ひまわり博士のウンチク

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電氣ブラン~久々のカミさんネタ

2009年11月07日 | 食・レシピ
Denkibran
 
 テレビを見ていたら、池袋の「駄菓子バー」のレポートがあって、店内になにげなく「デンキブラン」と書かれていたのが目に入り、飲みたくなった。
 わざわざ池袋まで出かけなくても、買って家で飲めばいい……のだが、それが容易には入手できない。近所の酒のバーゲン店や西友の酒売り場には売っていないのだ。
 そこで、ネットでシャトーカミヤのホームページを開いたら、即日配送してくれるという。今日頼めば明日飲めるというわけだ。
 
 だもので、昨日注文したら今日届いた。
 
 電氣ブランとは、浅草にある神谷バーの創業者、神谷伝兵衛が作ったカクテルである。酒精度は30度と40度の2種類ある。ぼくが注文したのは40度のほう。
 神谷バーでは30度のものが「デンキブラン」で40度のものが「電氣ブラン」である。
 いずれも高級な酒ではない。ドンペリだの高級ワインだのを気取っている御仁には飲めたものではないだろう。

 ワイン、ベルモット、ジン、キュラソーなどをもとに作られているが、その処方は秘伝だそうだ。
 電氣ブランとは何とも不思議な名称だが、この酒が造られた明治のころは電気が非常に珍しく、しかも“ハイカラ”であった。つまり、新しいブランデーという意味で、「電氣ブランデー」とつけた。しかし、ブランデーではないので商標登録できず、「電氣ブラン」になったという。
 今ならさしずめ「IT××」といったところか。
 
 ぼくが子どもの頃に、配達に来る酒屋のあんちゃんの自転車に乗せた箱に、「デンキブラン」と書かれていたのを覚えている。
 「ねえ、“でんきぶらし”ってなあに?」
 「“ぶらし”かよ。“でんきぶらん”っていうんだよ」
 すると横から父親が、
 「うまいのか?」
 「そうでもないっす」
 「そんなこと言ったら売れないじゃねえか」
 「でも、ウソ言って後で叱られちゃあね」
 「なんでデンキブランなんだ」
 「電気に痺れたみたいにビリビリッてくるからですよ」
 飲んべえの父親が知らなかったのも、いま思えば不思議だ。
 この酒屋のあんちゃんの言うことは、まんざら間違いではない。実際、「電気みたいにビリビリッとするから」と言われていたのだ。
 あくまで巷の噂であって、事実ではないことが後でわかった。
 
 「神谷バー」と「電氣ブラン」は、小説や映画など、様々な文芸作品に登場する。浅草をよく描いた永井荷風や太宰治。三浦哲朗原作の映画「忍ぶ川」では、男女が神谷バーで電氣ブランと葡萄酒で乾杯するシーンがある。滝田ゆうの「寺島町奇譚」には、電柱や店の看板にさりげなく。
 
 ぼくが若い頃には、あまり高級とは言えない酒場によく置かれていて、たまに飲んでは悪酔いして帰った。どうもそれらは本物ではなく、店が味を似せて作った類似品ではないか、ということだ。
 最近は、昭和ブームということもあって、レトロな雰囲気の店には置かれていることが多い。
 
 今夜は酒飲みの客が来る予定である。
 
 
 
     ★★久々のカミさんネタ★★
 
 ◆運転中なら大事故
 CATVの日本映画専門チャンネルで、松本清張原作の「花実のない森」を観ていた。
 1965年の映画で、主演が若尾文子と園井啓介。船越英一郎の父、船越英二も出ている。政略結婚で車椅子生活を送る夫を持つ、謎めいた美女を若尾文子が演じ、自動車セールスマンの園井啓介が一目惚れして追いかけ、事件に巻き込まれていくというミステリーだ。
 原作が松本清張なので、ストーリー展開は複雑だがおもしろい。
 物語は、園井啓介が年配女性(原作では男性)と同伴の美しい女性を都内に送るところからはじまる。
 カミさんとの会話。
 映画がはじまって、すでに1時間経過。
 「……東京にこんなとこあるんだね」
 「いや、ここは山口県」
 「東京だと思ってた」
 「さっきまでは東京だよ」
 
 親密な男女のシーンになる。
 「……あれ? 園井啓介のこと好きなんじゃじゃなかったっけ」
 「この人がホントの恋人」
 
 また別のシーン。
 「この人も彼氏?」
 「この人は旦那。ここは自分の家だよ」
 「なんだかよくわかんないね、この映画……」
 「もしかして、ときどき寝てた?」
 「フフフフフ……」
 肝心な時に寝てるから、ドラマの筋書きが飛んでいる。しかも、自分が寝てるのは一瞬だと思っていたり、寝ていたという自覚があったりなかったり。
 この人が運転免許を持っていなくて良かった。
 
 ◆古畑任三郎でなくてもわかる
 ある朝、ダイニングに下りていったらご飯茶碗が変わっていた。
 「あれ? 茶碗が違うよ」
 「気にいってなかったみたいだから、替えた」
 数週間前に、ずっと気に入ってたご飯茶碗を、カミさんが洗っていて壊したので新しくしたばかりだが、大きさも形も気にいらなくて、自分でそのうちいいのを見つけて買いかえようと思っていたところだった。
 「ふ~ん。でもこれ、なんか持ちにくいなあ。前のやつのほうがまだ良かったのに」
 いかにも間に合わせという感じの、何でこんなのをわざわざ買ってきたのかわからない茶碗だった。
 「この前の、大きいから食べ過ぎると思って。これで多めによそうから」
 「でも、なんかしっくりこないなあ」
 「………」
 
 翌日、ふと思い立って、前の茶碗に戻そうと思い、食器戸棚を探したが、ない。
 もしかしてと、ゴミ入れを覗いてみた。
 なんと、まっぷたつになって捨ててあった。
 「壊したんじゃないか、取り替えたなんていって」
 「拭いててツルンていっちゃったの。フフフ」
 「ばかだなあ、同じの買ってくればわからないのに」
 「同じの買うのもなあ、と思って」
 なんだかやってることがつじつまが合わない。間抜けである。
 この人に完全犯罪は無理だ。
 
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