青春タイムトラベル ~ 昭和の街角

昭和・平成 ~良き時代の「街の景色」がここにあります。

「バンド・オン・ザ・ラン」~音楽は1人で聴くものじゃない!

2021-01-23 | 青春の音盤

中学校に入ると共に、音盤を集め始めた僕。紆余曲折があるものの、今日に至るまで洋楽を聴き続けることになるとは、この当時はまだ夢にも思いませんでした。当時洋楽に対する知識は、ビートルズや家で家族が買って来たレコードについてのみ。今のように名盤100というような本もない時代。情報は友人からの話題の中にしかありませんでした。その中でも特に貴重な情報は、やはり年上のお兄さんお姉さんからの情報。つまり友人の兄・姉からの情報が貴重でした。

友達の家に遊びに行くと、その友人は音楽に興味がなくても、部屋に洋楽のLPが置かれてある。僕の子供時代の友人には、お兄さんがいる家が多く、兄弟には1つの部屋というのが普通だったので、友人のものではなく、そのお兄さんのお宝が目に入るのです!見つけるたびに誰のLPとも知らず、ジャケットが気に入れば聴かせてもらったものです。

今思い出しても、僕の1番仲の良かった友人Wは、音楽には全く興味が無い男でした。ところが彼のお兄さんが、後にバンドを組むほどの洋楽好き。友人達との付き合いも多く、レコードの貸し借りをしているようで、いつも行くたびに、いろんなレコードを聴かせてくれました。

「ビートルズが好きやったよな。解散の後のソロは聴いてる?」と、ある日質問されました。ビートルズ関連の購入は母の妹の担当でしたが、中でもポール・マッカートニーが好きな彼女は、「ポール・マッカートニー」「ラム」「ワイルド・ライフ」とポールに付き合ったものの、その後結婚して我が家から出たため、僕はそれ以降を聴いていませんでした。

「 ポールの“バンド・オン・ザ・ラン”ってアルバム、凄く売れたみたいだから、買う気ない? 俺も聴きたいけれど、そっちに手が回らなくてさ。もし良かったら、買って聴かせてよ。」と、先方は何気なく言ったのでしょうが、僕に取っては捨て置けない一言。何しろいつもいろんなレコードを聴かせてもらい、時にはカセットに録音までしてもらっているのです。たまには「御返し」をしないと失礼です。

それで、次のお買い上げはポール・マッカートニー&ウイングスのアルバム「バンド・ン・ザ・ラン」(Band on the Run)となりました。これはビートルズ解散後、ジョージやリンゴ、レノンの後塵を拝していたポールが、全英・全米とも1位という見事な商業的成功を収めたアルバムです。「バンド・オン・ザ・ラン」( Band on the Run )、「ジェット」(Jet)、「ブルーバード」(Bluebird)のA面3曲は、ものすごくインパクトがありました。

それよりもインパクトがあったのが、ジャケットです。僕は洋画マニアのスタートを既に切っていましたが、そこにポールと一緒に写っていたのは、「荒野の七人」にも出ていたジェームズ・コバーン。(左)「ドラキュラ」俳優で、2000年代に入ってからもスター・ウォーズではドゥークー伯爵を、「ロード・オブ・ザ・リング」ではサルマンを演じていたクリストファー・リー(右)でした。

アルバムに収録された曲をモチーフにしたアルバム・ジャケットはとてもカッコよく、やっぱり洋楽はカセットを集めるんじゃなく、アルバムを持ってないと・・・と、思わずアルバム・ジャケットの芸術性に目覚めてしまいました。(笑)

音楽情報は同い年の友達からは、まだこの時期にはほとんど入りません。年上のお兄さんたちとの付き合いを通して、ちょっと背伸びをする。そんなこと教えてくれたのも洋楽でした。

今の若者の多くは、自宅でもステレオではなく、PCやYouTube、iPodやiPhoneのイヤフォンから、音楽を聴いている人が多いと聞きます。僕はこのウォークマンから始まった音楽の1人聴きが、世界中の音楽産業を駄目にしたと考えています。音楽はそもそも一人ではなく、家族や友人など誰かと一緒に聴くものだと僕は思います。だから何年も経った後でも、その音楽と共にいろんな思い出が頭に浮かんでくるのです。それを聴いた時の部屋の情景や、時には匂いや温度まで思い出します。

ダウンロードやストリーミングでは人を介しません。音楽を通じて友達を増やすというようなことも出来ません。価値観の共有が何も出来ないのです。皆さんのご家庭では音楽を聴く環境は、どのようになっていますか?子供にピアノやバイオリンを習わせていなくても構いませんが、人と一緒に音楽を聴くという環境を、子供ができるだけ若いうちに整えてあげることは、とても大切で素敵なことだと僕は信じています。



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