風子ばあさんのフーフーエッセイ集

ばあさんは先がないから忙しいのである。

健康体操

2010-06-26 11:06:34 | 健康
 いつ死んでもいいというくせに、風子ばあさんはもう二十年来、健康体操のサークルに在籍して体操に励んでいる。

風子ばあさんも年寄りだが、サークルにはもっと年長者がいる。
その高齢者の一人が、来週は休みますと言う。

 広島の息子が、九十の祝いをしてくれるというので行ってきます、と言われて、風子ばあさんは、思わず、え? 噓! と叫んだ。
 彼女はとても九十には見えない。
八十を越しているのは知っていた。
八十二、三になったかなと思ったのは、いつのことだったろうか。

しかし、あれからまた、思いがけずに歳月が過ぎていたのだ。
 ええ、ほんとです。もう九十です。
彼女は、にっこりと微笑した。
 美しい人である。
スタイルもいい。

ズボンは太もものあたりをちょっとミシンで狭くしたら足が長く見えるという工夫もしている。
筋力をつけるためにわざわざオモリをつけた靴を履いたりする。
昆布入りのケーキや、シイタケ汁を飲んだりもしている。
努力のたまものである。
サークルでは、年下の人に交じって膝の屈伸も腕立て伏せだってやってのける。

 すごい! カッコいい、とてもその齢には見えない……しばらくみんなの賛辞が続いた。

 後ろで、彼女に聞こえないように、こっそり、囁くひとがいた。
 あれはねえ、彼女が未亡人だから出来るんです。
一人暮らしは気儘で、ストレスもありませんしねえ……。
 
ため息まじりのその人は夫と二人暮らしなのである。