「トキオ(時生)」東野圭吾、読んでみました。
「東野圭吾」22作目です。「グレゴリウス症候群」という難病に侵され死を迎えつつある「宮本 時生」、その瞬間に立会っている「父:宮本 拓実」が「母:宮本 麗子」へ、実は「若いころにトキオに会っている」という告白をする序章から物語りは始まってゆく。
若いころの「宮本 拓実」は「キャッチセールス」のエピソードで「根っからのワル」ではないことを示唆していが、生い立ちのせいもありかなり短期で捻くれた性格の持ち主。
そんな「拓実」は「トキオ」と出会い、恋人の「千鶴」が巻き込まれた事件と、「拓実の生い立ち」に関する謎を解くエピソードが絡らみ合いながらストーリーは進んでゆく。
果たしてこの物語に「汚職事件のエピソード」が馴染むかどうかは別として、作者の力量で上手いこと読者を惹きつけてゆく。「事件の解決」と「拓実の出生の秘密」が近づいて来るにつれ「トキオ」との係りで「拓実」が人間として大きくなってゆく様は読んでて気持ちがよい。
前回読んだ「白夜行」同様、「ピンクレディー」、「カツラノハイセイコー」、「サッチャー首相」、「日本坂トンネル事故」などなどのエピソードも懐かしさを感じられ楽しく読めた。
「拓実」が「実母:須美子」に二度目に会った時の台詞と「拓実」が「須美子」の濡れた目尻をそっとぬぐったシーンは、とってもベタなんですがグッと来てしまう。
序章の“もし、あいつの意識がもう一度だけ戻ったとして、私の声が聞こえるでしょうか”の台詞を最後にキチンと効かせているあたりは流石だと思った。途中はそれ程でもなかったが、最後はきっちり泣かせてくれるいい作品だと思いました。