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オペラ、バレエ、歌舞伎、文楽などの鑑賞日記です

東京芸術劇場の「美しきエレーヌ」

2024-02-18 10:56:19 | オペラ
2月17日(土)の昼に東京劇術劇場でオッフェンバックの「美しきエレーヌ」を聴く。演奏会形式の上演で、7割程度の入り。客層は何となく年齢層が高め。オペレッタといえば、ウィーンの物の上演が多いが、この作品はフランスで初演されたオッフェンバックの作品。

歌手陣が充実していた。主役には砂川涼子、工藤和真、そのほか濱松孝行、藤木大地などが出演。オーケストラはオペラ・バンドという寄せ集めの楽団だったが、きちんと演奏していた。物語は、美女ヘレンがトロイの王子パリスに誘拐される話の喜劇版で、ギリシャ神話では有名な話。この物語の前段には「パリスの審判」があり、後日談には「トロイ戦争」がある。

砂川涼子は、先日の「ファウスト」でも安定した歌唱だったが、今回も充実した歌いぶり。相手役の工藤和真も美しい歌声を聴かせた。日本ではちゃんとしたテノールが貴重だが、この作品では工藤のほか、4人もテノールが出ていて、贅沢な構成。脇を固めた出演者もきちんと歌っていた。

音楽的には充実していたが、「オペレッタ」としての面白さは欠いていた。オペレッタはオペラのレチタティーヴォ部分を台詞として会話するので、ミュージカルのような構成だが、今回の公演では、多少の演技は行うものの、台詞をすべてカットしてナレーターの語りで説明するという上演方法だった。恐らくは上演時間の問題や、当時の台本をそのまま上演しても現代の観客にはわかりにくいなどの問題があろうが、これでは作品の面白さが伝わらない。

いわゆる演奏会形式のオペラも増えているが、オペラとして上演するからにはレチタティーヴォも含めて全曲上演されるのが前提だろう。オペレッタで台詞をカットして良い理由などない。アメリカなどでもよくミュージカルを演奏会形式で上演したりするが、その時にもきちんと台詞部分は入っており、大半の場合は、ダンスも入る。練習時間の都合で台詞を覚えきれないならば、台本を持って演じても良いのではないか。今回は譜面台を置き楽譜を見ながら歌ったのだから、ついでに台本を見ながら演じればよいと思う。妙につまらないギャグを入れるよりも、原作をそのまま伝えるほうが大事だろう。

衣装は簡単だが、それらしく作ってあり、簡単な演出も付いていた。歌は楽しんだが、何となくもやもやした気持ちで見終わった。

帰りがけに買い物して、家に帰って食事を作る。菜の花の辛し和え、きんぴらごぼう、蕪の煮物、親子丼を食べる。飲み物はビールと日本酒。

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