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お稽古発表会に近い国際バレエアカデミアの公演

2017-12-16 19:39:34 | バレエ
12月15日の夜に新宿文化センターで「国際バレエアカデミア」の公演を観る。一階席を見渡すと4割程度の入りか。ガラガラ。ほとんどはバレエ団の関係者風に見える。入り口に仰々しく多くの献花が飾られていた。

「東京小牧バレエ団」改め「国際バレエアカデミア」となっていて、「NPO法人国際バレエアカデミア」の設立10周年記念ともある。まあ、おめでたいのだろう。演目は最初に「ショピニアーナ」が35分ぐらいあり。20分の休憩。次が「モンゴル賛歌」で15分、20分の休憩があった後に、最後が「シェヘラザード」で55分ぐらい。開始は6時半で終演は9時。

「ショピニアーナ」はショパンの曲にフォーキンが振り付けたもの。後にバレエ・リュスでは「レ・シルフィード」と改題されて上演されたらしい。空気の精と詩人が森で戯れる。空気の精はジゼルのウィリィ風の小さな羽根を付けて踊る。クラシックの技術を使いバレエ・ブランシュの美しい作品だが、コールド・バレエのレベルも低く、ソロ・ダンサーも今一つの出来。まずい前菜を出された感じで、食欲がわかない。

次の「モンゴル賛歌」は全く知らない演目だったが、解説を読むと、モンゴル国立バレエの創作作品のようで、モンゴルの小さな村に戻ってきた青年が、村の娘と恋をしてパ・ド・ドゥを踊るみたいな話。これは、短い作品で口直しのグラニテみたいな位置づけか。「ショピニアーナ」に比べると結構それなりに踊っている。調べてみると、モンゴルから来日したゲスト・ダンサーのようだ。

「シェヘラザード」は、パリ・オペのビデオでしか見たことがなかったので、一度ぐらいは生の舞台で観ようかと思った今回の公演のメインだが、観なければよかったと後悔するような出来。後宮を描いた作品だが王様の愛妾を踊る周東早苗が観るに堪えない。なんでこんな下手なのが主役を踊るのだろうと思った。金の奴隷役はモンゴルからのゲスト・ダンサーで、こちらの方がまだよい。

この作品はリムスキー=コルサコフのエキゾチックな音楽と、エキゾチックな美術でも楽しませてくれるはずなのだが、美術があまりにもひどい。妾達の衣装に多くの色を使いすぎたために、ただただ目立って色がうるさいだけのチンドン屋風の衣装になっている。ミュージカル「マイ・フェア・レディ」のアスコット競馬場で白と黒のグラデュエーションだけで素晴らしい衣装と装置を作ったセシル・ビートンでも研究して出直してほしい。70年前だったらこれでも拍手喝采だったのかも知れないが、現在の日本の水準からすると、いかにもお粗末に見えてしまう。

というわけで、新装開店のレストランのメニューを見て、美味しそうな気がして入ったら、味がひどかったような気分。それを見抜くだけの自分の能力の低さを悔やむ。

どうして、これを「お稽古発表会」と呼ぶのかというと、上演の目的が観客に良い作品を見せようという態度でなく、自分たちの成果をお披露目するような感があるからだ。配役が実力本位とは思えない。先生が中心となって踊り、弟子たちがそれを後ろで合わせるような上演では、100年たっても人に見せるような公演にはならないだろう。

もっとも、これがバレエ団最高の実力を見せたというのであれば、バレエ団とか言わずにバレエ教室の発表会といった方が良い。本人たちのそれを自覚して「バレエ団」から「バレエアカデミア」とかえたのかなあ。

ひどくおなかが空いたので、いつものスペイン・バルで食事。カネロニやタコのパエージャなどを食べる。

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