風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

半焼の宮家跡

2018-08-24 17:52:26 | 昭和つれづれ

 旧宮家の敷地は広大で、道を下っていくと長屋があり、

本来宮家に仕えるひとたちの住まいであったと思う。

 私たち一家が官舎として与えられたのは、車道に面して格子窓のある門番のための家だった。

トイレはあったが風呂はなかった。

敷地は広かったので、家の横にドラム缶がおかれ、手づくりのすのこを敷いて風呂にした。

いうところの五右衛門風呂である。コツがあり、上手に入らないと火傷をするので、難しかった。

弟が言うには、あのころまだ表屋敷には元宮様が住んでいた、ぼく見たよとのことだが、

わたしには覚えがない。

別館の洋館があったが、ここは爆撃を受けていて、煉瓦の外観は残っていたが、中は空洞であった。

しかし地下に潜ると紋章のある椅子やテーブルなどが乱暴に積まれてあり、

わたしたち冒険ごっこで遊んだ。

ただし、親に見つかるとひどく叱られた。

危ない、どれもこれも崩れてきそうで確かに危なかった。立ち入り禁止のロープが張ってあった。

 


宮邸跡

2018-08-24 04:22:01 | 昭和つれづれ

 昭和22年に戦前の宮家のうち11宮家が皇籍離脱をした。

皇室財産の一部が国庫に帰属したのである。

その旧宮家の焼け跡が、わたしたちの引っ越し先になった。

つまりしばらく役所が管理していたので焼け残った一部が官舎になった時期がある。

広大な敷地であった。表門を入ると玉砂利が敷き詰められ、

表屋敷は焼けのこっていたが近づくことは禁じられていた。

別の入り口に門番の家があり、門番の家だから道路に沿った変形の間取りで、

そこに二年ほどわたしたちは住んだ。

今思えば、めったに経験することの出来ないところに住んだことになる。