重い知的障害と自閉症があり、障害者支援施設「明星学園」(飯田市駄科)に入所している前田啓子さん(27)が、絵本「ありがとうの花」を出版した。感謝の気持ちを伝える大切さを、豊かな色合いの絵や文で表現した。
絵本はA5判、十七ページ。丘の上に咲く「ありがとうの花」は、「大事な時」にみんなが採りに行く花。うまく感謝を伝える自信がなくても、勇気を持って「ありがとう」と言って花を渡せば、相手は笑顔になる。そして自分も幸せに-。そんな内容を、パソコンを使い、色とりどりの動物を登場させて表現し、約八カ月かけて完成させた。
施設職員によると、作品は、多くの人に支えられ、気持ちがすさんだ日々を乗り越えた前田さんの経験が基になっているという。
約十年前に同施設に入所。職員の話では「当初、嫌われたくない、期待に応えたい-という気持ちが強かったせいか、思い通りにならないことがあると、周りの物を投げたりすることもあった」という。
宮下智園長(62)らは「嫌なことを頑張らなくていいよ」と伝え続けた。少しずつ落ち着いてきたころ、職員の支援で絵本を描き始めた。家族旅行を題材にした一冊目は二〇一五年に完成。「ありがとうの花」は、そうした生活の中で感じた職員や家族への思いを表現したようだ。
十二日、少し遅めの前田さんの成人式と出版パーティーが飯田市内であり、両親や施設職員らが祝った。職員らに感謝を伝え、両親から花束を受け取った前田さんは「うれしい!」ととびきりの笑顔。父親の勝さん(67)は「これからも楽しいことを一生懸命やってほしい」と願っていた。
絵本は三百円。明星学園で購入できる。(問)明星学園=0265(26)9456
感謝の気持ちを伝える大切さを表現した絵本「ありがとうの花」を完成させた前田さん
2017年3月14日 中日新聞
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