害を持つ当事者の願い。千歳聴力障害者協会の佐藤義典会長は制定の動きに対して「私が条例を求める原点は、親子のコミュニケーション」と話す。30、40年ほど前、ろう学校では手話ではなく、口の動きで言葉を読み取る「口話(こうわ)」を指導した。だが、口話も正確な意思疎通ができるわけではない。佐藤会長自身、障害のない親とうまくコミュニケーションを取れなかった経験がある。「手話が言語として社会的に認知されていれば円滑にコミュニケーションができたはず。条例でさらに手話への理解が広まれば」と制定を期待する。
市障がい者地域自立支援協議会はこのほど、手話言語条例専門部会を設置。部会には川北さんや佐藤会長らも加わった。千歳聴力障害者協会や千歳手話の会などの関係者ら11人の委員で構成し、部会長には千歳市社協の小玉あけみ地域福祉課長が就任した。
今後、部会では各自治体の条例内容などを調査して必要な情報や資料を収集し、委員が市に対して条例に関する意見を述べる。市は部会の意見を参考に条例内容をまとめる方針で、18年4月の施行を目指し、千歳の特色がある条例内容を検討する。
手話でやりとりが交わされる、千歳手話の会の会合
(2017年 3/13) 苫小牧民報