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国立小劇場の呂太夫襲名披露公演を観る

2017-05-22 08:46:28 | 文楽
21日の昼に、英太夫改め新「呂太夫」の襲名披露を観る。演目は最初に「寿柱立万歳」があり、これは15分の前菜。メインは「菅原伝授手習鑑」からで、前半は歌舞伎の「賀の祝」に相当する白太夫と3人の息子松王丸、梅王丸、桜丸とその女房達の話。白太夫の七十歳の賀の祝いに集まった三兄弟に、菅丞相をめぐり対立が起き、桜丸の切腹で終わる。

襲名披露の口上を挟んで、後半は「寺子屋」を寺入りからいろはの送りまで見せる。新呂太夫はこの寺子屋の前を担当、最後の切りは咲太夫。口上では呂勢太夫が司会役で、三味線代表は清治、人形代表は勘十郎が挨拶。本人の挨拶名はない。さすが、襲名披露なので、人形の蓑助も桜丸を担当して豪華な顔ぶれだ。

数年前に住大夫が体調を崩したころは、後を継ぐ太夫が現れるか心配したが、今回の公演を観る限り、かなり中堅、若手が充実してきている。今回の公演では「寿柱立万歳」では、津國太夫、小住太夫がかなり良いところを見せた。三段目の白太夫のくだりでも、太夫はいずれも良かったが、特に咲寿太夫は長足の進歩を遂げた感がある。美声に加えて、役の使い分けも的確、まだまだ情感はこれからだろうが、とにかく聞きやすい。桜丸切腹を担当した文字久太夫はスケールの大きさが出て安定したように思える。

後半の寺入りは呂勢太夫。若手のホープなのだが、最近は声がかすれがちで聞きにくいことがある。三味線に大ベテランの鶴澤清治が付いているので、これからさらに伸びてほしい。寺子屋の呂太夫は襲名なので力が入った熱演。そつなくまとめている。最後の切りの咲太夫も切り語りとしての風格を見せる語りだった。

人形では蓑助のほかに、松王丸に玉男、その妻の千代に勘十郎という配役で寺子屋を盛り上げる。特に、「笑いましたか…」のくだりからの、笑い泣きの場面は胸を打つものがあった。

寺子屋は大好きな場面でいつも見るたびに泣けてくるが、歌舞伎で見ると寺入りから始まりいろはの送りまで2時間半ぐらいか。文楽だとこれが1時間半に収まっているので、観る方は楽でよい。だが、寺入りの場面のチャリ場などは、観ているとそれなりに面白く、物語を補強しているので、やはり歌舞伎も良いかなあと思う。

まあ、全体的にこれまで弱かった太夫が充実して気なので、うれしく思いながら観た。襲名披露なので満席。切符も取りにくい。ファンが多いのだから、もう1週間ぐらい長く公演してほしいと思う。

3時半に終わってしまったので、4時からやっているイタリア北部の料理を出す店で肉料理を食べながら、ワインを飲む。ウィーンで有名なカツレツや牛肉の煮込み料理も、ルーツは北部イタリアの料理だよな、などと考えながらワインを飲み過ぎた。

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