「白夜行」東野圭吾著、読んでみました。
「東野圭吾」21作目です。1973年に起こった質屋殺しを発端に物語りは進んでゆく。主要人物の「雪穂」と「亮司」と私の年齢が近いこともあり、自分が過ごした時代と重なることから、ところどころに書かれる「インベーダーゲーム」「トイレットペーパー騒動」「チャゲ&飛鳥のSAY YES」のような時代描写が懐かしくもあり、とても興味を持って読むことが出来ました。
この物語で数々引き起こされる犯罪にや策略に関して「雪穂」や「亮司」が絡んでいる状況証拠は書かれていて、彼らの「犯行」である事は明白なんですが、その犯行場面や「雪穂」と「亮司」の心理描写がまったく無いので、その核心に迫ってくるラスト近くまでイライラ感が募ります。
「RKのイニシャルのマフラー」で少しだけ2人の関係を仄めかす程度で、もっとも関係が深い「雪穂」と「亮司」の接触部分の描写もまったく無く、「刑事の笹垣」「探偵の今枝」をはじめとする第三者の想像・憶測でストーリーは展開してゆきます。
「雪穂」のその魅力的な容貌と、したたかさを武器に周りの人物を不幸に陥れて行く過程はドキドキさせられたし、「亮司」がコンピューターの可能性に気づき、それを商売にしたり、犯罪に利用し次々に成功さるあたりは興味深く読めました。
「雪穂の悲しい過去」と「迷宮入りした事件」の全容はラスト付近でようやく解るが、どうしてその後「雪穂」と「亮司」が犯罪や陰湿な行為を繰り返すようになったのかは全く書かれていない。個人的にはどうしてそうなってしまったのか理解できない部分が多い。
普通であればその秘密は2人で共有し、静かな人生を送って行くのではないだろうか。彼らのその後の行動を鑑みると、「迷宮入りした事件」ですら偶発的なものでない様に感じられ、もしかしたら二人とも「生まれながらの犯罪者」のような気さえしてきた。
いったい彼らは犯罪や陰謀や策略に手を染めながら掴んで行く「成功」の先に何を求めていたのだろうか。