北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「アドラーをじっくり読む(岸見一郎著・中公新書ラクレ2017刊)」を読んだ。岸見一郎(きしみいちろう1956生れ)氏は、京都大学大学院(西洋古代哲学史専攻)博士課程満期退学で、哲学者であるが、1989年より、アドラー心理学の実践研究を続けている。-----
アドラー(1870~1937)は、フロイト、ユングと並んで、心理学者として有名で、個人心理学を創始した。心理学自体が現在では理系の学問として脳科学の領域にあるために、旧来の心理学は、最早、古典扱いだが、それでもファンはいるものであり、口当たりの良い、心理療法家の癒しを求める向きもある。唯、当たり前のご託宣でも、専門家然とした人から聞けば人間は落ち着きを取り戻し、人生を生き続ける意欲も回復するのであるようだ。-----
岸見一郎氏は、恐らく、形骸化した西洋哲学を忌避して、だからと言って科学哲学は敷居が高そうなので、この取っつき易い、アドラー心理学を日本に紹介することにより、商機を得たかのように、アドラー心理学の伝道師を果たしている。-----
「アドラーをじっくり読む」の冒頭には、釈迦の言葉が次のように書かれている。“悟ったことは深く微妙なので、説いても理解されそうにない。沈黙を守って涅槃に入ろうとした。ためらう仏陀が説得されて、仕方なく説法したことにより、少なからぬ誤用もあった中で、多くの人が救われてきた”-----
岸見一郎氏は今や、宗教家のような気分かも知れないと思った。好きな人は読んでも良いが、哲学のような真理のような岸見一郎氏の論法にはまらないように注意なさることが肝要だろうとも思った。