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ゴエモンのつぶやき

日頃思ったこと、世の中の矛盾を語ろう(*^_^*)

「みんなで」笑顔つなぐ ハンディ超えて交流

2016年09月27日 04時06分52秒 | 障害者の自立

 新宿区の明治神宮外苑で25日に開かれた「第15回ピポ・ユニバーサル駅伝」(毎日新聞社など後援)で、参加者は久々の日差しを受けながら、笑顔でたすきをつないだ。体や年齢のハンディにとらわれず、初対面のメンバー同士がチームメートとしてお互いを応援し合い、レース後はイベントを通して交流を深めた。 

 駅伝はNPO法人コミュニケーション・スクエア21(大塚公彦理事長)の主催。同区の小学1年、山口賢一さんは、父二郎さん(52)と一緒に出場した。ともに神経疾患があり、車いすでの参加。賢一さんは第1走者として笑顔でスタートし、頬を赤くしながらたすきを継ぎ、「疲れたあ!」と話した。伴走した母裕美さん(41)は「いろいろな人と交流できるので、刺激にもなる」という。二郎さんは「競技性は高くないが、重い障害の人も参加できるのがいい」と語った。

 都立光明特別支援学校(世田谷区)の生徒4人も出場した。丸山桃菜さん(17)は「新しいことに挑戦しようと思って参加した。出場して自分自身も変わったと思う」とはにかんだ。また、車いす利用者の山本薫風(かおる)さん(17)は「障害のある人、ない人の壁を取り払うため、こういう事業が広がれば」と期待を寄せる。レース後は、ダスキンのアジア太平洋障害者リーダー育成事業で来日中の研修生らと雑談を交わした。研修生は障害のあるインドやフィリピン、台湾などの出身者で、障害者福祉を学んでいる。

 伴走などでチームを支えたボランティアは、日本リハビリテーション専門学校(豊島区)の学生が中心となった。2年目の参加となった岡崎大晴(たいせい)さん(17)は「障害のある人とのコミュニケーションの取り方も学べるし、楽しみながら接することができる」と話した。

 交流イベントでは、パラリンピック正式種目の「ボッチャ」が紹介され、参加者らは専用ボールを的に向けて投げ楽しんだ。

 第1走者として元気よく走り出す山口賢一さん(手前)
 
毎日新聞   2016年9月26日

障害児への性教育 根強いタブー視に試行錯誤

2016年09月27日 03時44分35秒 | 障害者の自立

 健康や命の問題につながる性教育をどう進めるか、悩んでいる教員は少なくない。とりわけ、知的障害がある児童・生徒は発達の個人差が大きく、特別支援学級・学校では試行錯誤が続いている。8月に前橋市で開かれた全国性教育研究大会(全国性教育研究団体連絡協議会など主催)の分科会では、学校、保護者、医療機関と連携した効果的な取り組みが紹介された。

  理解力が1〜2歳児相当の小学校高学年の女児が、そろそろ初経を迎えるが、どう対応していいか分からない−−。

 前橋市立前橋特別支援学校の小・中学部の荻原宏美・養護教諭は、児童の母親からそんな悩みを打ち明けられたことがあると報告した。親の戸惑いを受け止めつつ、下着選びや生理用品の使い方を丁寧に説明したという。シングルマザーで男児を育てている母親の希望があれば、医師から直接、男子の成長について説明してもらう体制を整えているといい「個別に保護者と連携して対応することが大切」と呼びかけた。

 ●易しい言葉選び

 知的障害児にとって、異性との適切な付き合い方やマナーを身につけることは難しい。東京都港区立港南中学校の特別支援学級は、例えば「好きな人にひどいことを言ったり、嫌がることをしたり、からかったりするのはいいこと、悪いこと?」「好きな人のことばかり考えるのはいいこと?」といった具体例を示して、良いか悪いかを生徒に判断させている。

 理解を促すため、できるだけ易しい言葉で伝え、イラストや寸劇を取り入れている。生徒への問いかけなど授業の進め方に関して詳細な指導案を作り、教員間で共有する。桜田千恵教諭は「この活動を通し、自分の行動を省みて、人間関係のマナーを身につけてもらっている」と説明した。

 分科会の会場からはさまざまな質問が出た。神奈川県の特別支援学校の男性教員は「校内でパンツに手を入れたり、自慰行為をしたりする生徒にどう指導すればいいか」と尋ねた。

 これに対し、荻原養護教諭は「『ダメ』とは言わず、『恥ずかしいよ』『かっこ悪いよ』とその都度伝える。習慣付けることが大切」と話し、桜田教諭は「本人の心の平穏のために必要なのかもしれない。トイレの個室に促したり、家に帰ってからするよう伝えたりする」とアドバイスした。

 学校では、性についてタブー視する雰囲気は強い。都内の特別支援学校の女性教諭は「性教育の重要性は理解しているが、どこまで踏み込んでいいのか分からない」と打ち明けた。

 ●「不適切」で処分

 背景には、東京都立七生養護学校(現七生特別支援学校)で2003年に起きた問題の影響があるという。知的障害がある子どもの性的トラブルを防ぐために性器の模型を使うなどの独自の性教育をしていたところ、都教委が「不適切」と判断し、校長らを処分した。裁判で処分は取り消されたが、教育現場を萎縮させたといわれる。当時を知る女性教諭は「『性教育』と言うと、構える保護者もいる。『体を清潔に保つ方法や人間関係のマナーを身につけましょう』『子供の成長を一緒に喜んでいきましょう』と呼び掛ければ安心して協力してもらえる」と考えている。

 分科会の参加者からは「障害がある子どもにこそタブー視せず教えることが大事」との意見も多く聞かれた。

 ●身を守る知識

 一方、障害者の性的被害は深刻だ。東京の市民団体「DPI女性障害者ネットワーク」が11年度に障害がある女性を対象に実施した「障害のある女性の生きにくさに関する調査」によると、回答した87人のうち31人(36%)が性的被害を経験していた。前橋市の社会福祉士の女性は「自分の身を守るためにも性に関する知識は不可欠」と話した。

 分科会の司会を務めた高崎健康福祉大学の青柳千春准教授は「児童・生徒一人一人の発達や成長を見守ることは教育の基本だが、性に関しては教師と保護者の共通理解が特に重要になる。医療機関など地域との連携も効果的だろう」と話している。

より細かい配慮を

 文部科学省の学習指導要領によると、性教育は保健体育や特別活動の時間に学ぶことになっている。内容は、心身の健康や病気・けがの予防、望ましい生活習慣など多岐にわたり、小学校では4年生から思春期の体の変化を学び始める。中学では心の発達や不安への対処に重点が置かれ、高校でエイズなど性感染症の予防、妊娠や出産についても学ぶ。

 文科省はいずれの段階でも、発達の段階を踏まえること▽学校全体で共通理解を図ること▽保護者の理解を得ること−−が大切としている。

 特別支援学校も同じ学習指導要領に基づくが、障害の種類や度合いによって心身の発達の個人差や理解度の差が大きいため、東京都内の特別支援学校の女性教諭は「よりきめ細かい配慮が必要」と話す。

 特別支援学級・学校の性教育について意見を交わす教員ら
 
毎日新聞   2016年9月26日 

県内初 広報を手話動画配信

2016年09月27日 03時40分24秒 | 障害者の自立

 豊川市は10月1日から「広報とよかわ」の記事の一部を手話で伝える動画の配信を本格スタートさせる。耳の不自由な人たちが行政情報を正確に知る手立てとして期待される。市職員によると、自治体の広報誌が手話動画で配信されるのは県内で初めて。

 手話はできるが文字が読めない聴覚障害のある人たちに、生活するうえで必要な情報が載った広報の内容を知らせようと6月頃、豊川市ろうあ者福祉協会(ろう協、遠山喜久一郎会長)が市に相談。ろう協が動画を制作し市のホームページから配信することとなった。

 ろう協では、豊川手話動画制作委員会を立ち上げ、現在は7人が活動する。広報からの情報選びから、伝わりやすい手話表現の選択、出演、撮影まで障害者と健常者が協力して全てをこなす。

 試験的に8月から、「国民健康保険料」や「救急車の適正利用」などの記事を動画で提供したところ、200回を超えるアクセスがあるものもあった。10月号では、大切な「防犯特集」や「下水道利用」について配信する。

 23日には市社会福祉会館で10月用の撮影が行われ、同市の東三河聴覚障害者支援事業所「笑おう舎」で送迎スタッフをしながら聴覚障害者向けのホームヘルパーをしている実行委メンバー、石塚メイ子さん(38)が、持参のビデオを前に何度もやり直ししながら仕上げていった。

 聴覚に障害がある石塚さん。読むことができない高齢者から「勉強して読める人はうらやましい」などという言葉を受け、「自分は何が手伝えるか」と考えるようになった。思いついたのは手話動画の配信だった。

 パソコンを使えない高齢者たちは「笑おう舎」に集まって一緒に動画を見ているという。遠山会長は「市外にも広めて、ろうあ者が暮らしやすいまちになってくれたら」と期待する。

2016/09/26   東海日日新聞


手話の魅力 劇や歌で

2016年09月27日 03時37分08秒 | 障害者の自立

◇倉吉でパフォーマンス甲子園

◇熊本聾学校V 県勢4校入賞逃す

 手話への理解と普及を図ろうと、第3回大会が25日、倉吉市駄経寺町の倉吉未来中心で開かれた「全国高校生手話パフォーマンス甲子園」。予選を突破した20チームの生徒らが、手話を交えた歌やダンス、演劇などを披露。会場を訪れた秋篠宮家の次女佳子さまを始め、約1500人の来場者からは、各チームに大きな拍手が送られた。(古賀愛子)

 各チーム8分間の持ち時間の中で演技し、手話の正確性と分かりやすさや、演出が審査された。優勝には、4月に発生した熊本地震の経験を基に、災害に負けない勇気や家族との絆などを表現した熊本聾(ろう)学校(熊本)が輝いた。

 県内からは、3年連続出場の鳥取聾学校と境港総合技術高、2度目の鳥取城北高、初出場の米子高の計4校が出場。いずれも入賞を逃したが、練習の成果を発揮し、晴れ晴れとした表情を浮かべた。

 米子高は、保育士を目指す3年生らが、童話「赤ずきん」の劇を披露した。手話は、授業で五十音を学ぶ程度だったが、「せっかく学ぶのだから、みんなの前で披露しよう」と出場を決意。子どもへの読み聞かせにも使える赤ずきんを題材に選び、6月から練習に励んだ。3年田中幸喜さん(17)は初出場ながら選手宣誓の大役を務め、「保育士になっても、手話を使って障害のある子どもや保護者ともコミュニケーションをとりたい」と満足そうだった。

 鳥取聾学校からは、2年浜津志織さん(17)が一人で出場し、「鳥取や手話に興味をもってほしい」と、因幡の白うさぎ神話の劇と伝統の傘踊りを披露。「手話が『みんなの前で表現する』ということを可能にしてくれた。ありがとうという気持ちでいっぱい」と笑顔を見せていた。

 境港総合技術高は、福祉科で学ぶ生徒らが、ろう者の講師や発達障害の子どもたちとの交流から感じた、障害者への理解や命の大切さを歌とダンスで表現。鳥取城北高ボランティア部の生徒らは、相手を笑顔にできる手話の魅力を、忍者に扮(ふん)し、コントで表現した。

 ◇年々レベルアップ

 大会を終え、演出家で俳優の庄崎隆志・審査員長は「それぞれのチームに個性があり、エネルギーが伝わってきた上、年々レベルが上がっている」と講評。「大会に高校生が集うことが、手話の魅力やろう者の世界を知る人が増えるきっかけになれば」と話していた。

2016年09月26日 Copyright © The Yomiuri Shimbun

「快」をささえる難病ケア

2016年09月27日 03時32分03秒 | 障害者の自立

中山 優季氏(東京都医学総合研究所 運動・感覚システム研究分野難病ケア看護プロジェクト副参事研究員)に聞く


 「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法),「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(障害者差別解消法)が2015,16年に相次いで施行された。難病を取り巻く社会環境が大きく変化する中,看護師はどのようにケアに取り組むべきか。『快をささえる 難病ケア スターティングガイド』(医学書院)の編者の一人である中山優季氏に話を聞いた。


――最初に「快」をささえるケアとはどのようなものか教えてください。

中山 快食,快便,快眠,快学,快遊,快服,快住,快働,快性といった,「快」を保障するケアのことです。人が生きるための根幹をささえるケアとも言い換えられるかもしれません。言葉で言うのは簡単ですが,難病においてそうしたごく当たり前のことを当たり前にするのは非常に難しいことなのです。

――「快」をささえるにはどのような看護をすれば良いのでしょうか。

中山 「これをやれば良い」とは明示できないのも難しいところですね。何が「快」かはケアを受ける患者さんが決めることですので,自分の看護がどう受け止められているのかを患者さんから引き出す必要があります。良かれと思って行ったケアを実際にどう感じているかを聞くのは怖くもありますが,フィードバックを受けていると,患者さんと協働してケアを行っているという充実感も生まれます。

難病ケアは全ての看護の原点

――中山さんは学生時代に行った看護助手のアルバイトがきっかけで難病看護に興味を持ったそうですね。

中山 初めて出会ったのは人工呼吸器を付けたALS患者さんでした。一方的に話し掛けていただけなのに,時折ニコッと微笑んでくださったことを覚えています。その患者さんの退院をきっかけに,有償ボランティアとして在宅療養もお手伝いすることになりました。今振り返ると当時は,1986年に東京都重度脳性麻痺者介護人派遣事業が始まり,1990年に在宅人工呼吸療法が診療報酬化されるなど,障害者施策や在宅医療制度が生まれ,難病ケアが大きく広がり始めた時期でした。

――卒後は脳外科と神経内科の混合病棟を経験したと聞いています。

中山 提供するケアのスパンが各科で大きく異なる点が興味深かったです。脳外科は展開が速く判断の遅れが命取りになりますが,治療さえうまくいけば病気は治ります。神経内科では治らない病と今後どのように付き合っていくか,先々を考えたケアを行いました。

――現在は研究所でさまざまな研究活動をなさっていますね。

中山 難病の特徴に,看護の研究成果が社会の仕組みや政策によく反映されていることがあります。近年では,訪問看護の「難病等複数回訪問加算」や「長時間訪問看護加算」などが実態調査の結果を反映してできました。難病法施行による難病患者の生活実態の変化も今後調査し,移行期間終了後に向けた政策提言をする予定です。

――研究の背景にはどのような思いがあるのでしょうか。

中山 何人ものALS患者さんと診断時から最期までお付き合いしてきた経験から,難病のやるせなさを何とかしたいという思いが核にあります。眼を動かせなくなっても意思を伝え続けることをめざした研究では,脳波や脳血流,括約筋などの目に見えない微細な生体信号を用いた方法の実用化を病理医や神経内科医と協働して進めています。神経難病は進行性で不可逆的だと言われていますが,括約筋の測定では2回目以降に筋力上昇が認められることがあります。病気自体の進行は止められなくても,廃用性の症状は克服できる可能性があるのです。

――患者の希望につながる研究ですね。

中山 とはいえ,「何かをできるようになること」を目標にするとつらさが増す側面も否定できません。手段の確立は大事ですが,難病ケアにおいてはそれ以外にも大切なことがたくさんあります。意思表示が全くできなくてもその人らしい生活をしていたり,春はお花見,夏はコンサート,秋は温泉など,季節の行事を一緒に楽しもうと周囲の人たちが集う豊かな生活が成り立っていたりする患者さんもいます。意思表示ができるうちから信頼関係を構築し,言葉以外の意思表示を全身での表現や醸し出す雰囲気などからも読み取り,「こうしたらうれしい」「この時期はこうしたい」といった人となりを含めて推し量れる関係を築くことが難病ケアの醍醐味なのだと思います。

 難病には急性期のようにダイナミックな変化をする時期もあれば,手足が動かなくなった後の生活をささえる長い慢性期もあります。そうした意味でも,難病ケアは全ての看護の原点とも言えるのではないかと感じています。

自分らしさを取り戻す在宅ケア

――難病においても在宅移行の必要性が指摘されています。病棟看護師が支援すべきことを教えてください。

中山 病院が一方的に退院支援するだけでは,患者さんの意識が「お客さん」のままで自立できません。患者さん自身が在宅療養への意欲を持てるよう,似た境遇・環境の方と知り合える場を作ると良いと思います。また,医師が病状の進行や将来の生活のことを十分に伝えていても,重大な意思決定の局面になってから「そんなことは聞いていない」と言われることはよくあります。現在,ALS外来における看護機能に関する研究も行っています。その中では,看護師が医師の説明と患者さん・ご家族の理解の齟齬を補う役割を果たすことで,その後の意思決定が大きく変わる経験をしています。

 もちろん,病院の環境が患者さんにとって「快」なのであれば無理に退院させる必要はないと思います。しかし実際に退院後の生活を見ると,自分らしさを取り戻す在宅の環境に魅力を感じます。在宅のことは病棟看護師には関係ないと思われがちですが,患者さんの持つ可能性を知ることで病棟でのケアも変わるのではないでしょうか。

「何でもできる」からチームをコーディネートできる

中山 在宅では,看護ケアの実施に加え,多職種チームをコーディネートする役が看護師には求められます。ケアにかかわる職種が多岐にわたりますし,職種によって受けている教育も異なります。能力には個人差があるので,一緒にケアを行いながら協働の仕方を模索していくことになります。

――どういった点を意識すると,うまくチームをまとめられるでしょうか。

中山 チーム全員が集まるカンファレンスなどを設定し,定期的に現状の共有と今後の方向性を確認することが重要だと思います。どんなに熱心にケアしても難病の進行は止められないため,カンファレンスなんて無駄だと言われることもありますが,より良いケアや進行後のケアを考えるきっかけは必要です。そうした機会を通して,共通の目的意識を持っていくことが重要なのではないでしょうか。

――ケア者と,患者さん・ご家族の役割分担はどのように考えるべきですか。

中山 患者さんと良い関係を築いているケア者は,「してあげる」ではなく「患者さんがしたいことを支援する」ケアをしています。患者さんの発信を聞いて,できることを判断していく。入院中などの早い段階からそうした関係を築けると良いと思います。

――近年のチーム医療で,看護師は他職種に役割を譲り渡してしまっていると指摘されることがあります。

中山 書籍の編集を共にした河原仁志先生(国立病院機構八戸病院小児科医長)は,難病ケアには看護学で育った看護師が絶対に必要だと述べています。看護の専門性は「何かができること」ではなく,「何でもできる」ことなのだと思います。例えば拘縮緩和のリハビリは,訪問PTが頻繁に来られる環境であればPTの役割ですが,そうでない場合は看護師の役割です。患者さん全体を見て何が必要かをアセスメントし,各職種に何を託すか,状況に合わせてすべきことを調節できるのが看護師なのです。在宅においては,患者さんやチームごとに求められることが大きく異なりますので,そうした役割が非常に重要だと思います。

――今後の課題を教えてください。

中山 家族介護に依存しないケアの実現に尽きます。現状では介護者がいない人は自宅に帰れません。各自治体が在宅難病患者の一時入院(レスパイト)事業を進めていますが,まだ数が少なく,かつ必要なときにすぐに入院できるわけではなかったり,在宅で使用している機器を全て持って行くくらいに大変だったりします。家族介護の負担減の観点からも,在宅・病院だけに限らない,「快」の住まいがあれば,その人らしい生活を送れる難病患者は増えるのではないでしょうか。

――最後に,書籍で特にここを読んでほしいという部分はありますか。

中山 全部と言うと欲張りですかね。川村佐和子先生による難病ケアのはじまりがこんなにわかりやすく書かれた文献は他にはないと思いますし,保健師の小川一枝さんは難病ケアの中での看護のアイデンティティを可視化してくれています。さらに,先駆的な実践の数々と和田美紀さんや山田隆司さんといった難病当事者の方々にもご執筆いただいています。

――指定難病が306疾患になり,神経難病以外の難病も増えましたね。

中山 新しい難病にはどのようなケアが必要なのか,看護師として考えていかねばなりません。難病看護はこれまで,患者数が少ないが故に携わる看護師数も少なく,外部の情報も限られた状況下で活動してきました。日本難病看護学会認定の難病看護師も今では201人にまで増えましたので,施設や地域の枠を超えて,事例や知識を共有することで困難解決のヒントを見いだしていければと思っています。

――ありがとうございました。

2016年9月26日   週刊医学界新聞

(了)


なかやま・ゆき氏
1993年東女医大看護短大入学,卒後東医歯大に編入学し,川村佐和子氏(現・聖隷クリストファー大大学院教授・看護学研究科長)の指導の下,難病看護を学ぶ。98年より東女医大病院脳神経センター勤務。2002年より都立保健科学大大学院。07年東京都医学総合研究所入職,15年より現職。編著に『快をささえる 難病ケア スターティングガイド』(医学書院)など。