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新国立劇場の「椿姫」

2024-05-17 10:52:47 | オペラ
5月16日(木)の夜に新国立劇場で、ヴェルディのオペラ「椿姫」を見る。5月16日~29日の5回公演で、ソワレは16日だけ。若い人も多くほぼ満席だった。上演時間は、30分の休憩を含めて2時間45分程度。

何度も見た演出で、特に良いとは思えないが、変な読み替えではなくまっとうなので、悪くもない。今回の目玉は、主役の椿姫を中村恵理が歌うという点だろう。相手役のアルフレードとジェルモンは、海外から若手を連れて来ている。指揮者はフランチェスコ・ランツィロッタで、オケは東京フィル。

中村恵理がどれだけ歌うかと思っていたが、素晴らしい歌唱で感動した。歌の正確性はもちろん、少し強めの声質も役柄にあっていた。日本人では気になることが多いディクションも、ほぼ完璧だった。「ほぼ」というのは、歌は問題ないが、3幕のジェルモンからの手紙を読む場面は(この演出では手紙を「暗記」しているので読まないが)、「語りの台詞」になっているので、若干たどたどしさが出てしまった。それ以外は問題ない。演技も素晴らしく、一幕後半の「恋か享楽か」と心が揺れ動く場面の心理描写などは、今まで見た舞台の中でも傑出していた。日本人がこれだけの主役を演じることができるようになったのは、本当にうれしい。

相手役のアルフレードを演じたリッカルド・デッラ・シュッカは、背が高くすらりとした男前で、役柄としてぴったり合っている。テノールはたいてい背が低く太っているが、こういう長身のテノールは珍しいと思った。声はよく出て美しい声だが、歌のうまさという点では中村にかなわない。お父さんのジェルモンを歌ったのは、グスターボ・カスティーリョで、少し野性的な感じのルックス。声は素晴らしく、朗々と響くバリトンで観客からの声援も大きかった。ただ、大声で歌う場面は良いのだが、弱音で歌うと声質がちょっと変わってしまい気になった。まだ若そうなので、これからが期待できるだろう。

中村恵理が良かったので、作品全体としては素晴らしい出来だと感じた。ランツィロッタの指揮も的確で、ヴェルディらしい響きを良く出していた。

すっかり気分がよくなって、帰りがけにパブで軽い食事。エールビールを飲みながら、枝豆、カプレーゼ、シュリンプ・アンド・チップス、ソーセージなど。

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