◆体験談 ユーモア交え
「車いすだと店員が目を合わせてくれない」「視覚障害者は鼻が敏感なので、おでんのにおいでどのコンビニか当てられる」。こうした“障害者あるある”を伝える紙芝居が完成した。ユーモアを交えながら、様々な障害を持つ人たちの特徴や日常の困りごとを知ってもらおうと、立川市のNPO団体などが作成した。小中学校での出前授業などで活用する予定だ。
紙芝居のタイトルは「障害者あるある~え?そんなことあるの?~」。身体・精神障害者だけでなく、高次脳機能障害や難病に苦しむ人たちからも寄せられた22の体験談の一つひとつをイラストにした。その内容を説明しながら、めくっていく。お笑いタレントがテンポ良くめくって笑いをとる紙芝居芸のイメージだ。
「車いすあるある」では、電車内でほかの乗客から電動車いすに寄り掛かられてしまう例などを紹介。「知的障害者あるある」では、電車に乗ると警戒されて周囲から人がいなくなってしまう例などを取り上げた。
当事者はなかなか訴えづらい悩みについて、パステルカラーを多用した柔らかいイラストで伝え、「視覚障害者は停電でも困らない」といったユーモアのある例も含めた。
ただ、紙芝居を見た人が「同じことをしてしまったかも」と後ろめたさを感じないよう、しゃべりで伝える解説に気を配った。車いすに寄り掛かられるケースでは「車いすは自分の体の一部と感じている人も多い」と理解を求めた上で、「満員電車では仕方がないこともあります。お互いに笑いにできる社会になるといいですね」などと言い添えることにしている。
制作の中心を担ったNPO法人「自立生活センター・立川」の理事長で、自身も車いす生活を送る奥山葉月さん(46)は、「障害者はかわいそうだねと思ってもらいたいわけでも、ドキッとさせたいわけでもない。誤解も招きやすいが、口だけでは伝わりにくい部分を紙芝居で補い、障害者も健常者も理解しあえる社会になればいい」と話す。
紙芝居は、同市が制定を目指している「障害のある人もない人も共に暮らしやすい立川をつくる条例(仮称)」作りにかかわる市内の複数のNPO団体や肢体不自由者の父母会などが協力して作り上げた。関係者らは、条例制定までに自分たちでできることとして作成を進めてきた。春頃から、小中学校の出前授業や地域の集会などで活用していく予定という。
紙芝居を制作した奥山さん(右)とイラストを描いたヘルパーの伊藤尚子さん