風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

子育て

2010-06-29 15:13:58 | 家族
 向こうから、幼稚園児くらいの女の子と、母親らしい二人連れが歩いてきた。
住宅地の中の、あまり広くもないごくありふれたアスファルト道路である。

  並んで歩いていた母親が、ほら、そこを歩いたらいけません、と女の子に注意した。
マンホールの丸い鉄製の蓋を踏むなと言っているのだ。
 ほう、と感心した。

 風子ばあさんも、たいがい用心深い。
子供を育てる間、棒のついた飴をなめさせたことはない。
よその子供のことでも、棒のついた菓子を食べながら歩いているのを見ると、もし転んで、咽喉でも突いたらと恐ろしい。
 
 ストーブの上に薬缶などもおかなかった。
しかし、歩いていて、マンホールの蓋を踏むなと言った覚えはない。
 ばあさん自身、多分、いつも何気なく踏んでいる。
なるほど、蓋がある以上、それがずれることも浮くことだって、ないとはいえない。
踏まなければゼロの危険を、わざわざ冒すことはない。

 賢いお母さんである。

 しかし、そうやって数えあげればこの世は危険なことばかりである。

 ばあさんは、うちの子供たちが小さいころ、汚れたものを触ろうとすれば、バッチイヨ、といい、高いところに登ろうとすればアブナイよ、と言った。
 我が家の息子どもが、大胆不敵な大物になれなかったのは、バッチイヨ、アブナイヨ、と言われ続けたせいかもしれない。

 今さら、謝りようもないが、すんでみれば数々お詫びの言葉を述べたい子育てではあった。
コメント
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