北円堂を知らずして奈良の歴史は語れない
「時刻表2万キロ(宮脇俊三著・角川文庫1984刊/1978版の文庫化)」を読んだ。宮脇俊三(みやわきしゅんぞう1926~2003)氏は東大(西洋史学科)卒、中央公論社で編集長を務めた後、鉄道紀行をメインとする作家に転じた。「時刻表2万キロ」は、その転機となった作品であり、“日本ノンフィクション賞(会田雄次/小松左京/吉村昭が絶賛)”を受賞し、鉄道ファンの今に至る“バイブル”ともなっている。-----
鉄道好きの旅が重なって、国鉄全線2万キロの内、1万キロを超えたのが1963年(昭和38)、1万5千キロを超えたのが1971年(昭和46)、1975年(昭和50)には1万8千キロを超えたそうである。その頃から、国鉄全線完乗の目論見を抱いたのだそうである。「時刻表2万キロ」は、その頃から完乗を果たす1977年(昭和52)までの記録であり、宮脇俊三曰く、“阿呆らしき時刻表極道の物語”となっている。----
国鉄改革は未だであり、新幹線も東北/信越は未完成の時代であり、ブルートレインや寝台特急が東京を起点として走っていた鉄道ファンにとっては垂涎(すいぜん)の時代でもあったのだ。-----
また北海道や四国の数々の路線も赤字ではあったが快走していたのだ。日本の戦後の輝かしい一時期の風景を切り取ったようなノンフィクション作品としてこれからも読まれ続けるものと思われる。