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船戸与一『満州国演義』

2009年04月01日 | 本と雑誌
Manshukokuengi
 満州国演義
 船戸与一 著
 新潮社 発行
 *現在第5巻まで刊行。

 「満州国」とは、大日本帝国が中国東北地方を領有するためにしくんだ傀儡国家です。
 中国ではこの国名を表記するとき、偽「満州国」とか、カッコ付で「満州国」とあらわしています。

 そもそもアジア太平洋戦争のきっかけは、日本が満州を領有したことがきっかけで、そこから1945年の敗戦まで15年にわたる長い戦争の時代が始まったのです。

 この小説は、満州で最初の大きな事件である「張作霖爆殺事件」から始まっています。
 立場の異なる4人の兄弟を物語の進行係として、それぞれの視点から見た「満州国」の姿を描いていきます。
 外交官僚の長男太郎、馬賊になった次男の次郎、帝国軍人の三男三郎、そして、末っ子の四郎は無政府主義の劇団に所属し、不安定な生き方をしています。

 そして、それぞれの立場から見た「満州国」が、現在に残された資料だけで書かれたとは思えない克明さで描かれています。
 太郎と三郎の立場の違いによる葛藤や、関東軍(満州駐留日本軍)の謀略にいつの間にか巻き込まれていく次郎の人生は、「満州国」と関東軍の裏を知るとてもわかりやすい資料でもあります。

 表現として面白いのは、重要な政府間、国際間のやり取りなどを、酒の席や食事をしながら情報交換と言うかうわさ話のように語らせています。
 したがって、酒を飲む場面や食事の場面がかなり多い。

 また、現在ではかなり大物とされている人物、たとえば、東京裁判で死刑判決を受けた板垣征四郎や東洋のマタハリと言われた川島芳子、後に沖縄に転進して参謀長となる長勇などが、じつにさりげなく登場します。
 
 もちろん、満州で起きたさまざまな事件をすべてコミンテルンに罪を着せた田母神論文のようなでたらめは一切ありません。

 この本は、G出版の社長が読み終えた巻から順に、こちらにまわしてくれていましたが、彼は3巻目の途中で止まってしまい、2巻目を読み終わったぼくの元に、「おさきにどうぞ」と現在まで刊行済みの5巻までを送ってくれました。

 ぼくも、キリの良いところで読んでおかなければならない他の本を間に挟むつもりなので、そうスタスタとは行かないと思うのですが、「ごゆっくり」ということなので、お言葉に甘えて時間をかけさせてもらうことにしました。

 さて、現在2巻を読み終えたところですが、5巻になると、満州から南下して南京事件へと話が進みます。
 今後どのような展開になるのか、何巻まで続くのか、たのしみです。

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