北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「コミンテルンの謀略と日本の敗戦(江崎道朗著・PHP新書2017刊)」を読んだ。江崎道朗(えざきみちお1962生れ)氏は、九州大学(文学部哲学科)卒で、月刊誌編集の仕事を経て、1997年より日本会議事務局に務めている。-----
「コミンテルンの謀略と日本の敗戦」は、第2次大戦の情報史学的研究の成果を用いて歴史の真相を暴いてくれている本である。米ソの冷戦が終わってより、アメリカでもソ連(ロシア)でも、過去の外交機密文書の公開が進んでいる。これらの膨大な文書の読み解き研究が彼の国では進んでいるので、日本の研究者もその論文に触れることで、陰謀論めいていたコミンテルン謀略説も強(あなが)ち嘘ではないと認められるに至っている。----
日本の主要な歴史学者は依然としてアメリカ占領下の東京裁判史観を脱していないが、一部の学者は早くに気付いていたことが公開された米ソの機密文書の内容から、裏付けられたと自信を深めてきているのだとか。-----
江崎道朗氏の解説によれば当時の米ソの首脳の関心事や政策が手に取るように分かるようになったのだが、残念ながら今持って日本側の機密文書の公開が為されていないために、また、終戦時に焼却処分されたとのことであり、日本側の外交機密が想像の域を出ないために、説得力に欠ける代物のままである。江崎道朗氏はこれで十分とお考えなのだろうが、自国の日本の国家機密文書の公開がなければ、未だに墨塗り専門の状態では、日本の主要な歴史学者も学術的には如何ともし難いのだと思われる。江崎道朗氏のような民間の立場であれば色々と書けるので、これまでも祥伝社、青林堂、展転社などから出版されていたようだが、PHP新書はこれが初めてのようである。だからある程度、編集の目が届いていると思われる本に仕上がっていると思った。トンデモ本ではないので安心してお読みになっては如何。