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日本は何故戦争に向かったか(36)

2011-11-04 09:26:28 | 戦争体験
 NHKテレビ ”日本は何故戦争に向かったか”よりの抜粋

 

再検討には出口が見えなかった交渉中断。


 企画院総裁鈴木貞一は物資面からの総合判断を報告した。

 ”南方の石油施設を確保し、それから利用するとなった場合、物資

  面では、当初二年は厳しいものの、三年目からは良くなると思

  われます。 数字の上では戦争を避けても石油は直ぐ枯渇する。

  一方南方を占領すれば、やがて年に450万トンの石油が入り

  だし、回復できる。”と言うのです。

  更に南方作戦を引き受けた海軍の軍令部長永野修身が、緒戦の

  二年は確算ありとの見解を打ち出しました。

  いづれも従来からあった議論ですが、決断の重圧にあえいでい

  たメンバーは惹きつけられていきました。

  南方の石油を手に入れたとして、海上輸送力を維持できるか

  開戦のネックでした。

  海軍艦政本部総務部長細谷信三郎は国策検討会で
  
  ”最初の3ヶ年の被害予測は年間110万トンから80万トン

  に低下、一方造船の方は年40万トンから80万トンに倍増す

  るものであると見込んでおります。”

  嶋田繁太郎海相発言

  ”若い者は楽観的過ぎないか。実際はその半分だろう。”

  輸送船腹量の見込みにメンバーの関心が集中した。



  海軍省軍務局中佐柴勝男の発言

  ”さっきの検討会で造船の数字が本当に大丈夫か?”

 軍令部作戦班長神重徳の発言

 ”軍令部のしかるべきものが出した数字を、信用してもらって

  いい。”

 
このとき開戦後の輸送船腹量を算定したのは土井美二軍令部中佐

でした。

 その想定では、南方の鉄資源と造船所の総動員による計画生産が

軌道に乗れば、造船で順調に増えていく。損害を一定に押さえれば

輸送船は十分に維持できるというのです。

しかしこれは十分な時間と材料も与えられない中で出した数字で、

軍の中堅層は、そのことをきちんと連絡会議に伝えませんでした。



土井美二さんの手記より

 土井三郎さんの朗読

 ”数日研究し、その結果を神君に示した。 その数字は多くの仮定

  の本に出したものであるから、仮定の一つでも崩れると、この

  数字は狂っていくことを説明し、強く念を押した。

  これらの数字が誰に渡され、どのように取り扱われたかは全然

  知らない。”



  結局連絡会議の検討ではこの数字を深く問い直す事なく開戦後の

  需給は可能だと楽観論の根拠にされてしまった。

 (つづく)


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