monologue
夜明けに向けて
 




ある日、クラブ「エンカウンター」(Encounter)」という日系の大型クラブが開店するという噂が流れ、羅府新報やラジオその他でその店のエンターティナーのオーディションの開催が予告された。天下一武道会のようにロサンジェルス中のエンターティナーがそのオーディションに集まった。次々に得意曲をピアノやギターを弾きながら披露してゆく。わたしは日本の歌「シクラメンのかほり」をギターの弾き語りした。オーディションで選ばれたのはほとんどがピアノを弾くエンターティナーばかりだった。その頃、日本のレコード会社からデビューしていた日系アーティスト、マイク三宅もピアノの弾き語りとして店に入った。ギターの弾き語りで選ばれたのはわたしと長髪で口髭が特徴の男の二人だけだった。マイク三宅のパフォーマンスは「太陽は燃えている」が温かみのある幅広い包み込むような唱法で抜群だった。そして日系ラジオ局がクラブ「エンカウンター」の番組を作って店のエンターティナーたちの歌をラジオで流した。わたしはそれでピアニストの伴奏で「また逢う日まで」を歌った。何回かクラブ「エンカウンター」で仕事しているとマネージャーのケンさんが今度から口髭の男と一緒に仕事してくれという。エンターティナーが二人で組んで仕事するというのは聞いたことがなかったけれどOKしてその髭の男「中島茂男」と一緒にステージに上がった。わたしはアコースティックギターを弾き中島はギターアンプを持ち込みフェイズシフターなどのエフェクターにつないだエレキギターを弾いた。それが現在につながるSFの相棒中島茂男(シゲさん)との出会いだった。クラブ「エンカウンター(邂逅)」はわたしたちの邂逅を司ってなぜかすぐにつぶれてしまった。
fumio

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