◇告訴能力認定 支援者ら喜ぶ声
知的障害がある女性(31)の告訴能力(被害を訴える力)を認め、強制わいせつ罪などに問われた高千穂町の無職、飯干広幸被告(61)に懲役2年6月執行猶予5年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した21日の宮崎地裁の差し戻し審判決。被害者を支援する人たちや福祉関係者からは「いったん閉ざされた道が開いた」と喜ぶ声が相次いだ。
担当検事から勤務先で有罪の一報を受けた被害者の父親は「量刑より罪が認めてもらえたのがうれしい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。09年9月の1審・宮崎地裁延岡支部で「被害者に告訴能力がない」として検察官の起訴を無効とする公訴棄却判決が言い渡されたことから「差し戻し審の裁判官は娘のことを分かってくれるだろうか、心配だった」と話した。被害者をよく知る福祉作業所の職員は「差し戻し審の初公判後、本人に『テレビで(裁判の)ニュース見たよ』と複雑な表情で打ち明けられた。傷は癒えないけれど、泣き寝入りしたくない一心で立ち上がった思いが報われた。これを機に障害者への理解が深まれば」と話した。
森冨貴子・県手をつなぐ育成会長も「もう少し重い判決になるかと思っていた。1審判決で門前払いされたのがショックだった。司法は障害者の特性を理解し、相談体制を整えて、彼らの人権を守ってほしい」と語った。
1審段階で検察側の依頼を受けて被害者を精神鑑定し、「告訴能力あり」と認定していた精神科医(77)は「やっと被害者の主張が認められた。知的障害者が社会で安心して生活していける道が開かれた」と喜んだ。一方、1審と2審で告訴能力を巡って判断が分かれたことから「裁判官の考え方次第でこんなに判決が変わってしまうのか。司法は知的障害者の声や思いを、もっと大切に読み取ってほしい」と注文をつけた。
刑事訴訟法が専門の大久保哲・宮崎産業経営大教授は「今後、捜査機関による誘導がないことを裁判官が見極め、冤罪(えんざい)の可能性を排除した上で、できるだけ広く障害者の告訴能力を認めていくことが大事だ」と強調した。
宮崎地検の児玉陽介次席検事は「判決の内容を詳細に検討して、今後の対応を決めたい」とコメント。被告側の谷口純一弁護士は「執行猶予期間では最長の5年がつき、長いと感じる。ただ、性犯罪が重く罰せられる最近の傾向からすると実刑でもおかしくなかったので、妥当な判決だろう。執行猶予を求めてきた主張が認められたので、控訴する予定はない」と述べた。
毎日新聞 2011年6月22日 地方版
知的障害がある女性(31)の告訴能力(被害を訴える力)を認め、強制わいせつ罪などに問われた高千穂町の無職、飯干広幸被告(61)に懲役2年6月執行猶予5年(求刑・懲役2年6月)を言い渡した21日の宮崎地裁の差し戻し審判決。被害者を支援する人たちや福祉関係者からは「いったん閉ざされた道が開いた」と喜ぶ声が相次いだ。
担当検事から勤務先で有罪の一報を受けた被害者の父親は「量刑より罪が認めてもらえたのがうれしい」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。09年9月の1審・宮崎地裁延岡支部で「被害者に告訴能力がない」として検察官の起訴を無効とする公訴棄却判決が言い渡されたことから「差し戻し審の裁判官は娘のことを分かってくれるだろうか、心配だった」と話した。被害者をよく知る福祉作業所の職員は「差し戻し審の初公判後、本人に『テレビで(裁判の)ニュース見たよ』と複雑な表情で打ち明けられた。傷は癒えないけれど、泣き寝入りしたくない一心で立ち上がった思いが報われた。これを機に障害者への理解が深まれば」と話した。
森冨貴子・県手をつなぐ育成会長も「もう少し重い判決になるかと思っていた。1審判決で門前払いされたのがショックだった。司法は障害者の特性を理解し、相談体制を整えて、彼らの人権を守ってほしい」と語った。
1審段階で検察側の依頼を受けて被害者を精神鑑定し、「告訴能力あり」と認定していた精神科医(77)は「やっと被害者の主張が認められた。知的障害者が社会で安心して生活していける道が開かれた」と喜んだ。一方、1審と2審で告訴能力を巡って判断が分かれたことから「裁判官の考え方次第でこんなに判決が変わってしまうのか。司法は知的障害者の声や思いを、もっと大切に読み取ってほしい」と注文をつけた。
刑事訴訟法が専門の大久保哲・宮崎産業経営大教授は「今後、捜査機関による誘導がないことを裁判官が見極め、冤罪(えんざい)の可能性を排除した上で、できるだけ広く障害者の告訴能力を認めていくことが大事だ」と強調した。
宮崎地検の児玉陽介次席検事は「判決の内容を詳細に検討して、今後の対応を決めたい」とコメント。被告側の谷口純一弁護士は「執行猶予期間では最長の5年がつき、長いと感じる。ただ、性犯罪が重く罰せられる最近の傾向からすると実刑でもおかしくなかったので、妥当な判決だろう。執行猶予を求めてきた主張が認められたので、控訴する予定はない」と述べた。
毎日新聞 2011年6月22日 地方版