昼日中の天神のど真ん中の歩道で、中年男性が横たわっていた。
いったん横を通り過ぎかけたが、気にかかる。
誰かなんとかしてくれないかしらと立ち止まって見ても、みんな足早に通り過ぎるばかりである。
しかし、体力気力のない八十ばあさんが、声をかけて、もしも居直られてなにかあっても困る。
誰かいないかなあ、と目の前の事務所から出てきた白ワイシャツ姿の男性に、
すみません、と事情を話した。
う~~ん大丈夫じゃないですかあ、と彼は渋ったが、それでもばあさんの熱意に負けて、傍により、
大丈夫ですか? と声をかけてくれた。
横たわっていた男性はその声にむっくり起きあがった。
大丈夫でしたね、と笑顔の白ワイシャツの男性に、ありがとうございました、と礼を言ったのはわたしで、
路上から起き上がった男性はなんだか迷惑そうに黙っていた。
でも、いいのいいの、無事を確認できたのだから。