風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

2010-06-28 13:45:10 | 歳月
  風子ばあさんの友だちに、よく弟の自慢をするばあさんがいる。
一人暮らしの彼女の近くに住んでいて、なにくれとなく面倒をみてくれるのだという。
 電球の取り換え、植木の剪定、買い物時や病院通いのときの車の運転……。

 スポーツが得意で、今も登山や水泳を続けているという。
 弟がね……、というときの彼女の顔は、どこかうっとりとして見える。
 いいわねえ、と風子ばあさんは羨ましい。

 彼らの姪の結婚式があり、このときも、弟が迎えに来て式場まで連れていってくれたという。
  
 写真が出来たのよ、ほら。
 花の飾られたテーブルには数人のジジババが並んでいた。
 
  えっ? どれ、弟さんは?
  これよ、これ、弟。

 健康で中肉中背と聞かされていた弟は、風子ばあさんの連れ合いとあまり変わらず、口元にも首筋にもたっぷりと皺のあるただのじいさんだった。
 考えてみれば、友だちは、風子ばあさんと同じ年、弟は三つ下というのだから、何も不思議な話ではなかった。